メディアベースのマーケティングの非効率化、大手企業も気づき始めたUGCの重要性
MarkeZine:この連載では、花王ヘアケア事業部での事例をもとに「UGC×PGCマーケティング」の在り方や、その効果実績を紹介してきました。改めて、ウィングリットが考えるUGCの必要性についてお聞かせください。
川上:インターネットの発展、SNSの浸透、動画配信サービスを含む多様なメディアの登場などにより、「情報発信の民主化」が進んでいるのは皆さんご認識の通りです。インターネットやSNSにおける選択可能情報量においては99%以上がUGCとも言われており、4マスメディアや企業が公式に発信した情報(PGC)も、UGC投稿の波にすぐ飲み込まれてしまいます。
また、2025年の総務省の調査では、平日と休日ともに、インターネット・SNSでの接触時間がついにテレビの接触時間を超えました。必然的に、生活者はPGCよりUGCに触れる機会のほうが圧倒的に多く、信頼できる情報ソースも「企業」から「自分に近い無数の生活者」へ分散している状況です。現時点で既にこの状況なので、時間の経過とともに、この傾向は様々なカテゴリーにおいてより顕著になるのではないでしょうか。
こうした状況を受け、一部のカテゴリーでは、大手企業も「メディアベース」のプランニングの限界に気づき始めています。かつてはテレビや新聞など、いわゆる4マスメディアを中心としたPGCでどれだけリーチできるかがマーケティングの肝でした。しかし、4マスメディアの接触時間の低下やメディアそのものの増加により、既に媒体単位でのプランニングは非効率になってきています。そんな中、UGCは現代のマーケティングにおいて加速度的に重要度が増している存在と言えるでしょう。
PGCとUGC、コンテンツやクリエイティブベースでの思考法
MarkeZine:「メディア」や「SNS」といった分け方ではなく、「PGC/UGC」でマーケティングコンテンツを大別するのが、ウィングリットの考え方の特徴ですよね。
川上:そうですね。それぞれ簡単に説明すると、テレビCMやWebサイト、キービジュアルといった企業が完全にコントロールして制作する情報・コンテンツ・クリエイティブを「PGC」。インフルエンサーとのタイアップ投稿や、一般生活者のSNS・口コミサイトへの投稿、またデジタルでは捉えきれない個人間やオフラインでの口コミなど、生活者視点で発信される情報・コンテンツ・クリエイティブを「UGC」と定義しています。
UGCはPGCに付属するようなものではなく、対になって影響し合いながら、共存していくものです。どちらか片方ではなく、両輪で考える必要があります。UGCは企業がコントロールできるわけではないものの、個人から発されるメッセージの内容を把握し、適切にケアしていくことは、現代のマーケティングにおいて非常に大切です。

MarkeZine:なるほど。ちなみに、企業はすべからくUGC施策に注力すべきなのでしょうか?
川上:全カテゴリーでUGCが必須というわけではありません。たとえば、ティッシュやトイレットペーパーのような日用消費財であれば、そこまでUGCが意思決定を左右しない可能性が高いです。
一方で、購買のために知識や情報を集め、慎重に取捨選択していく商材ではUGCの影響が強くなります。たとえば、美容や家電、ガジェット、旅行といった「失敗したくない」「満足のいく体験がしたい」という心理が働くカテゴリーが挙げられます。
どこから着火させればいい?UGC戦略設計のための3つの思考ポイント
MarkeZine:具体的に、UGC戦略にはどのようなポイントがあるでしょうか?
