課題は「業務プロセス」にあり AI・データを活用する4つのポイント
──営業領域において、データやAIの活用が必要となる理由を教えてください。
背景には、日本企業における深刻なリソース不足があります。労働人口は増えないにもかかわらず、労働生産性は国際的に見ても低い。業務生産性の向上が最重要課題であり、そのためにデータやAIの活用が注目されているのです。一方で、ICTへ投資する企業は売上利益が伸びているというデータもあります。このような流れから、DX市場は10年で4倍という急成長が見込まれています。

──営業領域においてデータ・AI活用が期待されているのは、具体的にどのような部分でしょうか。
営業の1日の業務時間のうち、商談や提案などを行う“ピュアセールスタイム”は3割以下で、残りの7割を営業活動以外の関連業務が占めると言われています。ピュアセールスタイムの裏側にある非生産的な業務の効率化、これがデータ・AI活用に期待されている部分です。また、ベテランの営業モデルやスキルの継承についても、AI活用による生産性の向上が期待されています。

──データ・AI活用に挑戦する企業が増えている一方で、苦戦している組織も少なくありません。何が課題になっているのでしょうか。
実は、DXが進んだからこそ、営業現場の負担が増えてしまった面もあります。たとえばSFA/CRMを導入すると、入力作業が増加するのは事実。何を目的に、どのツールをどのように使っていくべきなのか整理せず、やみくもに導入してしまっているケースも見られますね。ひとりの営業担当が10種類以上のツールを使っていると言われています。

ビジネストランスフォーメーション事業本部 マーケティングトランスフォーメーション統括部
マネジャー 小坂駿人さん
このように、ツール活用に適した業務プロセスが設計されていないことで苦戦している営業組織は多いですが、そもそも営業DXは非常に難しいと言われています。偶発的な事象が起こりやすい、結果にたどり着くまでのプロセスが複雑であるなど、営業は人が介在することによる“外れ値”が発生しやすく、データの分析・活用が難しい仕事であると言えます。

──そうした壁を乗り越えてデータ・AI活用を成功させるためには、何が重要となるでしょうか。
大きくふたつあります。ひとつは、目的・業務適用・人材育成・環境構築の4つのポイントを押さえ、相互作用させること。たとえば非生産的な業務を効率化するのが目的だと定めたら、具体的にどの業務にデータ・AI活用を適用すれば良いか見極めます。それに必要なスキルを持つ人材を育成し、インフラを選定していきます。データ・AI活用をスタートさせる前提を整理することが重要です。

もうひとつは、その企業が保有するナレッジをAIと結びつけることです。我々はコンサルタントとして顧客企業に深く入り込み支援しますが、やはり、その業務のプロフェッショナルは顧客自身です。これまで培ってきたナレッジをAIで加速させる、そうした仕組みをつくることが重要です。
加えて、これらの取り組みは、経営と営業現場が足並みをそろえたうえで進めていくべきでしょう。データ・AI活用はトップダウンで推進するパターンと、営業現場の課題意識からボトムアップで始動するパターンがありますが、いずれにせよ経営層と現場の合意形成は重要です。
1人ひとりがAI・データを駆使する「売れる営業組織」へ!
- 売上がハイパフォーマーに依存している
- 育成体制が整備されていない
- SFAの入力・活用が進まない
このような悩みを抱える営業組織の皆様は必見! AIで科学された“勝ち筋”を基軸としたセールスイネーブルメント施策を伴走支援します。パーソルビジネスプロセスデザインが提供する「セールスイネーブルメントコンサルティングサービス」について、詳細はこちらのサービス資料ページからご覧ください。
KPI達成率が200%良化! 人の可能性を最大化させる“AI×プロセスデザイン”とは
──データ・AI活用の課題と成功のポイントを踏まえ、パーソルビジネスプロセスデザインではどのように顧客のデータ・AI活用を支援しているのでしょうか。
我々がよくご相談いただくのが「データ軸の業務連携」「ナレッジ活用」「マネジメントの高度化」「勝ち筋の落とし込み」の4つです。この領域をメインにAIを活用する支援をしています。
AIが脚光を浴び始めた当初は、「AIが人の業務を奪う」という考え方が散見されたように思います。我々もコンサルタントとして顧客の業務改善を支援する中で、そのように考えたこともありました。しかし重要なのは、AIを活用することでどれだけ「人の介在価値(可能性)を拓けるか」ということです。
そうした思想のもと我々が提供しているのが「セールスのゼロ化」です。営業活動以外の7割の業務をAIやテクノロジーの活用とプロセスデザインを駆使して削減し、ピュアセールスタイムを増加させる支援をしています。こうしたサービスを提供できるのは、パーソルビジネスプロセスデザインがこれまで営業の業務プロセスをデザインし、改善してきた経験と実績があるからこそ。加えてプログラミングやAI、自動化設計を行えるエンジニアやデータサイエンティストのリソースを保有していることで、成果に結びつくデータ・AI活用の支援が可能となるのです。

