潜在層にもリーチ可能。リテールメディアの活用法
ケーススタディセッション「成功事例から考える、デジタルリテールメディアの明日から使えるヒント」においては、新たに登壇した3名から各社の具体的な事例が紹介された。

(写真中)株式会社メルカリ JP Sales Specialist 酒向海氏
(写真右)Rokt合同会社 Business Development/Director 大野皓平氏
このセッションで登壇した楽天・浅貝氏は、楽天グループのアカウントイノベーションオフィスで提供するソリューション、特に大手メーカー・ブランド向け「ブランドページ施策」について説明した。これは楽天市場内にブランド専用ページを構築し、認知から購買まで一気通貫でアプローチできるソリューションだ。

「『ブランドページ施策』には三つの特徴があります。一つ目は、楽天IDを活用した圧倒的なターゲットリーチ力です。二つ目は、購買手前の行動に対するインセンティブ設計。お気に入り登録や動画視聴といった行動にポイントを付与することで、ユーザーの興味・理解を促進することができます。三つ目は、楽天IDを用いたファネル管理により、認知・検討・購買のどの段階にあるユーザーなのかを詳細に分析し、PDCAサイクルを回せることです」(浅貝氏)
たとえば、大手家電メーカーのデンタルケア製品での事例では、テレビCMにも投資していた一方で、ニッチなカテゴリーでの市場拡大が課題となっていた。そこを楽天のデータを用いてターゲットを選定し、専用ページへ誘導。その結果、ページを訪れたユーザーの70%がテレビCM非認知層であった。この施策を通して、マス広告ではリーチできない潜在層への接触に成功し、検討層が2倍に増加したという。

さらに、並行して競合との比較分析も実施したところ、ユーザーが重視する点において、同ブランドのコミュニケーション上の課題を発見。即座に訴求内容を見直し、競合への流出を防ぐことができたと浅貝氏は述べた。
独自データを活用し、CVRとCTRを大幅改善
メルカリでは、2025年2月に広告事業「メルカリAds」をローンチした。メルカリユーザーは情報リテラシーが高く、化粧品購入前に商品詳細ページを平均100回以上閲覧するなど、慎重な比較検討を行う特徴があると、本セッション担当の酒向氏は説明する。
「メルカリの強みは『いいね』や『コメント』といった購入意向の高い行動データを捕捉し、活用できることです。化粧品メーカー様の事例では、過去90日以内に化粧品カテゴリーを購入・いいね・コメントしたユーザーへのセグメント配信を実施したところ、CVRが6倍に改善されました。無形商材となる人材・アルバイト系企業では、求人サービス『メルカリハロ』を3回以上閲覧した120万ユーザーに配信し、CTR 1.6倍、CVR26倍という、驚異的な成果となりました」(酒向氏)


Roktは、購入完了という特殊なモーメントを活用することで、「平均CTR5%」という高い成果を実現している。「購入完了の瞬間は、あらゆるオンライン行動の中で最も幸せな瞬間と言われ、受容性が高く、集中度も高いため、高いCTRが出る」とRoktの大野氏は語る。
「AI不動産『RENOSY(リノシー)』の事例では、『ターゲティングが難しい』『購入目的でないユーザーを獲得してしまう』『獲得チャネル間の競合』といった課題を抱えていましたが、Roktを1年以上継続した結果、他媒体比でCTRは4.1倍、CVRは33%改善。申し込み後の歩留まりも78%改善し、質の高いリード獲得を実現しました」(Rokt・大野氏)


これらの事例から、ファーストパーティデータを活用した精緻なターゲティングにより、従来のデジタル広告を大幅に上回る成果が実現できることが改めて実証されたと言えるだろう。
ラップアップセッションでは、三島氏が「デジタルリテールメディアの強みは、お客様にきちんと届けられるところ」と総括。さらに「一社だけ、一つのソリューションだけといったことではなく、横断的な連携を行うことが重要」と、消費者にとってより価値ある広告体験を実現すべく、リテールメディア業界横断の取り組みへの展望を述べて締めくくった。