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アサヒビールはなぜ「お客様中心」をやり切れるのか?N=1を戦略に変える「消費者インサイト部」の進化

お酒を飲まない・飲めない消費者5,000万人の解像度を上げた「13のセグメント分類」

米田:では、消費者インサイト部のもう1つの重要な業務である「お客様理解」について、塚田さんが手をかけられた新たな切り口の活動をご紹介いただけますか。

塚田:はい、「インサイトにつながる消費者の行動分析」というテーマで、取り組んでいる2つの研究をご紹介したいと思います。

 皆さんご存知だと嬉しいのですが、アサヒビールでは「飲む人も飲まない人も、みんなが楽しめる自由な飲み方」というコンセプトで「スマドリ(スマートドリンキング)」という活動を推進しています。想像に難くないと思いますが、アサヒビールにはお酒が大好きな社員が多く、当初はスマドリの活動をどこか他人事のように捉える向きもありました。

 しかし、私自身アサヒビールに所属していながら実はお酒が大変弱く、それをコンプレックスに感じて、誰にも言えずに過ごしてきました。ですので、松山が社内でスマドリの戦略を発表したとき「これは絶対にやるべきだ。私はこの考え方にとても共感するし、これを絶対に全社戦略にするんだ!」と思ったんですね。

 先ほど「すべての起点はN=1である」という話がありました。現場では「社員の家族でも友達でも、誰でもいいから、商品・コンセプトにとても共感する人を連れてこい」というのが合言葉になっているのですが、スマドリについては、まさに私がN=1だったわけです。

アサヒビール株式会社 マーケティング本部 消費者インサイト担当副部長 塚田 純子氏
アサヒビール株式会社 マーケティング本部 消費者インサイト担当副部長 塚田 純子氏

 そこから生まれたのが「13のセグメント分類」で、これはお酒をよく飲む方からあまり飲まない方まで、お酒に対する「行動」と「意識」を組み合わせて分類した新しいセグメントです。これまで「よく飲む2,000万人」の研究はし尽くされてきましたが、置き去りにされていた「飲まない・飲めない5,000万人」の解像度がこの分析で一気に上がったと感じています。

 ちなみに、一般的なパネルでは「よく飲む人」は20%強なのに対し、アサヒの社員だとこれが70%になる……ということで(笑)、アサヒビールの社員にはお酒好きの人が“とても”多い、ということも改めてわかりました。そして、この「13のセグメント分類」を活用して生まれた商品が、夜専用炭酸水の『タグソバ―』です。

米田:この商品は「ノンアル」とは謳わず「夜専用炭酸水」としているのが肝なんですよね。アルコールが苦手な方は「ノンアル」という言葉にも抵抗を感じてしまう……という顧客理解が反映されています。

ウィルキンソン タンサン タグソバ― 「夜を語るー味の秘密ー」篇

若者のアルコール離れは本当か?点ではなく「ジャーニー」で深める顧客理解

塚田:もう一つ、「お客様のお酒に対する意識がどう形成されたのか」を深掘りし科学的にする「アルコールジャーニー」という研究も行っています。

 この研究の一番大きな成果は「若者のアルコール離れ」に対する解像度を上げられたこと。「最近の若者はお酒をあまり飲まない」と、ともすると社会現象のように捉えていたのですが、しっかり分析していくと、実は95%の人が若い頃に一度お酒にエントリーされていることがわかりました。

 お酒を体験した上で、何かしらの「ネガティブなトラウマ体験」があり、お酒を飲まなくなってしまう方が48%もいることがデータで立証できたのです。エントリー時に我々がお客様を楽しませることができていれば、この「飲まなくなる48%の人」は生まれなかったかもしれません。我々が大事にしなければいけないモーメントが新たに発見できた研究結果でした。

米田:実在しているお客様を「点」で理解するだけでなく、その方の歴史を遡り「ジャーニー」まで見ることで、N=1の理解が一気に進みましたよね。ちなみに、13のセグメント分類は「勝手に自由研究」として行ったということでしたが、勝手に自由研究とは何なのでしょう?

江尻:消費者インサイト部のメンバーには、定常業務以外のところで、自分が関心のあるテーマの研究に取り組んでもらっているんですよ。13のセグメント分類のように面白い内容が出てきたら、実際にビジネスとして活動の中に落とし込んでいます。

 消費者インサイト部は、会社全体のお客様中心マーケティングを推進していくエンジンです。やはり「やりたい・知りたい」と思う個人の熱量が、何よりも強力なエンジンになるだろうと思っています。

米田:最後にお2人から今後の展望をお話しいただけますか。

江尻:これまで蓄積してきた様々なデータを連携させ、商品開発プロセスだけでなく、その後の「どう売るか」という段階も含めて多様な視点で物事を考えていくための基盤を作っていきたいと考えています。そうして、消費者インサイト部の役割をさらに広げていきたいですね。

塚田:私は元々営業出身ということもあり、お客様や小売様と日々接している社内の営業担当者にもインサイトを活用してもらえたら、という思いを持っています。あとは、さらに深い自由研究ができるような消費者インサイト部にしていけたら嬉しいです。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2026/04/16 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50555

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