──具体的な支援事例も教えてください。
たとえば、法務テックサービスを提供されている企業さまの事例があります。こちらの企業のインサイドセールス組織では、エントリープレーヤーや中途採用プレーヤーに対する育成施策が整備されておらず、成果がハイパフォーマーに依存している状態でした。
そこで商談解析AIを活用し、ハイパフォーマーが商談でどういう会話をしているのか、会話構造を分析して商談の“勝ち筋”を可視化。そのうえでイネーブルメントサイクルを回す支援を行いました。
ただ、これは「AIを入れて万事解決」という話ではありません。実は商談解析を行う前に、SFAのダッシュボードを構築し、営業の個人目標や責任範囲などを可視化しました。会社からの期待を明確にしたうえで、1人ひとりの行動を商談解析AIで可視化し、トークスクリプトや商談プロセス、スコアリングロジックに落とし込んだのです。それらのコンテンツは研修やコーチングを通じて本人たちに実装し、シェアできる環境を構築しました。
同社はチームKPIの達成率が200%良化するというすばらしい成果を挙げていますが、何よりお客様に評価していただいたのは「ハイパフォーマーの営業活動をAIで“科学”できた」ことです。「背中を見て学びなさい」と言っていたものを統計的に算出し、それを実装した結果、新人メンバーの早期戦力化にも成功しました。

このように、人材の価値や可能性を最大化させられる網羅的なケイパビリティラインナップがパーソルビジネスプロセスデザインの特徴であり、この事例のポイントでもあります。

──課題解決を実現するために、業務プロセスや育成の方法、そしてツール活用と、幅広い視点から支援されているのですね。
おっしゃるとおりです。本来、ツールは業務効率化やスキル標準化といった目的があって導入するものですし、そのために“使えるデータ”を取得しなければなりません。
たとえば、SFA/CRMの自動入力を支援している事例があります。商談解析AIを活用して商談の議事録を自動生成・要約し、それをSFA/CRMへ自動連携する環境を構築しています。入力という非営業業務が減るのはもちろん、個人の主観や入力の揺れがなく、分析・活用に適した均一なファクトデータの取得が期待できます。
また、ここで重要になるのは、どのような情報をSFA/CRMに蓄積するかです。ヒアリング項目や商談の要点など、すでにノウハウやフォーマットがまとまっているはずです。それらをいかにAIやSFA/CRMに落とし込むか。加えて、入力したデータによるアウトプットを営業現場に示す仕組みも必要です。人間のモチベーションが下がるのは、“なぜやっているのかわからない”ときです。データ入力のメリットが伝われば、活用が全社的に加速していくはず。そうしたビジネスプロセスのデザインとテクノロジー活用、両面から支援できるのが当社の特徴です。
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顧客との関係構築に効率化はない ナレッジ×AIでより魅力的な営業組織へ
──パーソルビジネスプロセスデザインのこれからの挑戦を教えてください。
これから、AIを導入・活用するビジネスプロセスはデファクトスタンダードになっていくでしょう。事業を存続・成長させてきた各社のナレッジと掛け合わせることで、ビジネスにおける真の価値が生まれます。
しかし数あるAIの中で、どの業務に何を使ったら良いのかわからない方は多いと思います。そこで我々が適切なツールを適切に導入する支援を行うことで、業務効率が向上し、よりクリエイティブで収益に直接インパクトを与えられる業務にリソースを割けるようになるでしょう。それが、パーソルグループが掲げる「はたらいて、笑おう」というビジョンの実現にもつながります。そうした支援を今後も続けていきたいですね。

──営業組織にAI導入を考えている企業へ、メッセージをお願いします。
営業活動に効率化はあっても、顧客との関係の醸成やコミュニケーションに効率化はありません。顧客との関係醸成に注力することこそ、生産性向上のもっとも重要な目的ではないでしょうか。そのゴールを目指して、「ナレッジ×AI・データ」でビジネスプロセスをデザインし、より魅力的な営業組織をつくっていきましょう。
──本日はありがとうございました!
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