プロモーション戦略とは何か
プロモーション戦略とは、マーケティングにおける商品・サービスの販売促進活動を指します。企業が成長するうえで、必要不可欠な取り組みです。プロモーション戦略の手法は多岐にわたり、目的やターゲットによって適切な戦略を立てることが重要です。
企業のマーケティングを担当する方は、自社の商品・サービスの売上や利用者を増やすためにプロモーション戦略の基本を理解し、目的からズレない戦略を立てるように意識しましょう。
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プロモーション戦略の立て方を理解しておく理由
プロモーション戦略を立てなくても売れる商品・サービスはあります。商品の魅力が突出している、あるいはニーズが高い商品の場合は、口コミやSNSでの拡散などにより売上は上がるでしょう。しかし、それはごく一部の商品に限られます。
商品・サービスを認知してもらい、購買意欲を高めなければ売上は上がりません。商品・サービスを消費者に購入してもらうためにも、プロモーション戦略の立て方をしっかりと理解しましょう。
プロモーション戦略を行うメリット
プロモーション戦略を立てることで得られるメリットは4つあります。
- ブランドイメージの向上
- 商品やサービスの認知度向上
- 新規顧客の獲得
- 消費者との関係構築
それぞれどのようなメリットなのか簡単に紹介します。
1.ブランドイメージの向上
1つ目は「ブランドイメージの向上」です。プロモーション戦略はブランドイメージを向上させたいときに効果的です。
ブランドのメインターゲット層に対して、どのようなプロモーションを行うか整理してアプローチを行いましょう。ブランドに対する共感を醸成し、自社ブランドの価値を高め、競合他社との差別化を図れます。
2.商品やサービスの認知度向上
2つ目は「商品やサービスの認知度向上」です。プロモーション戦略は、認知拡大にも有効と言えます。
自社の商品・サービスの認知が広がり、認知している消費者が増えると将来的な売上の拡大につながるでしょう。商品・サービスが認知されると興味関心や比較検討など、購入・申込に向けた行動を引き起こします。認知拡大を目的とした施策もしっかりと考えましょう。
3.新規顧客の獲得
3つ目は「新規顧客の獲得」です。プロモーション戦略を積極的に展開すると新規の顧客を獲得できます。
プロモーションの手法や訴求内容によって異なりますが、これまで自社の商品・サービスを知らなかったユーザーや興味がなかったユーザーに対してニーズを汲み取ったアプローチを行うと新規の顧客となり、売上のさらなる拡大が期待できます。
4.消費者との関係構築
最後は「消費者との関係構築」です。自社の商品・サービスを継続的に利用してもらうことは中長期的な売上の獲得になります。
競合他社の類似商品があった場合、価格を下げるプロモーションを行うと、競合他社がさらに価格を下げてきたときに消費者は競合他社の商品・サービスに流れてしまいます。消費者に価格のほかに価値を見出し、理解促進を図るためのプロモーション戦略を打ち出しましょう。
このようにプロモーション戦略を活用して消費者との関係を構築し、継続的な利用を促すことができます。
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プロモーション戦略の型2種類
プロモーション戦略には2つの型があります。
- プッシュ型
- プル型
それぞれの型でプロモーション戦略の考え方が異なります。目的に応じてプッシュ型とプル型を使い分けることが大事です。
プッシュ型とプル型それぞれについて、詳しく紹介します。
1.プッシュ型
プッシュ型は、企業側から小売業者や消費者に向けて積極的に商品・サービスの情報を伝える型になります。
たとえば、消費者に向けて認知拡大を目的に実施される広告がプッシュ型にあたります。消費者自らが情報を取得するために動くのではなく、企業側から消費者に向けて商品の魅力を伝えることで、将来的な購入見込み客を増やす戦略です。
2.プル型
プル型はプッシュ型と反対で、消費者側の購買行動を引き起こすプロモーション戦略です。
たとえば、消費者がSNSや口コミで話題になっている商品・サービスを購入するケースがプル型にあたります。
プル型のプロモーション戦略を行うには条件があります。商品・サービスもしくはブランドが広く認知されていて、競合他社の商品と差別化されていることです。まずはプッシュ型を活用して認知の拡大を図りましょう。
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プロモーション戦略の立て方11ステップ
プロモーション戦略を立てるために必要なステップを紹介します。ここで紹介する11ステップを活用して、自社の商品・サービスの認知拡大や販売促進を行うプロモーション戦略を構築しましょう。
1.市場でのポジションの確認
まずは自社の商品・サービスの市場でのポジションを確認しましょう。ポジションの確認は「競争地位4類型」のフレームワークで行うのが一般的です。
まずは、自社を含む業界内のそれぞれの企業を下記4つのポジションに分類します。
- リーダー:経営資源の量が多く、経営資源の質が高い
- チャレンジャー:経営資源の量は多いが、経営資源の質がリーダーに及ばない企業群
- ニッチャー:経営資源の量は少ないが、経営資源の質が優れている企業群
- フォロワー:経営資源の量・質ともに低い企業群
