反応がないユーザーへの配信はあえて一時停止
──メールでのコミュニケーションを設計する上では、配信頻度も重要だと思います。貴社では、配信頻度をどのように定めているのか教えてください。
改革を行う当初、「週に何回メールを送るのがユーザーにとって煩わしくないのか」は悩ましいポイントでした。ただ、調査や検討を重ねた結果、「ユーザーは欲しい情報であれば回数など関係なく欲しい」といった考えにたどり着きました。
実際、私自身に置き換えてみても、興味がないメールは頻度に関わらず開かないでしょうし、何回メールが来ているかもユーザーは認識すらしていません。一方、興味のある情報であれば何度でも開くと思います。
そういった意味で、スコアリングの仕組みは非常に重要です。ユーザーが「今欲しい情報」を意識して、最適化させることがメールコミュニケーションには求められていると思います。

──メール自体への反応がないユーザーに対しては、配信頻度をどのように設定しているのでしょうか?
メールに反応しなくなってしまった方には、基本的に一定期間メール配信をストップするようにしています。ただ、これは配信リストから完全に外すわけではなく、「生成AIで新しい話題が出た」や「○○の企業でインシデントが起きた」などの世間からの関心の高い時事ニュースがあるタイミングで、休眠リストの方に対しても一斉に配信するようにしています。
こうすることで、通常よりも高い割合で再度メールを確認してくれるようになるんです。
一度ユーザーのほうから配信停止されてしまう場合、その方は二度と戻ってきません。時にはあえて配信停止することで関係修復のチャンスを残すことが大切だと思っています。
KPIは「顧客が能動的に動いた行動」
──現在、チームで定めているKPIについても教えてください。
一般的には、「開封率」をKPIに置いている企業が多いと思いますが、当社では「資料ダウンロード数」を重要視しています。なぜなら、人によっては不要なメールを一斉に開封してしまうので、開封率を見てもユーザーの行動を真に把握することは難しいためです。
他にも、資料ダウンロードの手前にある「クリック数」や、最終的な「商談化数」などもKPIとして追うようにしています。
このように当社では、「顧客が能動的に起こした行動」という視点でKPIを定めるようにしています。
──新たなモデルに変更していく上で、社内での納得はどのように得ましたか?
今回の改革は配信先のセグメントをよりユーザーニーズに合わせた段階へと合わせたもので、組織やチームの体制自体が変わったわけではありません。また、以前から集客状況に合わせて配信する内容を調整していたので、配信内容の最適化に対する社内からの理解度も高く、スコアリング導入に対しての懸念のようなものは特に挙がりませんでした。
しかし、やはり配信数が少なくなることに対しての指摘が少なからずあったのは事実です。ただ、たとえ配信数が減っても、スコアが立っている人に送ったほうがよりユーザーの購買フェーズが進み、結果として資料ダウンロードなどにもつながります。このことを施策実行の中で理解してもらえるように意識しました。