なぜ「アルゴリズム時代のブランド創造」を語るのか?
「企業がブランドをコントロールしていた時代から、生活者との共創の時代へ。そして今、アルゴリズムの時代に変化しました。『マーケティング』という言葉は変わらないのに、やっていることはまるで違います」
日本マーケティング学会副会長の深澤 勝義氏は、40年以上にわたるマーケティングの実務経験を振り返りながら、時代の変化を語った。
かつてはテレビCMのGRPと認知率、トライアル率、リピート率を計算すれば売上が予測できた。それがブランドエクイティの時代を経て、SNSにおける共創の時代へと移り、プラットフォームのアルゴリズムが何を「おすすめ」するかを決める時代となった。
「時代は変われど、“ブランド作り”の本質は人間を理解して、感情や関係性を作ることだとは思ってます。でも、本当にそうなのでしょうか。今、ブランドはどう戦えばいいのでしょうか」と深澤氏は疑問を呈する。
この問いに向き合うため、学会はあえて異なる世界から2人のゲストを招いた。アルゴリズムの最前線でショート動画を作り続ける実務家・明石ガクト氏と、消費者とブランドの関係性を研究し、『リキッド消費とは何か』(新潮社)の著者でもある久保田進彦氏だ。両者は当日が初対面。台本なしの対話から、何が見えてくるのか。
明石ガクト氏が見る「中心なき時代」
「今や、ルイ・ヴィトンのようなハイブランドですら、ショート動画を作る時代なんです」
明石氏はこう切り出した。明石氏が2014年にワンメディアを創業した当時、YouTubeは「CM置き場」と揶揄されていた。それが今や、YouTubeショートの1日あたり再生回数は700億回を超え、2024年から2025年にかけて286%伸長した。
今日に至るまでに、ブランドと消費者の出会い方は3つの時代を経て変化してきたと、明石氏は整理する。
2000年代は「検索の時代」だった。GoogleやYahoo!が顕在化したニーズを刈り取り、楽天やYahoo!ショッピングを通じたネット通販ブランドが台頭した。2010年代は「SNSの時代」。フォローという関係性をベースに、YouTuberやインスタグラマーが影響力を持ち、D2Cブランドが次々と生まれた。
そして2020年代、時代は「アルゴリズムの時代」に突入した。TikTokが生み出したレコメンドエンジンは、フォローしていない人の動画もタイムラインに表示する。この「おすすめ」がすべてを決める現在の状況を、明石氏は「中心のないドーナツのような構造」と表現する。
「雑誌の表紙やテレビCMのような一等地は存在しません。アルゴリズムが個々人に最適化されたタイムラインを作る中で、ショート動画を作らなければ消費者とブランドは出会えない可能性すらあります」(明石氏)
特定の「中心」がない中で、いかにしてブランドの蓄積を生むかが、実務上の最大の懸念となっている。続けて久保田氏は、この変化を消費者心理の側面から読み解いた。キーワードは「リキッド消費」と「嗜好のアルゴリズム化」だ。
3月4日(水)の「MarkeZine Day 2026 Spring」に、久保田進彦氏が登壇! 詳しくは、イベントページをご確認ください。