それぞれのポジションにより、目標やターゲット、戦略は異なります。
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自社の商品・サービスのポジションを把握して適切なターゲット・戦略を構築しましょう。
2.市場でのシェアの確認
市場でのシェアの確認も大事です。市場シェアは「クープマンの目標値」を活用して確認します。市場シェアは下記の6つに分類されます。
- 独占的市場シェア:73.9%
- 安定的トップシェア:41.7%
- 市場影響シェア:26.1%
- 並列的競争シェア:19.3%
- 市場認知シェア:10.9%
- 市場存在シェア:6.8%
市場でのポジション確認で「リーダー」に分類される企業が複数あった場合でも、市場シェアによってとるべき戦略は変わります。
たとえば、「安定的トップシェア」の41.7%を超えた場合は、市場の顧客を増やす戦略を取りましょう。シェアが41.7%を超えているので、新規の顧客の半数近くが自社の商品・サービスを購入すると考えられるためです。
自社の商品・サービスの市場でのシェアを理解し、何をすべきなのか整理しましょう。
3.市場でのトレンドの確認
市場のトレンドによってもプロモーション戦略は異なります。市場トレンドは大きく「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つに分けられます。それぞれの段階でのプロモーションは下記のように整理可能です。
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市場トレンドを意識してプロモーション予算や施策を考えて最適なプロモーション戦略を立てましょう。
4.What to say/How to say/How to deliverの整理
市場シェア、市場トレンドを確認して、どのようなプロモーション戦略を立てるか方向性が決まったら、下記の3つを整理しましょう。
- What to say:消費者に何を伝えるか
- How to say:消費者にどのように伝えるか
- How to deliver:消費者にどうやって届けるか
テレビCMやWeb広告、新聞などのプロモーションの手法から考えるのではなく「What to say」や「How to say」を整理して最適な手法を選択しましょう。
目的や消費者に届けたい情報により、最適な手法は異なります。「What to say」「How to say」「How to deliver」から1つ1つプロモーション戦略を考えましょう。
5.目標の設定
プロモーション戦略の目標を決めましょう。これまでの1~3のステップで課題が見えてきたと思います。課題が分かれば目標を決めやすくなります。
たとえば、1カ月の売上100万円など具体的な目標を設定します。具体的な目標を設定すれば、プロモーションに必要な予算や、どのような施策を実施するべきなのか判断する基準ができます。
注意点としては、目標を「売上」以外の指標に設定することは避けましょう。「売上」よりも手前の段階を目標にすると、消費者が購入を検討するだけで終わってしまうこともあり、検討で終わってしまうと売上につながらないこともあります。
目標を設定するときは「売上」で設定することを意識してください。
6.ターゲット・ペルソナの設定
プロモーション戦略でアプローチを行いたいターゲットとペルソナを設定しましょう。まずは「新規顧客」を狙いたいのか「既存顧客」を狙いたいのか整理します。
次に、よりターゲット像を具体化させるためにペルソナを設定します。ペルソナを設定するときに整理する属性情報は下記のとおりです。
- 性別
- 年齢層
- ニーズの種類(潜在か顕在か)
- 購買傾向(オフラインかオンラインか)
- 趣味嗜好
- 行動パターン
- 頻繁に使用するメディア
属性情報の整理ができるとプロモーションの手法を考えるときに役立ちます。
どのような人が自社の商品・サービスを必要とするのか考えてみましょう。
7.提供価値の設定
消費者に向けてアピールする提供価値を設定しましょう。提供価値は下記のようなものが挙げられます。
- 商品・サービスの利便性
- 商品・サービスを使用することで得られるメリット
- 商品・サービスを使用することで解決できる課題
- 競合他社の商品にない強み
ターゲットのニーズとマッチしているものをプロモーション戦略のアピールとして活用しましょう。
8.プロモーション予算の設定
プロモーション予算の設定は、プロモーション手法を選定するときの判断材料になります。ステップ4で目標を設定しているので、掲げた目標を達成するために必要な予算を算出して設定しましょう。
このときに注意したいのは、過度な予算設定を行わないことです。過剰な予算投下は、利益の確保が難しくなります。必要な予算を算出したうえで、プロモーションの手法を選定するように意識しましょう。
9.プロモーション手法の選択
課題や目標を達成するために必要なプロモーション手法を選定します。プロモーション手法には「認知拡大」に向いているものと「販売促進」に向いているものがあります。
市場でのポジションやシェア、トレンドに合わせて「認知拡大」か「販売促進」か最適な手法を選びましょう。
10.スケジュール設定
プロモーション戦略の取り組みには、たくさんの人が関わります。各自が「いつまでに何のタスクをするのか」を整理してスケジュール管理を行いましょう。個々に仕事を割り振り期日を伝えることで、取り組みがスムーズに進行します。
