AI時代のMeta広告、なぜ今「クリエイティブ」が最重要なのか?
――AIによる広告システムの自動化が進む中で、Meta広告における「クリエイティブ」の重要性は、従来と比べてどのように変化していますか?
山中(Meta):クリエイティブの重要性自体に大きな変化はありませんが、その役割は変化しつつあります。具体的には、クリエイティブがターゲティングの役割を担うようになってきています。Metaでは「クリエイティブは新たなターゲティング手法である(Creative is the new targeting.)」と考えています。
従来の広告運用では、まずオーディエンス属性からターゲティングを設定し、設定したターゲティングに対して効果がありそうなクリエイティブを制作していく、といった手法が一つあったと思います。しかし、近年Metaにおいては、あえてターゲティングを細かく指定しない「ブロードリーチ」を推奨のターゲティング設定としております。人間がターゲティング設定に介在せず、AIに委ねることを推奨しているということですね。
こうした設定を行う場合、クリエイティブがターゲティングの機能を果たします。具体的には、入稿されたクリエイティブにおける広告表現と広告フォーマットに応じて、異なるオーディエンスに広告を配信します。
Metaが度々、「クリエイティブの多様化」が重要だと発信しているのも、こうした背景があります。
――「クリエイティブの多様化」という言葉が出ましたが、なぜ「クリエイティブの多様化」が重要なのか、もう少し詳細に教えてください。
山中(Meta):クリエイティブを多様化することは、リーチの拡大に直結します。Meta広告にはクリエイティブの類似性を判定するような仕組みがあり、類似性が高いと判断されたクリエイティブは、たとえブロードリーチで配信していても、特定のオーディエンスに偏って配信されてしまいます。これだと、ブロードリーチで配信をしている意味があまりなくなってしまいます。
ターゲティングをAIに委ねる大きな利点の一つとして、人間には考えつかなかった潜在オーディエンスにリーチを広げてくれる可能性がある、ということが挙げられます。そのターゲティングを担う重要な要素がクリエイティブであり、クリエイティブの多様化は、リーチの拡大に寄与します。
多様化の切り口としては、先程も少し申し上げましたが、広告表現を多様にする・広告フォーマットを網羅する、この2点を押さえていただくことが重要になります。
――フォーマットの多様性とのことですが、Meta広告には様々なフォーマットがあります。特に注目すべきフォーマットはありますか?
山中:縦長動画広告です。2024年の弊社内調査において、Facebook、Instagramユーザーの滞在時間のうち、60%以上が縦長動画の閲覧に費やされていることが明らかになりました。
加えて縦長動画広告は市場の成長が著しく、2022年度で約300億円規模だったものが、2027年度には約2,000億円規模までの拡大を見込んでいるといったデータがあります(※)。ここまでの内容だけでも、Meta広告における縦長動画の重要性は想像いただけるかなと思います。
また縦長動画には、横展開し易い、といった実運用上の利点もあります。縦長でクリエイティブを作ると、1:1や4:5サイズへクロップし易いケースが多いんですよね。これは先に申し上げた、広告フォーマットの網羅という観点で有用です。
クロップ編集までを想定した縦長動画クリエイティブのディレクションができていると、まずは縦長動画広告を伸ばしつつ、並行して広告フォーマットの網羅も行っていく、といった動き方ができて効率的です。
広告主が直面する「クリエイティブの壁」
――「クリエイティブの多様化」を実現しようとするとき、広告主が直面しがちな課題はありますか?
松橋(サイバーグリップ):代理店として、日頃多くの広告主様を支援している現場の感覚でお伝えすると、インハウスのお客様と代理店に依頼しているお客様では、それぞれ異なる課題があると考えています。
インハウスの場合は、リソース不足の課題があります。制作リソースを社内で持つことが難しく、フォーマットや表現の多様性を網羅することが難しいケースが多いです。
一方、代理店に任せているお客様の場合は、確認作業に時間がかかってしまい、なかなか配信まで至らないという課題があります。代理店がお客様のレギュレーションを完全に把握しているのであれば問題ありませんが、実際には代理店側がお客様の意図を汲み取れないまま制作・配信するケースが多く見られます。その結果、クリエイティブの確認に時間がかかってしまい、PDCAが適切に回らないという問題が生じています。
また、制作費は基本的に代理店側の言い値となっているのが現状で、構造上、成果に対してではなく、「作業量」に対して報酬をいただく関係性になりがちです。そのため、効果に直結しないケースも十分にあり得ます。効果が出るかどうかが不明な中、社内稟議を通して予算を取得するという工数を考えると、「そもそもクリエイティブを作らなくても良いのではないか」と考えるお客様も多くいらっしゃいます。
こうした広告主様の課題を解決すべく、私たちは2025年11月4日にサイバーエージェントグループ初の成果報酬型の広告代理店、株式会社サイバーグリップを設立しました。

