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MarkeZine Day 2025 Autumn

「ショート動画」活用の最前線

急成長するショートドラマ市場 LINEヤフーら6社のキープレーヤーが語る成長戦略と課題

「のぞき見」と「正体隠し」。日本と世界で異なるヒットの法則

 emoleの澤村氏は、日本では不倫・復讐系、普段見られない人の姿をのぞき見しているような感覚のコンテンツがヒットしやすいと述べる。これらはゴシップネタを見ているような感覚で視聴される傾向がある。

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emole株式会社 代表取締役 澤村直道氏
2022年12月末に「BUMP」をリリースし、総ダウンロード数230万、SNSでの切り抜き動画の総再生数30億回を記録している。プロダクトプレイスメントを活用したタイアップ作品として、アサヒ飲料「三ツ矢サイダー」が協賛、MBS毎日放送との共同制作ドラマ『春になれ!』などを制作している。
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 一方で、世界的にヒットにつながっているのが「正体隠し系」と呼ばれるジャンルだ。一見普通の人なのに、実は大金持ちだったり、特殊能力があったりと正体を明かすストーリー展開が見られる。世界的にヒットした正体隠し系の代表作品『リベンジ清掃員CEO咲』を制作したのが和雅だ。

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株式会社和雅 代表取締役社長 金光国氏
20年以上にわたり、中国との共同制作アニメや中国ウェブトゥーンの日本配信など、エンタメビジネスに携わる。近年は、ショートドラマ、ショートアニメ、ウェブトゥーンなど、モバイルコンテンツに注力。『リベンジ清掃員』や『大富豪のバツイチ孫娘』など、日本・海外で高い売上を記録した作品を生み出している
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 和雅の金光国氏は、ショートドラマを「ファーストフード」と例え、人間の「基本的な欲求」を満たすものだと表現する。

「普遍的なヒット要素として、ショートドラマに求められるのは、速さ、爽快感、気持ちを盛り上げるような特徴であり、これらが人間の基本的な欲求を満たせば、どこの国でも同じくヒットします」(金氏)

 また、グローバルでヒットした中国作品の多くは、中国国内でヒットした作品のリメイクであると指摘した。そのため、グローバルで成功するためにも、日本でまず作品をヒットさせることが重要だと述べた。

 加えて、DramaBox 于深氏は、グローバル市場で日本の作品をヒットさせるためには、「日本らしいもの」を作ることが重要だと強調した。

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DramaBox 日本法人 取締役 于深氏
DramaBoxは、シンガポールを拠点に、世界200以上の国でサービスを提供するショートドラマ配信プラットフォーム。9000万登録ユーザー、3000万MAU(月間アクティブユーザー)を誇り、ショートドラマ分野で世界最大級の規模を実現している。最大の強みは作品の豊富な量にあり、日本市場だけでも毎週10シリーズ、グローバルでは毎月350シリーズの作品を更新している
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ショートドラマが向き合う「課金の壁」

 ショートドラマは、瞬く間にSNSで再生数を伸ばすことも可能なバズコンテンツだ。企業のマーケターがプロモーション施策を検討する上で、その再生数の多さとプロダクトプレイスメントの可能性は魅力的な部分と言えるだろう。

 emoleの澤村氏は、実際にプロダクトプレイスメントを含むタイアップ作品は、切り抜き動画の再生数が1作品あたり数億回に達し、大きな露出機会が得られていると語る。

「BUMPのショートドラマは、切り抜きを作ってSNSで配信しており、95%以上がオーガニックユーザーの集客です。脚本の段階で切り抜ける要素を意識して作品作りをしています」(澤村氏)

 広告案件の一方で、ショートドラマ制作側としては収益の基盤となる課金ユーザーの育成が優先度が高い課題となっている。

 DramaBoxの于深氏によると、同サービスでは企業とのタイアップ案件よりも、課金型コンテンツの制作を優先しているのが現状だと語る。

 グローバルでの課金モデルは「サブスクリプション6割、都度課金3割、広告収益1割」の構成で、サブスクリプション契約の中でも週ごとの課金会員が多い。「おもしろいコンテンツの量がまだ足りない」として、1週間で2〜3作品視聴後に解約となるパターンが多いという。

 emoleの澤村氏は、一時的な課金収益よりも継続的な視聴を重視し、「視聴者が自分で課金タイミングを選択できる」設計を採用。課金したくない人は1日待つか、CM30秒視聴で無料にするなど、ユーザーに選択肢を提供している。

 GOKKOの田中氏は、全話視聴後に4,000〜5,000円を支払うことになる価格設定への課題意識から「ワンコイン課金」を導入した。「500円で全話見れるものを増やし、コミック1冊や映画より手軽な価格で体験を提供している」と述べた。

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株式会社GOKKO 代表取締役 田中聡氏
縦型ショートドラマのクリエイター集団「ごっこ倶楽部」から始まり、2022年に株式会社GOKKOを設立。現在では制作のインハウス化を最大の強みとし、企画、脚本、制作、撮影、投稿、分析を自社で行い、社員数も100名を突破。2025年2月には、縦型ショートドラマ配信プラットフォーム「POPCORN」をローンチした。
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 また、都度課金、サブスクリプション、広告の順序を重視したLTV最大化戦略を採用している。「都度課金は瞬間的に見たいものを見る行動で、SNSでバズったものを見に来る。サブスクリプションは見たい作品が多くないと成立しない」として、段階的な課金ユーザーへの誘導を図っている。

 課金ユーザーの継続率について、澤村氏は「一度課金した利用者のサービス継続率は高いが、漫画アプリと比べるとまだ低い。ヒット作品の絶対数が足りない」と分析。田中氏も「トレンドを追うだけでは、継続視聴につながらない。満足して最後まで見た人のほうがリピート率が高い」と、作品の質の重要性を強調した。

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インハウス制作体制の確立が、良質な作品を量産する鍵に

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この記事の著者

竹上 久恵(編集部)(タケガミ ヒサエ)

早稲田大学文化構想学部を卒業後、シニア女性向けに出版・通信販売を行う事業会社に入社。雑誌とWebコンテンツの企画と編集を経験。2024年翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49802

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