また実施する施策によっては、開始までの準備期間に時間を要するものもあります。あらかじめ概算したリードタイムを把握して、遅延やトラブルが起こらないように注意してください。
11.効果測定
プロモーション戦略を実施したあとには、抽出した課題が改善されたか、設定した目標に対してどの程度達成しているかを振り返ります。
達成率が悪ければ次の打ち手を用意し、達成率がよい場合はさらに売上を伸ばすためにできる施策を考えて実行しましょう。効果測定と施策の実行を繰り返すことで、プロモーション戦略の精度が高まります。
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プロモーション手法5選
プロモーション戦略の手法は多岐にわたります。ここでは下記の5つの手法を紹介します。
- 広告
- SNS
- 広報(PR)
- 動画
- セールスプロモーション
それぞれ適した目標や効果が異なります。プロモーション戦略の手法を選定する際の参考にしてください。
1. 広告
広告は代表的なプロモーション戦略の手法です。広告は下記のように活用できます。
- ラジオCMの放送
- テレビCMの放送
- Web広告による配信
- 街中の看板
不特定多数に向けて自社の商品・サービスの告知を行えるため、認知拡大目的で活用されるケースが多いです。
2. SNS
SNSは、自社の商品・サービスに興味があるユーザーとコミュニケーションが図れます。情報の発信だけでなく、自社のブランドや商品・サービスのファンの獲得もできます。
SNSは媒体によって利用者の年齢層が異なります。
- Facebook:30-40代が中心
- Instagram:10-50代が中心
- LINE:老若男女幅広い層が日常的に使用
- X(旧Twitter):10-20代が中心
商品・サービスのターゲット層に合わせて活用する媒体を選定しましょう。
3. 広報(PR)
広報(PR)は、認知の拡大や自社やブランドへの信頼性の獲得、好感度の向上を目的として実施されます。一部施策を紹介します。
- イベントのスポンサー
- プレスリリース配信
- 協賛
- 新商品の発表会
- 企業間のコラボ
プレスリリースは、大きな予算を掛けることなく実施できる施策です。プロモーション予算と相談しながら、広報(PR)を行いイメージ戦略を図りましょう。
4.動画
YouTubeやTikTokといった動画配信プラットフォームを活用したプロモーションです。動画は文字情報と比較して、短時間で多くの情報をユーザーに届けられます。
専門の機材がなくてもスマートフォンで撮影できるため、導入ハードルは低い施策といえます。動画を活用して自社の商品・サービスの強みをしっかりとユーザーに届けましょう。
5.セールスプロモーション
商品・サービスの購入を目的とした施策がセールスプロモーションです。実際に体験してもらうために、下記のような施策を行います。
- 体験イベント
- サンプルの無料配布
- クーポンの配布
- 店頭キャンペーン
注意点としては、クーポンや店頭キャンペーンは1度の購入で継続利用しないケースもあります。しっかりとターゲット設定を行い戦略に落とし込むようにしましょう。
プロモーション戦略の成功事例3選
プロモーション戦略を取り入れている企業は多いです。その中でも取り組みが成功した3つの事例を紹介します。
業界や商品により取り入れられない施策もあると思います。考え方の参考として見てみてください。
1.Zoff
メガネの量販店Zoffが実施した施策は、店舗で使用していた紙のポスターからデジタルサイネージへの切り替えです。
従来のポスターでは、全店舗共通のポスター以外に各店舗で実施する個別キャンペーンのポスターも用意する必要があり、掲示や管理に掛かる業務負荷が発生してしまうのが課題でした。
施策導入後、掲載コンテンツの管理・送付を本社が行い、各店舗ではデジタルサイネージに挿入するSDカードのデータを入れ替えるのみとなりました。これにより業務負荷が軽減し、業務効率を改善しています。
2.UNIQLO
UNIQLOは2020年12月から、ライブ配信で商品の紹介を行う「UNIQLO LIVE STATION」を開始しました。コロナ禍の影響を受け、来店数が減少し多くの店舗が閉店や休業に見舞われたことが背景にあります。
施策導入後は、企業と消費者の双方向のコミュニケーションが図れるようになり、多くの消費者との接点を築くことに成功しています。
3.味の素AGF
味の素AGFが展開する「AGF®ドリップオンザワールド」の商品はフィンランド、エチオピア、日本、ニューヨークをコンセプトにしたアソートコーヒーです。コーヒーを飲みながら「旅」の気分を満喫してもらうために商品のパッケージに二次元コードを記載。スマートフォンやタブレットで二次元コードを読み込むと世界の街歩き映像を楽しめます。
商品を使用する時間をより楽しくするためのプロモーションで成功している事例です。
まとめ
プロモーション戦略のメリット、立て方、手法について紹介しました。
これから自社の商品・サービスのプロモーション戦略を立てる方は、紹介した11のステップに則って取り組んでみてください。市場でのポジション確認やシェアの確認など慣れないことが多いと思いますが、読み返しながら整理しましょう。プロモーション戦略で立てた施策を実行し始めてからも効果計測と見直しを繰り返すことが大事です。
目標や課題に最適なプロモーション戦略を展開して、自社の商品・サービスの売上拡大を図りましょう。