3社の共通点は成果にコミットするクリエイティブ力
MarkeZine編集部(以下、MZ):本日はMeta広告の最前線を走る3社にお集まりいただきました。まず、今回3社にお声掛けされた意図をお聞かせください。
西川(Meta):昨今、AIによる運用の自動化が加速しているMeta広告は、クリエイティブの重要性が改めて問われるフェーズに入りました。特にInstagramの縦型動画をはじめとする「リール広告」、クリエイターとの連携で広告を共創する「パートナーシップ広告」で、どのようなクリエイティブを制作できるかは、広告主様や代理店様が競合と差別化するための重要な鍵となるでしょう。
西川(Meta):そこで今回は、リール広告を中心とした縦型動画の出稿割合が80%を超えるトップランナー3社に集まっていただきました。各社の活用法や組織体制を共有し、市場全体をさらに活性化できればと思っています。
MZ:みなさまの担当業務や会社の強みについて教えてください。
木口(AXIS):AXISで広告事業の全体統括をしている木口です。事業戦略の設計から現場の実行支援までを一気通貫で管掌しています。当社はクリエイティブのPDCAを回す「速度」と「量」、そしてKPIにコミットする力が強みだと考えています。
山本(KITEN):KITENで取締役、広告戦略の最高責任者を担っている山本です。当社は成果報酬型のSNS広告代理店ですが、「予算運用型よりもハイパフォーマンスで獲得する」という前提のもと、「エンタメ×PR」をテーマにした広告など、独自性の高いクリエイティブで成果につなげている点が強みですね。
栗田(ナハト):ナハトで取締役、広告運用部隊の事業責任者を兼任する栗田です。ナハトの一番の強みは、創業から続くインフルエンサーマーケティング。また、SNSネイティブ世代が豊富に在籍するため若年層に響くクリエイティブを制作しやすいことや、成果報酬型のみならず、利益につなげるマーケティングを掲げ、幅広い領域の総合提案を得意としていることも特長でしょう。
広告主のリール広告活用、ハードルはどこにある?
MZ:リール広告から深掘りします。ユーザーの視聴時間は伸び続けていますが、現状の広告活用について西川さんはどう見ていらっしゃいますか。
西川(Meta):直近、Instagramにおける動画視聴時間は昨対比較で約30%伸びており、2024年調査でも利用時間の50%以上はリール動画の視聴に費やされている状況です。これだけの割合を占めるとなると、企業がリール広告を活用しない手はないと言えるでしょう。しかし、広告主様の中にはリール広告の活用に対してハードルを感じている方も少なくありません。
MZ: 現場から見て、広告主が活用を進める上での障壁はどこにあるのでしょうか。
栗田(ナハト):私は「再現性の低さ」が最大のハードルだと考えています。動画広告はカット割り、素材、撮影方法、BGM、音声など要素が、静止画よりも格段に増えます。制作に何倍もの時間を要し、社内で簡単にPDCAを回せるものではないからこそ、敬遠してしまう企業が多いのではないでしょうか。
当社ではこれを「圧倒的な打席数」で解消しています。たとえばあるクライアント様に対しては、年間で約1万5,000本もの動画を制作していました。7年前から獲得広告の動画を内製で作り続け、効果検証を繰り返してきたことで、社内にノウハウが蓄積され、再現性を高められています。
山本(KITEN):私が考えるハードルは「コンテンツとして見せ続けることの難しさ」です。リール広告は、スキップされないようコンテンツ自体に興味を持ってもらう必要があるのですが、おもしろすぎても”購買”につながらない傾向があり、塩梅の見極めは非常に難しいのです。
当社では、見極める力を体系的に磨いていくために、社内で「センス向上委員会」を設け、「センス」を理論化・言語化し、組織としてノウハウを蓄積しています。成果報酬型の利点を活かし、売れた広告の要因を脳科学やマーケティング概念を用いて分析、独自の理論に落とし込んでいます。
木口(AXIS):私は「圧倒的な量とスピードを実現するための組織体制」がハードルだと考えます。皆さんがおっしゃる通り、獲得広告はナレッジを蓄積するためにいかに検証数を重ねるかが重要です。
当社では、個人の制作量とスピードを最大限引き上げることから逆算した組織体制を構築しています。具体的には「動画」「静止画」「記事」「システム」の4チームに分業し、各領域に特化することで、運用者が脳のリソース全てをコア業務に集中できる環境を整えています。また、静止画で高速検証を行い、その結果を動画の品質向上につなげる連携も強みです。
こうした「制作特化」の体制とナレッジ共有文化により、運用者は毎日50本の新規動画制作をKPIに置くほど、短期間で圧倒的な「量」と「質」を極めています。
リール広告を成功させる制作体制・クリエイティブの秘訣
MZ:AXIS社より「組織」のお話がありましたが、そのほかの2社でも制作・運用体制の工夫はありますか。
栗田(ナハト):ナハトでは、広告運用の担当者が動画やLPのディレクションまでを一気通貫で担当する体制にしています。制作チームと運用チームが分かれている会社も多いですが、分業にすると「運用側はCPAを下げたい」「制作側はデザイン性を高めたい」といった目的の不一致が起きがち。当社は運用者が全責任を持つことで、実際の数値結果をもとに的確なPDCAを実行しています。

山本(KITEN):当社も細分化せず、リサーチ、戦術立案、制作、運用までを一気通貫で行う体制ですね。動画広告は再現性の担保が難しいからこそ、部署を跨ぐとコミュニケーションコストやエラーが発生しやすいもの。「質」を担保しつつ「量」を作るには、一人の担当者が商品からクリエイティブのことまですべて理解している体制がベストだと考えます。
MZ:リール広告における“新常識”や今だからこそ重要なキーワードはありますか?
