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MarkeZine Day 2025 Spring(AD)

AIと人の共創で実現する、博報堂DYグループの統合マーケティングプラットフォームとは?

 マーケティングのデジタルシフトが進む中、広告の戦略立案から実行、効果測定に至るまでを一元管理し、最適化する仕組みが求められている。博報堂DYグループが開発した「CREATIVITY ENGINE BLOOM」は、統合マーケティングの未来を見据え、AIと人の共創を前提にした次世代プラットフォームだ。本記事では、MarkeZine Day 2025 Springにて博報堂DYグループの北川氏・竹村氏が語ったセッションの内容をもとにレポートする。

海外では、統合マーケティングプラットフォームが浸透

 昨今のマーケティングの世界では、データ活用の高度化と効率化が不可欠だ。特に、ブランドマーケティングとデジタルマーケティングの統合管理が求められている。しかし、従来の広告代理店の提供するサービスでは、この統合が十分に行えていないのが現状だ。

 海外では、すでに統合マーケティングプラットフォームが主流となりつつあり、データドリブンで一貫したマーケティング施策が行われている。たとえば米国では、広告代理店の枠を超えた統合的なデータ活用が一般的になりつつあり、広告のROI(投資対効果)を最大化するために、AIを活用した分析とプランニングが不可欠だ。

 こうした市場環境を踏まえ、博報堂DYグループは、マーケティング業務全体の統合管理を可能にする「CREATIVITY ENGINE BLOOM」を開発した。

「このプラットフォームは、当社が長年蓄積してきたデータを統合し、AIを活用することで、マーケティングのあらゆるプロセスを効率化・高度化することを目指しています。単なるデータ管理の枠を超え、マーケターがより直感的に活用できるツールとして進化させました」(北川氏)

株式会社博報堂DYホールディングス 統合マーケティングプラットフォーム推進室<br />グループマネージャー 北川  雄一朗氏
株式会社博報堂テクノロジーズ
マーケティング事業推進センター 部長 北川 雄一朗氏

 また同プラットフォームでは、デジタルとマス広告の統合管理だけでなく、クリエイティブやPR、営業などのマーケティングにおける各プロセスを一気通貫で最適化することにも重きを置いている。データの利活用が進む現代において、マーケティングの意思決定にスピードが求められている今、CREATIVITY ENGINE BLOOMは「計画」「実行」「分析」「改善」をシームレスに行い、マーケティングROIを最大化するための新たなソリューションとして期待されている。

5つのモジュールで実現する統合マーケティング

 「CREATIVITY ENGINE BLOOM」は、統合マーケティングを実現するために、5つのモジュールで構成されている。それぞれのモジュールが独立して機能するだけでなく、相互に連携し、一貫したマーケティング施策を可能にする仕組みだ。

「このプラットフォームは、単なるデータ管理ツールではありません。マーケティング業務の各プロセスを効率化し、より戦略的なアプローチを支援するために設計されています。特に、戦略策定からメディアプランニング、クリエイティブ制作、エンゲージメント強化まで、一貫した流れを作ることが可能です」(北川氏)

 具体的には、以下の5つのモジュールが存在する。

1.STRATEGY BLOOM(戦略策定):ターゲット設定、KPI策定、価値規定を支援し、データに基づいたマーケティング戦略を立案する。

2.MEDIA BLOOM(メディア最適化):オンライン・オフラインの広告配信を統合し、最適なメディアプランを実行する。

3.CREATIVE BLOOM(クリエイティブ開発):AIを活用してクリエイティブを自動生成・評価し、効果的な表現を提案する。

4.COMMERCE BLOOM(購買支援):オムニチャネル戦略を最適化し、データドリブンな購買促進施策を実施する。

5.ENGAGEMENT BLOOM(エンゲージメント向上):CRMと連携し、顧客との継続的な関係構築を支援する。

「これらのモジュールは、単独でも活用できますが、連携することで最大限の効果を発揮します。たとえば、戦略モジュールで策定したKPIに基づいてメディアプランニングを行い、最適なクリエイティブを配信することで、より効果的な施策が可能です」(北川氏)

 5つのモジュールが連携することで、マーケティングのPDCAサイクルを高速化し、広告効果を最大化できる。CREATIVITY ENGINE BLOOMは、単なるツールではなく、企業のマーケティングプロセス全体を最適化するための新しいフレームワークとなることを目指している。今回は、その中でSTRATEGY BLOOMについて詳しく語った。

ターゲット分析・KPI策定・メディア戦略設計を、スピーディーかつ高精度に

 CREATIVITY ENGINE BLOOMの中核を担うSTRATEGY BLOOMの一部として、戦略策定を担うのが「STRATEGY BLOOM PLANNING」だ。マーケティング戦略の根幹を形成し、ターゲット分析からKPI策定、最適なメディア戦略の設計までをサポートする。

「従来の戦略策定は、個々のマーケターの経験や勘に依存し、属人的になりがちでした。しかし、STRATEGY BLOOM PLANNINGでは、膨大なデータを統合し、プラニングアプローチを型化することで、より客観的で再現性の高い戦略策定ができます」(北川氏)

