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地域のエコシステムを目指す、中国新聞社に聞くファーストパーティデータ活用とコラボレーションの現在地

 ファーストパーティデータの収集・活用は大きな課題の一つです。中国新聞社は2024年、新プラットフォームサービス「たるポ」をリリース。ユーザー層の拡大を進めつつ、地域企業との連携・データ活用を視野に取り組みを進めています。今回、プロジェクトを進めるメディア開発局に取材。ユーザー体験や目指すデータコラボレーション、実現のためのシステム選定や規約など取り組みの全体図と現在地をうかがいました。

中国新聞が取り組む新プラットフォーム作り

――はじめにメディア開発局について教えてください。

岡田:メディア開発局はBtoC向け事業として、デジタル技術を用いた報道や、それに伴う読者サービスの開発および運営を行っています。直近では2024年3月にニュースアプリ「みみみ」をリリースしました。また、BtoB向け事業としてデジタルを使った広告事業も当局が担っています。

 加えて、2024年3月に新しい会員向けプラットフォーム「たるポ」の提供を開始しました。たるポを通した中国地方の企業様や、お住まいの方々とのより深いつながり形成と、データビジネスの展開も私たちの役割です(業務分掌はいずれも2025年2月時点)。

たるポの概要
たるポの概要

――たるポを提供するに至った背景は何でしょうか?

岡田:当社は2022年に新たなミッション、ビジョン、バリューを策定しました。「確かな情報でこのまちを守り、力づけ、おもしろくする」をミッションに、「このまちの未来をともに創造する地域応援企業グループに進化する」というビジョンを掲げています。同じ年にデジタル技術活用の方針も「中国新聞DX宣言」としてまとめ、推進しています。

 この状況下で、顧客IDの有機的連携および、販売業務のデジタル化という課題を解決するために、2022年にたるポのプロジェクトが発足しました。

写真左:株式会社中国新聞社 執行役員 メディア開発局長 岡田 浩一氏、写真右:同社メディア開発局 メディア開発部長 石井 将文氏
写真左:株式会社中国新聞社 執行役員 メディア開発局長 岡田 浩一氏、写真右:同社メディア開発局 メディア開発部長 石井 将文氏

石井:たるポ構築の前提として、広島の地域で質の高い顧客基盤を作りたい思いがあります。中国新聞は創刊130年以上・発行部数も約50万部と地域に根付き、多くの方にご愛顧いただいている強みがあります。一方で紙の新聞購読を巡る環境は厳しさを増しており、デジタルサービスのユーザー数を増やす必要があります。その解決が、たるポを構築した目的の一つです。

イベント連携で新ユーザー層の増強・オフラインデータ取得を実現

――たるポでは具体的に、何を実現していきたいとお考えですか?

石井:まずは深い顧客理解です。これまでも中国新聞IDという共通IDを運営していましたが、ログイン以上の機能を提供できていませんでした。たるポでは、IDを取得した人がどのような人なのか、何に興味があるのかなどを深く理解していきたいです。

 次にシームレスな顧客体験の提供です。中国新聞IDは取得のためにステップが多い、取得メリットがわかりにくいなど改善の余地がありました。それらを解決して、ユーザーが使いやすいサービスを目指しています。

 そして、顧客データを蓄積できたら外部サービスと連携し、新しい顧客価値の創出と提供をしていきたいと考えています。ゆくゆくは当社だけでなく、地域で使っていただけるID基盤として成長させていくことが狙いです。

――現在、ユーザーはどのような活用ができるのですか?

石井:たとえば、ユーザーがIDを使って中国新聞デジタルやニュースアプリ「みみみ」にログインすることで、サービスを使えば使うほど「たるポポイント」がたまる仕組みを提供しています。また、外部サービスと連携してリアルイベントでクーポンを取得したり、デジタルスタンプラリーに参加したりもできます。

 具体的には「ひろしま盆ダンス」という1万人以上が参加するイベントでは、たるポの画面に表示されるQRコードを提示いただくとガチャガチャが引けるサービスを用意しました。「ひろしまクリスマスマーケット2024」ではQRコードを使ったデジタルスタンプラリーを実施したところ、1,000人以上の方に参加いただけています。

 参加者のメールアドレスがIDと紐づいているのでメールで事後アンケートを行ったところ、「スタンプラリーが複数会場を訪れるきっかけになった」という回答もいただけました。たるポによってイベントそのものを活性化できますし、その結果を踏まえて、別のビジネスチャンスを創出したり、次回に向けた改善点を探ったりとイベント主催者側にもメリットを提供できます。

――イベントと連動できるのは強いですね。オフラインの行動データも取得できますし、会員の層も従来の新聞読者から広がりそうです。

石井:はい、チケット販売やチェックインを通じてオフラインの情報を蓄積できています。IDの取得傾向を見ると、中国新聞IDのときよりも平均年齢がやや下がりつつあります。クリスマスマーケットのアンケート回答を見ても女性が多いですね。従来の新聞読者層は中高年の男性がコアですが、異なる層へのアプローチが可能になってきていると感じます。

 会員数もスタートから約10ヵ月の2024年12月末時点で22万を超えました。2025年3月から2期目に入りますが、これからは会員基盤として会員数を増やす取り組みを進めつつ、BtoBの領域でいかに活用するか? が大きなテーマです。

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この記事の著者

山田 輝明(ヤマダ テルアキ)

NRIネットコム株式会社 クラウドテクニカルセンター 副センター長 兼 営業DX推進担当

2009年にNRIネットコムに入社。デジタルマーケティング事業を立ち上げ、特にGoogleアナリティクス、デジタル広告に関するビジネス拡大に注力。2018年にNRIネットコムから一旦退出し、株式会社MeeCapを設立、スタートアッ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2025/02/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/48152

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