Z世代に“従来型の広告”は通用しない?
MarkeZine編集部(以下、MZ):本日は、ネスレ日本がOASIZと実施されたZ世代向けのコミュニケーション戦略についてお話を伺います。まず最初に、ネスレ日本ではZ世代をどのように捉えていらっしゃるのか教えていただけますか?
村岡:Z世代は、これからの日本の消費を担う存在として、私たちにとって非常に重要なお客様だと考えています。今後10年、20年と時が進む中で、消費の中心はZ世代へと移っていきます。だからこそ、「キットカット」をはじめとした当社ブランドに、彼ら彼女らが親しみを持ち、長く寄り添っていただける関係を築くことが、私たちにとって大きなテーマだと捉えています。

MZ:OASIZはZ世代に響くコミュニケーションを得意とされていますが、御社のご紹介とZ世代向けの施策を考える際のポイントを教えていただけますか?
江藤:OASIZは、TikTokなど縦型動画に特化した「ネクストジェネレーションカンパニー」です。創業から4年で、これまでに2,700本以上の動画を制作し、総再生回数は15億回を超えています。メンバーの平均年齢は27歳、クリエイティブ制作チームは平均23歳という非常に若い組織で、大企業向けのソリューションを展開しているのが特徴です。

江藤:Z世代は、他の世代とは異なり、テレビCMを通じてブランドを知るのではなく、SNS上で既につながっている人たちから情報を得ています。いわば、従来型の広告手法が届きにくい世代です。
また、ITリテラシーが高く、他世代よりも広く・深くコンテンツに触れているため、企業からのメッセージにも非常に敏感です。一方的な広告に対してネガティブな印象を持ちやすい一方で、「良い」と思ったものは自分から積極的に発信していくという特徴もあります。
Z世代の「日常」に入り込む Always onコミュニケーション
MZ:「キットカット」は幅広い世代に親しまれている商品ですが、ネスレ日本では現在、どのような戦略で展開されているのでしょうか?特にZ世代へのアプローチについて伺えればと思います。
村岡:キットカットのようなお菓子は衝動買いが多い商品であるため、いかに日常の中で思い出してもらえるか、つまり「想起される機会」を作ることが非常に重要です。多くの菓子メーカーは、3月や9月の棚替えタイミングに合わせてプロモーションを集中させますが、私たちはそれに加え、年間を通じた接点づくりも強化しています。OASIZさんとの取り組みもその一環です。
たとえば、2003年から継続している「受験生応援キャンペーン」のようなシーズナル施策に加えて、常にユーザーとつながる“Always onコミュニケーション”を掛け合わせることで、ブランドとの接点を日常的に持ち続けてもらうことを意識しています。
キットカットの主力商品はスーパーマーケットで販売されており、購買者は保護者や塾の先生など、「学生を応援したい方々」が中心です。これまでのコミュニケーションは、そうした大人に向けて行うもので、学生はその先にいる間接的な存在でした。
一方で、私たちはZ世代の学生にも直接アプローチしたいという思いがあります。ただ、これまでのような一方向的な広告では、彼らには届きづらく、むしろ「押しつけがましい」とネガティブに捉えられてしまうリスクもあります。結果として、ブランドの価値やメッセージがうまく伝わらない——そんな課題を抱えていました。