ヤマハ事例:約1,600万のリーチと目標の2.5倍のアクション誘導に成功
全キャンペーンの中で最も優れていた作品に贈られるSpotify Mic Drop(グランプリ)を受賞したのは、ヤマハの『#LoveYourMistake「Knock Turn」』だ。
42人のノクターン演奏データを解析し、ピアノの“ミスあるある”から着想した楽譜「Knock Turn Op.9-2」を制作し、世界のピアノ奏者が演奏した楽曲をSpotify広告で配信。その結果、約1,600万人のリーチと目標の約2.5倍の楽譜閲覧数を記録した。
同取り組みの企画者である電通東日本のプランナーである野田祐希氏が、取り組みの背景、詳細、結果について語ってくれた。
楽器離脱者のインサイトを捉えた企画を
━━取り組みの背景を教えてください。
ヤマハの調査では、“練習で上達実感が得られず楽器を手放す人”が44%いることがわかっていました。ピアノの大手メーカーとして、楽器離脱者が多いことはビジネス課題です。
そして、その背景には、SNSにあふれる完璧な演奏・AI補正された音楽の普及によって、間違えないことへの意識が過度に高まっていることが関係しているのではと考えました。
そのような中、『自ら一歩踏み出そうとする人々の後押し』をブランドプロミスに掲げるヤマハとともに、練習する上で必ず向き合わなければならない「ミスの認識」を前向きに変えるアプローチを模索していました。
共感を得られるミスあるあるをSpotify広告に
━━今回受賞した取り組みの内容を教えてください。
まず、42人のノクターン演奏データを解析し、“ミスあるある”から着想した楽譜「Knock Turn Op.9-2」を制作しました。そして、世界のピアノ奏者からその演奏を募り、仕上げた楽曲をSpotify広告として配信しました。
「間違えないこと」に敏感な時代だからこそ、音を外すことや、つまずくことを“音楽と向き合った証”として肯定したい。ミスは避けるものでも、過ちでもなく、成長のために必要な”愛すべき”もの。そんなメッセージを込めたグローバルキャンペーンです。
85%がイヤホン・ヘッドホンだからこそ細かな音への気遣いが重要
━━今回受賞した取り組みを成功に導くために工夫した点はありますか。
大きく3つの点を意識してキャンペーンを企画しました。1つ目は、「ピアノのミス」というハイコンテクストな企画をどう伝えるか。精緻にターゲティングでき、85%がイヤホン・ヘッドホン視聴というSpotifyだからこそ、音の細かなニュアンスが届けられると判断しました。
2つ目は、誰もが経験するミスを中心に選定することです。「あるある!」という共感を引き出す効果、統計データ由来のクリエイティブであるため、「このミスは自分だけじゃなかった」と安心できる効果を期待しました。
3つ目は、ミスというセンシティブなテーマを扱うため、不快にならないよう表現のトーンに留意したことです。たとえば、演奏データのミスを忠実に楽譜化すると“ただの失敗”として悲観的な印象になります。そこでミスの種類は変えず、譜面上ではあえてズレを強調し、フィクションとして楽しめるミスへと転換しました。
リーチ・好意度・ユーザーアクションすべてに貢献
━━得られた成果を教えてください。
キャンペーン全体のトータルリーチは約1,600万人となり、目標の約2.5倍の楽譜閲覧数を記録しました。聴取完了率も94.61%と想定を超えるものになりました。
また、キャンペーン認知者の好意度が10.9%上昇、SNS上のコメントの82%がポジティブな反応、本企画に接触したユーザーの92.1%が「音楽に向き合う気持ちがポジティブになった」と回答するなど、広告に対して好意的な反応が見られました。
各受賞作品への審査員の評価と広告音声はこちらの記事をチェック
大塚製薬事例:没入度の高い広告で完全聴取率は90%以上を記録
3DオーディオやASMR、スクリプトの工夫など、音声ならではのテクニックを活用して最も没入感のある体験を実現したキャンペーンを表彰する部門であるEar Candy部門を受賞したのは、大塚製薬の『サラウンドコマーシャル「円陣」&「円陣(部活)」』。没入型の音声広告である「サラウンドコマーシャル」に挑戦し、60秒の完全聴取率は92.1%、メインターゲットの15〜17歳のCTRは平均値の2倍を記録した。
同作品に携わった大塚製薬チーム(広告会社の電通/電通デジタル、制作会社のビッグフェイス/ステップ/音響ハウスを含む)に、今回受賞した取り組みの背景・詳細・結果について語ってもらった。
テレビCMでは届かない若年層へのリーチにSpotify広告を活用
━━取り組みの背景を教えてください。
テレビCMなどの他メディアでは届きにくい層、特に若年層へのアプローチを目的に、Spotify広告を活用しました。サラウンドコマーシャルという新たな手法に挑戦し、ブランド好意度の向上を目指しました。
真剣に何かに挑戦する人を応援し続けるポカリスエットとして、高校生の汗にはポカリスエットを、オフィスシーンではポカリスエット イオンウォーターを訴求しています。
立体的な音響体験でブランドメッセージを深く届ける
━━今回受賞した取り組みの内容を教えてください。
「サラウンドコマーシャル」という没入型の音声広告にチャレンジしました。