木口(AXIS):「AIをフル活用すること」ですね。当社の量とスピードに特化した体制にAIを実装することで、検証速度が飛躍的に上がり獲得実績も向上しました。特に徹底しているのが、「素材の作り込み」と「冒頭1〜3秒でどこまで尖れるか」へのこだわりです。あらゆるツールを組み合わせて表現をブラッシュアップし、全員が新しい素材を毎日生み出し続けています。
山本(KITEN):私が考えるリール広告の“新常識”は、「顕在層獲得ゲームから、潜在層獲得ゲームへ」です。リール広告は参入企業が増え、CPMが高騰する中で、顕在層だけを狙った配信は競争が激化しているのが現状。しかし、リールはそもそもエンタメ性の高いコンテンツが集まる面です。楽しさも持ち合わせたハイクオリティのコンテンツによって、新たな広告価値を創造できれば、ミドルファネルへのアプローチでも効果を発揮できると考えています。
栗田(ナハト):私は「パーソナライズ」が重要だと考えています。一人ひとりに合わせて提案する「対面営業」が、やはり一番売れますよね。SNSは個人の好みが集まる場所ですから、画一的な内容ではスルーされてしまいます。
自分向けだと直感してもらうには、これまで以上に個々人に深く刺さる訴求が不可欠です。極論を言えば、100人いれば100通りの広告・LP・フォームを作るべきなのです。だからこそ、当社では一対一のコミュニケーションにこだわり、商品が届くまでの導線を丁寧に整えています。
運用自動化が進む今、配信設定のポイントは?
MZ:加えて、配信設計にポイントがあれば教えてください。最近ではASC(Advantage+ ショッピングキャンペーン)など、運用自動化に便利な機能もリリースされていますが、影響はありますか。
栗田(ナハト):ASCによって、かつてより運用難易度は下がったと感じますが、機械学習が鍵になるからこそ、初動の挙動は特に注視しています。伸びないものはすぐに止めて作り直すといった、細かいチューニングは依然として重要ですね。
山本(KITEN):当社の特徴は、ブロード配信(広範囲への配信)はあまり実施していないことですかね。先ほどの通り、潜在層向けのコンテンツを中心に作っているため、配信対象を広げすぎるとターゲットがブレてしまうからです。まずはターゲットを絞ったセグメント配信をしつつ、徐々に拡大させるというステップを踏んでいます。
木口(AXIS):初動の動きは皆さんに同意です。加えて拡大フェーズでは、各クリエイティブに対する「機械学習のたまり方」を注視しています。動画広告はどうしても「クリエイティブの摩耗」が早いもので、すぐに獲得効率が落ちてしまいがちですが、機械学習の状況を見ながら丁寧に調整し、優秀なクリエイティブを作り出せば、1つのクリエイティブを長く活用することが可能です。
獲得目的のパートナーシップ広告の要諦
MZ:続いて、パートナーシップ広告について深掘りします。西川さん、このフォーマットの特徴と現状について教えていただけますか。
西川(Meta):パートナーシップ広告とは、広告主とクリエイターが協力してクリエイティブを作成し、「クリエイターと企業の共同投稿」として広告を配信できる機能です。ユーザーの信頼を得やすく、クリエイターのフォロワーにも広がりやすいことが特徴になります。
西川(Meta):日本国内でも実績は増えつつあるものの、クリエイターのアサインに掛かる費用や工数なども発生しますので、まだデジタル広告代理店様の中ではスタンダードになっていない印象です。その点KITEN様とナハト様は、インフルエンサー事業で成長されてきた背景から、パートナーシップ広告における実績も豊富です。
MZ:獲得目的で成果を出すための「要諦」を教えてください。
山本(KITEN):一言で言えば「クリエイターの見極め」でしょう。当社は成果報酬型で、制作費やキャスティング費も弊社側で負担するため、選定を外した場合のリスクも高いです。だからこそ、クリエイターが発信するコンテンツの世界観と、商材のUSP(独自の強み)がいかにマッチするか、その「相性」を徹底的に見ています。