広告主のリスク最小化・広告成果最大化を実現する新ビジネスモデル
――サイバーグリップの特長について詳しく教えてください。
松橋:サイバーグリップでは、AIを活用することで、不要なコストを抑えながら、コンバージョン数をはじめとする得られた成果に応じた費用のみをご請求する、成果コミット型の広告運用サービスを提供しています。また、すべてのクリエイティブ制作費は無償で、成果単価のみの費用となります。
成果以外の要素を徹底的にそぎ落としリソース最適化をすることで、当社側がリスクを背負いつつ高効率での運用を実現します。そのため、成果以外の要素である「定例・施策振り返りやシミュレーション提出」「お客様によるクリエイティブ確認」のサービスは基本的に提供していません。
――「クリエイティブ確認ゼロ」と聞いて、お客様は納得されますか?
松橋:前提として「クリエイティブ確認ゼロ」としている理由は、お客様には自社のサービスや商品のマーケティングに集中していただき、当社は広告効果の向上に専念することで、お互いがWin-Winの関係を築けると考えているからです。
従来の運用型広告はデザイナーが作成したクリエイティブを入稿し、配信結果を後から振り返るという流れでした。現在、当社が活用している「極予測AI」は、AIが効果を予測し、クリエイターと協業する広告制作システムです。サイバーエージェントが長年配信してきたデータを蓄積し、そのデータを元にデザイナーが作成したクリエイティブを予測システムにかけます。広告効果が上がるとAIが判定したもののみを最終的に管理画面に入稿するため、効果が出る確率が従来よりも大幅に向上します。予測はリアルタイムでデータを反映するため、予測から入稿までのタイムラグが短いほうがいいのです。
お客様のクリエイティブ確認をゼロにする代わりに、私たちがフルコミットで成果を出すという考え方です。もちろん、クリエイティブの確認を希望されるお客様には、デイリー単位で確認いただいています。
その場合、デザイナーがクリエイティブを作成した後、お客様のレギュレーションをインプットした「審査AI」が自動的に審査を行います。そこで承認されたものをお客様に画面上で承認いただき、そのままワンクリックで入稿・配信まで完了するフローとなっています。
こうしてPDCAの高速化を実現しており、デイリーでクリエイティブを制作、入稿もその日のうちに行うことが可能です。月間約300本程度のMeta広告クリエイティブ(動画、静止画)を制作・入稿しています。
クリエイティブの「多様性」をAIで実現する仕組みとは
松橋:Meta広告において重視されている多様性については、人間が判断するよりも、AIに判定してもらうほうが良いと考えています。多様性の軸は、先ほど山中様が説明された表現やフォーマットの違いはもちろん、広告主様が伝えたい内容やサービスの特徴など多岐にわたるからです。
――AIの回答は平準化しやすいとも言われています。クリエイティブも均一化しないのでしょうか?
松橋:当社では、AIが「広告表現の偏り」を可視化し、クリエイティブ表現の幅を拡大する「極多様性プロット」を活用しています。これにより、より幅広いユーザーと訴求表現のバリエーションを持つ広告制作が可能になり、広告効果のさらなる向上が期待できます。
こうして多様性のあるクリエイティブを投入し、効果が出たものを抽出して、それをもとにまた別の多様性の高いものを投入するというサイクルをしっかりと回していくことが大切だと考えています。
3業種で最大1.5倍のコンバージョンを改善!
――既に成功事例も出ているとうかがいました。どのような効果・成果が出ているか教えていただけますか?
松橋:法人化前の2025年5月頃から3社のお客様で試験的に成果報酬型運用に変更したところ、メディアサイト業種のお客様では、コンバージョン数が128%改善しました。また、通販業種のお客様では150%のコンバージョン改善を実現し、人材業種のお客様においても117%のコンバージョン改善という結果を得ることができました。

いずれも既に効果改善に取り組まれている企業様でしたが、大幅な改善が実現できました。クリエイティブの投下量が圧倒的に不足していたため、そこを補強することで効果が実証されたと考えています。
――サイバーグリップのような、AIを活用してクリエイティブの大量検証(多様性の担保)を仕組み化し、成果報酬型で提供する取り組みを、Metaとしてどのように捉えていますか?
山中:非常に期待が高いと感じています。クリエイティブの大量検証において課題となりやすい広告主様側の監修フェーズをスキップできることで、まず検証サイクルが劇的に速くなり、トライアル可能なクリエイティブの表現に対する制約も少なくなると思います。
また、成果報酬という仕組み上、代理店様としてのコミットメントが当然強く、クリエイティブ制作に手を抜くことは決してできません。
結果として、クリエイティブ基点での効果改善が推進され、当社が提唱している「クリエイティブは新たなターゲティング手法である(Creative is the new targeting.)」を示せる事例が、今以上に多く創出されると期待しています。
Meta×サイバーグリップが考える、広告のこれから
――最後に、現在の広告効果に苦戦し、クリエイティブのPDCAに課題を感じている読者へメッセージをお願いします。
松橋:AIの進化により、代理店のあり方が問われる中で、どのように価値を提供するかが重要です。事業拡大を目指すお客様に対して、当社は成果でお応えし、お客様にはリソースの最適化を図っていただきたいと考えています。事業成長に必要な部分に集中していただけるよう、引き続き伴走支援いたします。
山中:広告のあり方がAIによって変化する中で、広告主様やマーケターの方々が注力すべきポイントも変化していると思います。たとえば、クリエイティブの多様化一つとっても、様々な観点があり、広告主様のリソースだけでは推進しきれない、大きなマーケティング組織がある会社でないとそもそも実現できないといった課題が出てきます。

自社内リソースだけでは広告プロダクトのポテンシャルを引き出しきれていないと感じられている広告主様は、サイバーグリップ様のように、Meta広告に造詣の深い代理店様と協力して取り組むというアプローチもあると思います。
当社としても、今後もMeta広告プロダクトの進化について広告主様や広告代理店様と連携し、効果的な活用事例を創出して行きたいと考えております。