まるで部活の円陣の中に入っているかのような臨場感を体験できる内容で、聞く人の気持ちを鼓舞する構成としました。利用者の約8割がイヤホンやヘッドホンを使用しているSpotifyだからこそ実現できた、360度から声が聞こえるような立体的な音響体験を通じて、ブランドの世界観とメッセージをより深く届けることを目指しました。
立体感がもっとも出る音声を試行錯誤で実現
━━今回受賞した取り組みを成功に導くために工夫した点はありますか。
事前収録を行い、演者の人数や立ち位置、声の方向などを何度も試行錯誤しながら、より高い没入感を追求しました。声の違いを際立たせるためにキャストを入れ替え、セリフも再検討。声の距離感や強弱を細かくコントロールし、最適なバランスになるよう調整を重ねました。
その結果、360度あらゆる方向から声が聞こえ、まるで円陣の真ん中にいるような立体的なサウンド体験を実現しました。
60秒の完全聴取率は90%以上を記録
━━得られた成果を教えてください。
60秒の完全聴取率は92.1%と、長尺にもかかわらず多くの方に最後まで体験を楽しんでいただくことができました。また、メインターゲットである高校生(15〜17歳)のCTRは平均値の約2倍という高い成果を記録しました。
没入感の高い音声体験が、ターゲット層への強い訴求につながりました。
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サントリー事例:モーメントを捉え、ブランドイメージ醸成と認知拡大に成功
特定のモーメントを捉え、クリエイティブなアプローチでユーザーとエンゲージしたキャンペーンを表彰するSeized the Moment。同部門に輝いたのは、サントリーの金麦が実施した「家路言」だ。帰宅時間というモーメントを捉え、金麦ブランドの「癒し」のイメージを音で表現したことが、高い評価につながり受賞にいたった。
同作品の企画・制作に携わったサントリーと電通の担当者が、取り組みの背景、詳細、結果を語った。
帰宅時間に好かれる広告を音声で実現する
━━取り組みの背景を教えてください。
サントリー担当者:金麦がターゲットとするビールのメイン飲用者である生活者全体、特に若年層において広告に対する忌避行動が顕著化してきています。ただの広告では簡単にスキップされ、ユーザーが自ら取捨選択できる環境下において求められるのは、「好かれる広告」「広告忌避を乗り越えるアイデア」です。
そして金麦では、定点調査で帰宅時間に音楽や作業用 BGM などの音楽系のコンテンツに触れるユーザーが非常に多いことから、帰宅時間でのコミュニケーションを重視しています。この帰宅時間というモーメントにおいて好かれる広告を考えたときに、癒しやリラックスの伝達には音声を起点としたコミュニケーションに光明があると思い、あえて耳からのブランド接点を中心としたクリエイティブを設計いたしました。
ターゲットを象徴するリアルなキャラクターを設定
━━今回受賞した取り組みの内容を教えてください。
林田:金麦が狙うべき戦略ターゲットは幅広い年代に分布しています。そのため、幅広い年代のターゲット層が共感して受け入れることができる「仕事などのON時間からOFF時間に変化していく帰宅時間」に絞って配信を設計しました。
またその中でも、おうち時間にビールを飲用するターゲットを象徴とする「40代の男性中間管理職」「30代の女性社会人」「30代のドラッグストアの店長」という3つのキャラクターを生み出しました。
生み出したキャラクターを中心に生活者視点の音声広告を制作し、Spotifyなどの動画/音声メディアで配信いたしました。
多くの共感が生まれるシーンを再現し、日常に溶け込む演出にも注力
━━今回受賞した取り組みを成功に導くために工夫した点はありますか。
三浦:一日の終わりに、家に向かう帰り道。今日に思いを馳せたり、帰ったら何しようかと考えたり、気持ちもオンからオフへと向かう帰宅者の気分に寄り添うクリエイティブを意識しました。
クリエイティブの中では、電車・バス・車といったさまざまな帰宅シーンを描くことで、多くの人が共感できる“家路”の情景を演出しました。さらに、「蛍の光」のチルバージョンを制作し、音楽的にも心をほどくような余韻を残す仕掛けを加えました。
また、音声ならではの没入感を高めるために重要だったのが、主人公のリアルな声を反映した字コンテの採用と、単語のひとつひとつに“等身大”の感情を込めた脚本の制作です。これにより、日常にすっと溶け込む没入感のある音声体験を実現しました。加えて、ネットで話題を呼ぶ有名声優を起用し、キャスティングの妙による拡散・話題化も狙いました。
癒し/リラックスのイメージを醸成し、ターゲットの認知を獲得
━━得られた成果を教えてください。
林田:大きく2つの成果を上げることができました。1つ目は、癒し/リラックスのイメージリフトの達成です。第3者機関の調査において、各クリエイティブ接触者におけるブランドイメージを調査したところ、過去施策の中でもトップの数値で、視聴前後のブランドイメージを大幅に向上させることに成功しました。
2つ目は、広告認知率を高い水準で目標をクリアしたことです。特に 20~40 代のユーザーの広告認知が目標対比で150%も向上し、当初の狙いであった広告忌避層の認知獲得に寄与しました。
最後に、広告賞『Spotify Hits』は、2026年も開催される。今年はどんな作品が生まれるのか——その期待はすでに高まっている。
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