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マーケティング組織を立ち上げて最初の6ヵ月でやること

レベニュー組織を「定数」で捉えるから成果が出ない? 丸井氏に聞く、拡大に必要な「GTM戦略」の本質

マーケ組織立ち上げ6ヵ月でやるべきは「パイプライン」の共通認識化

松本:これまで、GTMの重要性と必要性について伺ってきました。では、これから半年かけてマーケティング組織を立ち上げるとしたら、丸井さんはまず何から着手すべきだと思われますか?

丸井:BtoBにおいて、マーケティングチーム単体でできることはほとんどありません。セールスやCSといったステークホルダーと連携し、「GTM戦略をどうするか」を話し合う場を設け、合意を形成することが不可欠です。

 マーケティングが独自の路線を進んでも、成功する可能性は皆無です。私が昨日実施したワークショップでも、セールスとマーケティングがまったく異なる価値をお客様に提示していたケースがありました。こうした不整合は珍しいことではありません。

 まず、全員で「共通のゴール」を持つことが不可欠です。そして、共通のゴールポイントとして「パイプライン」を中心とした議論は有効です。案件が足りなければ誰が補充するのか、コンバージョン率を上げるにはどんなイネーブルメントとテクノロジーが必要か。営業・マーケティング・CSが一体となって問いを立て、役割分担とKPIを明確にすることで、組織の一体感は醸成されていくでしょう。

セールス1人がフルサイクルを担う「with AI」の世界観

松本:生成AIの活用についてもお聞きします。これまでセールス担当者が「面倒だ」と感じていたタスクが自動化され、マーケティングとセールスの分断が解消されやすい環境が生まれつつあるように見えます。一方で、マーケティングの一部もAIによって自動化され、セールス1人で完結するような未来も想像できます。

丸井:大規模なエンタープライズセールスでは適さないとされていますが、ACV(年間契約額)が数百万円程度のミッドマーケットやSMB(中小企業)をターゲットとする製品では、AIを活用して一人の担当者が新規顧客獲得から商談、受注、さらにはアップセル・クロスセルまでを担うケースが増えています。このようなフルセールスサイクルを1人が担う「with AI」の世界観は現実的になってきています

 生産性の向上はもちろん、顧客の安心感やアップセル・クロスセル金額の増加にもつながっています。商品やサービスを知ったきっかけや、受注に至るまでのプロセスなどを詳細に把握している人が契約後もフォローしてくれた方が、顧客も安心しますよね。結果的にフルセールスサイクルでの取り組みが高いパフォーマンスを出しているケースもあるようです。

AI時代を牽引するオーケストレーター「GTMエンジニア」

松本:これから、ますますエンジニアリングスキルは重宝されますね。そう言えば、著書の終盤で紹介されていた「GTMエンジニア」ですが、2026年3月頃からX(旧Twitter)でもセールス、マーケティング、プロダクト、コーディングまですべてをこなす「超ハイパーフルスタックエンジニア」という文脈で注目されていました。改めてGTMエンジニアとはどのような存在なのでしょうか。

丸井:これまでのGTM戦略では、ICPを固定し、それに基づいてモーション、プロセス、テクノロジーを設計することが前提でした。つまり「静的なICP」です。しかし今、テクノロジーの進化により「動的なICP」へと変化しています。

 たとえば、企業のニュースリリースやインテントデータといった日々変化するデータに合わせてICPをリアルタイムで更新し、それに即座に反応するGTMモーションを構築します。顧客のアクションに対して、AI SDR(セールス開発担当者)が自動的に接触する仕組みを想像してください。

 CRMであれば、常にフレッシュなデータが更新される状態が求められます。さらに、MA(マーケティングオートメーション)、SFA(セールスフォースオートメーション)といったテクノロジーも、動的なICPの変化に合わせて柔軟に適応させる必要があります。

 ICPの変化に合わせてテクノロジーを瞬時に切り替え、対応するモーションを自動的に活動させるコンポーザブルな仕組み全体を設計できるだけでなく、自身でAIを活用してコーディングし、インサイドセールス活動の自動化などをクイックに実現してしまうスーパーワーカー、それがGTMエンジニアに期待される姿です。

松本:この先、生成AIを活用した自動化がさらに進むわけですね。

丸井:ICP策定の自動化は、かなり進んでいます。アカウントリストがリアルタイムで入れ替わる機能も部分的には実現されています。米国で2025年に発表されたマーケティングのテクノロジー構成(テクノロジースタック)を見ると、以前の「有機的に複雑に絡み合った状態」から、「1つのAI搭載統合データベースを中心に、無数のアプリケーションがオン・オフに切り替わるシンプルな形」、つまりコンポーザビリティの高い仕組みへと転換してきています。

 ICPが大きく変化した際に、使わないアプリケーションを切り離し、新しいものを接続し、AIが新たなICPを学習してモーションを自律的に更新していく。そうした世界が着実に近づいています。

松本:そうした世界が近づくほど、マーケターやエンジニアといった従来の職種のラベルが意味をなさなくなるような気がします。

丸井:AIを効率的に駆使してマーケティング組織を構築しているCMOが「これまでSEOの専門家やメールマーケティングの専門家といった特定のスキルに深化した職業は、不要かアウトソーシングの対象となる」と述べています。

 代わりに求められているのは、複数のチャネルやモーションを俯瞰し、組み合わせと相互作用を最適化できる「オーケストレーター型の管理者」です。GTM全体を指揮できる人材の育成が、今後ますます重要視されるようになっていくでしょう。

松本:よくわかりました。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

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この記事の著者

松本 健太郎(マツモト ケンタロウ)

株式会社EVERRISE 執行役員CMO
龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で統計学・データサイエンスを“学び直し”。デジタルマーケティングや消費者インサイトの分析業務を中心に、さまざまな分析を担当する。noteで活躍しているオピニオンリーダーの知見をシェアする「日経COMEMO」メン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/05/11 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50330

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