クリエイターごとに指標は異なりますが、たとえばブログの「いいね」数、フォロワーの男女比、実際の投稿内容なども分析しつつ、商材にマッチしそうなクリエイターかどうかを見極め、慎重に選定しています。
栗田(ナハト):「“商品が売れる”クリエイターへの解像度」です。当社は創業以来インフルエンサーマーケティングを事業としてきたため、「フォロワー数が多いからといってモノが売れるわけではない」という事実を痛感しています。社内のインフルエンサー事業部が蓄積してきた実績データをもとに、誰をアサインすべきか、的確に目利きできる点が当社の強みでしょう。
なお、実績データは表面的な数値だけではありません。ファンはなぜフォローしているのか、何がきっかけで人気が出たのかといったクリエイター一人ひとりの「歴史背景」を深く理解することで、これまでの投稿の文脈に沿った、一貫性のあるパートナーシップ広告を提供できるのです。
MZ:購買目的のパートナーシップ広告における事例があれば具体的に教えてください。
山本(KITEN):テレビ番組のようなPRコンテンツを作成し成果報酬で提供した事例では、「新規顧客件数が前日比の約30倍」と大きな成果につながりました。単なる商品紹介ではなく、バラエティー番組などの質の高いエンタメコンテンツを制作し、これまでSNS広告に反応しなかった潜在層を「視聴者」として惹きつけることによって、ブランドリフトとダイレクト集客を同時に叶えられています。
栗田(ナハト):ある美容商材の事例ですが、あえて「メガインフルエンサー」ではなく、フォロワー数は少なくても特定のコミュニティで熱狂的な支持を得ている「マイクロインフルエンサー」を複数名起用し、成功したケースがあります。
過去のデータから、特定のフォロワー層で活発な「悩みに対するコメント」の傾向を分析し、その文脈に沿った投稿をした結果、獲得効率が劇的に改善しました。数値化できない「ファンの熱量」を見極めてアサインした結果と言えます。
Meta代理店トップランナー3社が見据える、2026年の展望
MZ:最後に、Meta広告における展望についてお聞かせください。
木口(AXIS):「獲得の最大化と長期安定」を実現していきたいですね。直近では運用の再現性が高まり、ROAS 200%の高水準を3ヵ月間維持し続けるクリエイティブも出てきています。また、初動ROAS 80〜100%という「通常なら停止するクリエイティブ」であっても、運用の調整力で180%近くまで引き上げ、獲得数を底上げできています。
さらに2025年には、認知領域の商品PRに特化した部署も新設しました。インフルエンサーや自社オーガニックアカウントを活用した縦型動画により、獲得だけでなく認知拡大のフェーズからクライアントに貢献していきます。
山本(KITEN):当社は強みである「エンタメ×PR」をさらに進化させ、「テレビクオリティのコンテンツをSNS市場に持ち込む」ことです。KITENが「番組制作会社」のような役割になって、Metaで独自コンテンツを配信するという手法に力を入れたいです。「モノ消費」から「体験消費」に移り変わっている現代において、獲得に苦戦している企業様の課題解決に役立ちたいですね。
栗田(ナハト):当社は引き続き、パートナーシップ広告を含めた「クリエイターをキャスティングする広告制作」を強化します。「誰が言うか」がこれまで以上に重要な時代、当社ならではのインフルエンサーマーケティングの強みを活かしながら、支援するクライアント様の業種やジャンルをますます拡大させていきたいです。
西川(Meta):Metaは、今後も広告主様や代理店様にご利用いただきやすい環境の整備にも注力していく予定です。もし、「Meta広告がうまくいっていない・伸び悩んでいる」という広告主様がいらっしゃれば、ぜひ先進的な取り組みに挑戦しているこの3社様にご相談ください。