 このモジュールでは、市場調査データ、購買データ、広告配信データなどを統合し、フォーマット化されたAIによる分析を通じて最適なターゲット層を即時に特定する。さらに、広告効果を最大化するためのシミュレーション機能を備えており、KPIに基づいた戦略の妥当性を事前に検証できる。

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これにより、初動の工数が40時間ほど圧縮されるという(クリック/タップで拡大)

 さらに、同モジュールは、各企業の独自データと組み合わせることで、よりパーソナライズされた戦略を構築することもできる。データドリブンな意思決定を支援し、戦略策定のスピードと精度を向上させるSTRATEGY BLOOM PLANNINGは、マーケティング業務の根幹を支える重要なモジュールといえるだろう。

AIと人の共創で、より創造的なコンセプトの提案を実現

 後半では、コンセプト開発・クリエイティブ最適化について語られた。マーケティングにおいて、消費者の心を捉える強いコンセプトを生み出すことは重要だ。しかし、コンセプト開発は属人的なノウハウに依存しがちであり、一定の品質を保つことが難しい。こうした課題を解決するため、CREATIVITY ENGINE BLOOMには「STRATEGY BLOOM CONCEPT」が搭載されている。

 同モジュールについて竹村氏は「当社グループ会社のチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)である、細田が提唱する『インサイト型ストーリー』というコンセプト開発手法をAIに学習させることで、誰でも効果的なコンセプトを作れるようにした」と語った。

株式会社博報堂DYホールディングス 統合マーケティングプラットフォーム推進室<br />AI・テクノロジーグループ 竹村 剛一良氏
株式会社博報堂テクノロジーズ
マーケティング事業推進センター 部長 竹村 剛一良氏

 具体的には、ターゲットの設定からインサイト発掘、競合との差別化、キーコンセプト策定までの一連の流れをAIがサポート。ユーザーは、画面の指示に沿って質問に回答するだけで、論理的なコンセプトフレームワークを構築できる。

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「AIが壁打ち相手となり、マーケターのアイデアを引き出す仕組みを導入しています。各ステップでAIが様々な視点から提案を行い、マーケターがAIに提案された候補を修正していくことで、より創造的なコンセプトを導き出すことができます」(竹村氏)

35万件以上のテレビCMデータから、最善の一手を導く

 ブランド広告の効果を定量的に分析し、クリエイティブの最適化を支援するのが「STRATEGY BLOOM CM ANALYSIS」だ。これまで、テレビCMなどのブランド広告は効果測定が難しく、広告施策の成功要因が明確になりにくいという課題があった。この課題を解決するために、CREATIVITY ENGINE BLOOMでは35万件以上のテレビCMデータを活用した分析ができる。

「STRATEGY BLOOM CM ANALYSISでは、広告効果を様々な角度から数値化し、どの表現が視聴者の態度変容につながるのかを可視化できます」(竹村氏)

 同機能により、マーケターは過去の成功事例をもとに、新しい広告の制作に活かせる。また、競合他社の広告と比較し、自社ブランドの強みを明確にすることも可能だ。

「同じカテゴリーのCMでも企業毎に訴求目的が異なっており、それぞれの企業が独自のブランドイメージを確立していることがデータから読み取れます。こうした知見を活かすことで、より効果的な広告施策を実施できます」(竹村氏)

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 さらに、AIを活用し、広告の表現要素ごとの効果を評価・予測する機能も導入予定だ。これにより、CM制作のPDCAサイクルを短縮し、より精度の高いマーケティング施策が可能となってきそうだ。

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AIとの共創で、迅速かつ高度な意思決定を

 今後、博報堂DYグループは、同プラットフォームのさらなる進化を目指し、AIとの共創によるマーケティングの最適化を推進していくそうだ。

 CREATIVITY ENGINE BLOOMは単なるマーケティング支援ツールではなく、企業のビジネス成長を後押しするプラットフォームへと進化していく。博報堂DYグループは、今後も新たな技術を取り入れながら、より洗練されたマーケティングの実現に向けて取り組んでいく構えだ。

 現段階では、グループ内での活用を中心に浸透させていっているが「将来的にはクライアント企業への提案を活性化し 、業界全体のマーケティングプロセスを変革したい」と北川氏は意気込んだ。

 マーケティング業務のPDCAサイクルは、デジタル化により高速化している。しかし昨今のAIの進化により、さらに短縮され、データに基づいた迅速な意思決定ができることで、より高度化されたサービスを提供できるようになりつつある。最後に竹村氏は「私たちは、データとクリエイティビティを掛け合わせることで、これまでにないマーケティングの価値を提供していきたい」と話し、同セッションを締めくくった。

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この記事の著者

中村 祐介(ナカムラ ユウスケ)

 株式会社エヌプラス代表取締役

 デジタル領域のビジネス開発とコミュニケーションプランニング、コンサルテーション、メディア開発が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社博報堂DYホールディングス

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/09 11:00 https://markezine.jp/article/detail/48587