川上:カテゴリーや企業ごとにアプローチは異なりますが、戦略的にUGCを活用するためには次の3つのポイントを整理・意識して取り組むことが重要です。
【ポイント1】ファネルに応じたPGCとUGCの役割分担
川上:まず、ファネルに応じてPGCとUGCは効果を発揮しやすい部分が異なるため、それぞれで役割を分担させることが必要です。主に、PGCは(好感)認知形成やブランドイメージ形成などトップファネルへのアプローチに効果的で、UGCは興味喚起や特徴理解促進などミドルファネルへのアプローチに効果的です。加えて、UGCは第三者の発信による評判形成や信頼性の向上、広告配信以上の露出の獲得など、様々な要素への効果も期待できます。
また、UGC施策に絞っても、ターゲットの状態やフェーズに応じた施策レベルでの役割分担も欠かせません。意外と見落とされがちですが、SNSアカウントを持たない層や非アクティブな層に、いくら情報を届けたり商品を配布したりしても、ブランドに関するポジティブな発話(UGC)には繋がりません。

そのため、UGC施策においても「まずは認知を広げるフェーズ」なのか、「ある程度の熱量を持つ層に発信を促すフェーズ」なのかなどを見極める必要があります。「商品を知っているか」「使用・体験したことがあるか」「発信意欲があるか」といったユーザーの状況に応じて、アプローチを分けることが重要です。ここを押さえた上で、ファネル全体の中でどのクリエイティブや施策が・どの役割を担うかを整理し、立体的かつ連続的にコミュニケーション全体を設計していきます。
【ポイント2】インサイトの分析・抽出:企業の「言いたいこと」を「生活者に響く、発信しやすい文脈」へ
川上:次に、インフルエンサーとのタイアップしかり、UGCの創出しかり、UGCを効率的に活用するためには「どのような文脈がターゲットに響きやすいのか」「発話につながりやすいのか」を見定めることが大切です。
多くの場合、費用や時間をかけて調査や議論を行い、ブランドとしてのメッセージやキーワードを設計します。ただし、それは良くも悪くも「企業文脈・ブランド文脈」に則ったものであり、それが実際に生活者の心に響くか、SNS上で自発的に発話・受容されやすい文脈であるかは別です。
その文脈を捉えるために、タイアップや口コミなどSNS上での発信を前提とした生活者のインサイトを分析・抽出していきます。そうしたリサーチで「誰かに語りたくなる文脈」「自ら発信しても良いと思える文脈」を捉えることが、より効率的にUGCを活用することにつながるでしょう。
【ポイント3】複数文脈接触:「勝ちパターン」の検証と創出によるアジャイル的フィードバックサイクルの形成
川上:費用と時間をかけて制作したPGCのメッセージやキーワードを変更するのは容易ではありません。さらに言うと、その作り込んだメッセージが生活者に響きづらかった場合、マーケティング施策としては非常に効率の悪い結果になってしまいます。

そこで、UGCを「リスクヘッジ」および「効果検証素材」として活用します。ここでのポイントは「複数の文脈のUGCコンテンツを同時に展開する」ことです。これにより、どの文脈が最もユーザーに響きやすいのか、発話につながりやすいのかを分析するわけです。
この複数文脈接触から「勝ちパターン」を見出したら、その結果をUGCだけでなくPGCにも反映し、UGC×PGCのクリエイティブをセットで改善していきます。マーケティング全体のパフォーマンスを上げていくためには、このアジャイル的なフィードバックサイクルを形成することが重要です。
ウィングリットが一般的な「SNSマーケ会社」や「インフルエンサーマーケ会社」と一線を画す理由
MarkeZine:ここまでウィングリットならではのUGC戦略について詳しく伺ってきましたが、実際に企業のマーケティング活動を支援する際、どのような立ち位置で参画されるのでしょうか?
