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MarkeZine Day 2025 Autumn

インサイト活用のプロ・米田氏と紐解く、実践的インサイト活用法

グローバル戦略とローカルインサイトのせめぎ合い Udemy × ベネッセのイマージョン活用成功例

社員が自ら「イマージョン」スタイルのインタビューを実施

米田:「直接顧客に会う」という意味では、このプロジェクトでは、現場で事業を運営されているベネッセの方々に、インタビューをご担当いただきましたね。しかも、よくある単なる質疑応答インタビューではなく、実際使っていらっしゃるオンラインスタディに関する日記やヒストリーを事前宿題として準備してきていただいた対象者さんから、ご本人の言葉でその体験やお考えについてじっくりお話をしていただくという「イマージョン式」インタビューをトライしていただきました。このスタイルについてはいかがでしたか?

杉原:初めての体験だったので緊張しましたが、現場担当者がインタビューするので、講座の詳細や事業・施策の課題感を念頭に置いた上でヒアリングができたのはとても良かったです。

 また、これまで実施してきたインタビューは、企業が知りたいことをアジェンダに沿って聞く形式でした。いきなり本題に入り、「この商品は買いたいですか?」「そのとき商品を買わなかった理由では何ですか?」といった質問を投げかけてしまったこともありました。

 今回は「イマージョン」ということで、「あなたについて教えてください」という相手の理解からはじめ、「その商品を初めて見たときのことを思い出してください。どういう気持ちでその商品を検討したのですか?」「たとえばこのような商品があったとします。思ったことを声に出してみてください」など、相手のパラダイムに入っていく問いかけの仕方を学べました。このプロジェクトで、担当者のインタビュースキルは劇的に向上したと思います。

米田:対象者の方々が、人生の転機のお話やお悩みや夢まで率先して楽しく語っていただけるほど、インタビュアーの皆さんは対象者のパラダイムに深く入り込んでいらっしゃいましたよね。

菊地:少し話がそれますが、昨年のテレビCM制作時のキャスティングにもこの手法を応用しました。オーディションで「最近、仕事はどうですか?」と雑談から入ることで、たとえば「40代になって将来に迷いがある」といった本音が引き出されました。その中からリアルなニーズのある方々を起用することができ、映像にも深みが出て、ブランドの文脈に合ったCMに仕上げられました。

米田:今回はN1分析もご一緒させていただき、12人の対象者の方々をそれぞれN1x12人としてまずは一人ひとりにしっかり向き合い、そこから共通項のある方々の特徴をあぶり出すという方法をトライしていただきました。

杉原:はい。分析もおもしろかったです。12人の対象者には一人ひとりにニックネームをつけ、その人がどんな人物で、何を話してくださったのかを丁寧に分析しました。名前ではなくニックネームで語ることで特徴を一言で把握でき、「あの『xxxさん』ならどう考えるか」と自然と話せるようになり、理解も深まりました

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菊地:12人の方々を共通点でいくつかのセグメンテーションをすることで、たとえばオンラインスタディの価格や、必要とするサポートなどに、どんな人たちがどんな考えを持っていらっしゃるのかも明確化され、戦略のヒントにつながったと思います。

AIパワードなリスキリングプラットフォームを目指して

米田:では最後に、今後の展開についてお話しください。

菊地: 現在、Udemyは「AI搭載型なリスキリングプラットフォーム」として様々な機能を開発中です。社会人向けの学習に特化し、AIによって学習体験を進化させ、学びをキャリアや組織の戦略とつなげていきます。

 その一環として、この9月より「個人向け定額プラン」の提供を開始しました。買い切り型に加え、定額で継続的に学べる環境を整えることで、より柔軟な学習を支援したいと考えています。

 今後は、サブスクリプションと買い切りを併用する予定です。キャリア志向の高い層には定額制、ライト層には買い切り型といったように、ニーズに合わせてご提供できる体制を整えます。

米田:日本人は勉強好きという印象がありますが、実際はどうなのでしょうか?

杉原:実は、自己研鑽にかける時間はアジアの中でも低い水準です。学びが昇進や転職に直結しにくいという構造が一因と考えられています。だからこそ、私たちは学びの先にキャリアやチャンスがあるという仕組みを、もっと可視化していきたいと考えています。

米田:組織変革の観点からは、経営層に向けた取り組みも重要ですね。

杉原:現状でも、意識の高いビジネスパーソンや管理職層の利用が見られます。今後は経営層に向けたサービスの開発も視野に入れていきたいと思います。

米田:今後の展開がとても楽しみです。本日はありがとうございました。

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米田からの「インサイト活用」TIPS:イマージョンのすすめ

  • グローバルとローカルといったような、ビジネスに対する立場や目線が違う関係者間でターゲットインサイトの理解を深め意思疎通を図るには「イマージョン」が有効である
  • 「イマージョン」とは、対象となる生活や文化に完全に入り込むことで自然な理解を促進する教育方法で、言語や異文化の習得に用いられることが多いが、N1ターゲットの価値観を理解する際にもおすすめの手法である。
  • 「イマージョン」をN1インサイト理解に用いる場合、通常の質疑応答インタビューではなく、実際の生活を垣間見ることができるような観察手法と、観察された生活周辺の話を対象者の言葉で語ってもらうストーリーテリングで構成することが重要である。
  • また、すべての関係者が、直接にターゲットの生活に触れる体験をして、ストーリーテリングに耳を傾ける機会を設けることで、関係者間の共通理解を深め意思疎通を劇的に促進することができる。

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この記事の著者

こまき あゆこ(コマキ アユコ)

ライター。AI開発を行う会社のbizdevとして働きながら、ライティング業・大学院で研究活動をしています。
連絡先: komakiayuko@gmail.com

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/11 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49601

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