カリフォルニアロールから学ぶ、ローカライズ
この「文化を再解釈して、現地に受け入れやすい形に翻訳する」考え方は、食品分野にも応用されています。マーケティングの話からそれますが、カリフォルニアロールはその象徴的な例です。カリフォルニアロールを発明したのは日本人であり(※諸説あります)、もともと海苔や生魚に抵抗があった米国人向けに、海苔を内側に巻き、アボカドやサーモンなどを用いた「なんちゃって寿司」が考案されました。
日本人から「本物の日本食ではない」と批判されることもありましたが、結果的にこれが寿司文化の入口となり、今では米国におけるSUSHIの定番料理として親しまれています。また余談ではありますが、米国人の中では「I like Sushi」はクールで格好をつけるために言う人もいるので、ご飯を食べに行くときは気をつけた方がよいです(笑)。
ここから学べるのは、「文化を曲げるのではなく、橋をかける」というマーケティング視点の重要性です。ローカライズとは、単なる翻訳や現地生産ではなく、相手の文化に“自分ごと”として自然に入り込む工夫なのです。

米国人に伝わるコピーライティングとは
グローバル市場への進出において、日本企業はしばしば「日本で成功した形をそのまま輸出する」というアプローチを取ってしまいがちです(実は他の国の企業も一緒ですが……)。残念な話ですが、著者の会社の現地スタッフが考えたコピーライティングは、クライアント側で「商品訴求がものたりない」と日本っぽいものになって返ってくることがよくあります。
特に、日本人に響くキャッチコピーなどのコピーライティングは米国ではほとんど通じないと考えていただいてよいです。暗黙の了解や共通の文化背景に依存するメッセージやコピーが多いです。たとえば、東海旅客鉄道(JR東海)の有名な「そうだ 京都、行こう。」は、日本人からすると非常に洗練されおり、思い立ったその日に京都に行ける気軽さと早さを新幹線が提供することを連想できます。もし、米国向けに発信するのであれば、「Kyoto in a Flash(一瞬で京都へ)」など直接的なベネフィットを訴求する方がよいです。
日本ブランドとしては、米国市場で信頼される理由のひとつとなる高品質や技術力を伝えたいと考える方も多いと思います。先ほど触れた三菱自動車工業とクライスラーのColtのコピーライティングはよい例です。馬力やトルクといったスペックではなく、「It the time it takes to read this sentence, the '86 Trubo Colt can zip you from 0 to 50.(この文章を読んでいる間にColtは50マイル毎時に加速できる)」と広告で説明していました。