川上:ウィングリットはUGCに特化した戦略系マーケティングエージェンシーとして、独自のポジショニングを確立しています。私たちが大切にしているのは、UGC×PGCの掛け合わせによるマーケティングコミュニケーションの効率化であり、事業インパクトの最大化です。「PGCの専門家」である大手広告代理店が主戦場とするマス広告の領域と対立・競合するのではなく、同じテーブルに「UGCの専門家」として並び、“スクラム”を組んでPDCAサイクルを加速させています。
当社はUGCのことであれば、戦略・設計といった上流から、施策実行・分析の下流まで、すべての領域を一気通貫で支援可能です。
MarkeZine:一般的な、いわゆる「SNSマーケティング会社」や「インフルエンサーマーケティング会社」との違いがあれば教えてください。
川上:主に2つ挙げられます。1つ目は、「マーケティング領域における中長期的な価値提供」を考慮した、完全自己資本による経営体制です。
多額の資金調達により社外に株主を持つ企業は、往々にして短期間での組織拡大や売上成長を求められるケースが多いでしょう。健全な成長や拡大はまったく問題ないのですが、過剰な売上拡大に重きを置いてしまうことで、クライアントからすると提案から実際の進行において期待値の乖離が発生してしまうケースもありえます。そして、それが現場への過度なプレッシャーや疲労につながることもあるのではないでしょうか。

現状当社は自己資本比率100%の会社であり、上場やM&Aを想定していません。それもあり、過度な売上目標による現場への必要以上のプレッシャーはありませんし、組織も理想とするレベル感を保ちながら、中長期的に形成しています。
また、クライアントへの提供価値向上にリソースをしっかり確保・投下するのはもちろん、同業界の中でも比較的高い給与を用意するなど、社員への還元意識も高く持てていると自負しています。決して派手な特徴ではないものの、こうした会社のスタンスが安定的なサービス提供の土台になっていると感じます。
2つ目は、統合コミュニケーションを理解した上で、戦略から実行まで、UGC領域をフルファネルで対応可能な組織であるという点です。SNSマーケティング会社は、SNSアカウント運用を主体としていたり、インフルエンサーマーケティング会社はインフルエンサーのキャスティングを主体としていたりと、それぞれの領域のスペシャリストとして事業を行っています。
私自身、元々上場したSNSマーケティング支援会社の共同創業者の1人であるからこそわかる部分もあるのですが、特定手法のスペシャリストであるがゆえに、PGCも含めたマーケティングコミュニケーション全体の設計から携わる機会は少ないという実態があります。そのような中、現在当社にはオンライン・オフライン問わず、統合コミュニケーションに従事してきたマーケティング業界歴10年以上のメンバーが揃っています。コミュニケーションの全体像を理解した上で、多様な業種業界に応じて、UGC領域における最適な戦略をフルファネルで設計し、実行・分析・改善まで対応できる人材と組織体制を実現できている――ここにウィングリットの独自性と優位性があると感じます。
UGCはPGCと双璧をなすマーケティングのコアへ
MarkeZine:プロフェッショナル集団であるウィングリットには、具体的にどのようなバックグラウンドを持つ人材が集まっているのでしょう?
川上:当社には大きく分けて、「ビジネスプロデューサー」と「コミュニケーションプランナー」という2つの職種が存在します。ビジネスプロデューサーは広告代理店やPR会社、SNSマーケティング会社出身の経験者を中心に構成されています。また、コミュニケーションプランナーは前述のメンバーに加え、SNSコンテンツや様々なトレンド情報に興味関心が高いという前提の上で、アパレル販売員やウェディングプランナー、人材サービスや出版社など、「人とのコミュニケーションが好き・得意とする人材」を、特定の業種にこだわらず未経験でも採用しています。
MarkeZine:読者の中には、経験が活かせるビジネスプロデューサーの仕事に興味をもつマーケターもいるかもしれません。ビジネスプロデューサー職において、どのような人材を必要としていますか?
川上:広告代理店やPR会社、制作会社、SNSマーケティング会社でクライアント対応をされていた方などは相性が良いと思います。また、UGC領域でのフルファネルマーケティングへの興味はもちろん、「ピープルベース」のマーケティングの可能性を感じている方には、非常に良い環境ではないかと感じます。ウィングリットなら、昨今需要の高まるUGC領域の専門性を磨き、新たなチャレンジにつなげる機会を提供できると思います。
MarkeZine:最後に今後の展望をお聞かせください。
川上:UGC領域における戦略的なマーケティングエージェンシーとして、これからも企業のマーケティング課題をUGCという観点から支援させていただきます。
私たちが掲げている言葉に「UGC Driven.」というものがあります。前半の話につながりますが、今後UGCの重要性はさらに増していくと考えています。ただし、PGCとUGCはどちらも大切であり、それぞれマーケティング上において異なる役割を担います。
まだまだペイドやオウンドというメディアベースの発想が主流の中で、UGC領域において戦略的かつフルファネルで対応できるマーケティングエージェンシーとして、様々な企業のみなさまへの価値提供に努めていきたいです。
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