住信SBIネット銀行が実施した若年層向けのプロモーション
MarkeZine(MZ):今回は、住信SBIネット銀行がBeRealで実施した「デビットカード Point+(Mastercard)」のプロモーションについてお話をうかがいます。まず、この「デビットカードPoint+(Mastercard)」とはどのようなサービスなのかご紹介いただけますか。
紺野:銀行にとって「お金を預かること」と「支払うこと」は、本来セットとなる重要な機能です。お金の支払い方が多様化する中、口座直結の決済手段の推進は銀行業として必須だと考え、Mastercardさんと連携し「デビットカードPoint+(Mastercard)」をリリースしました。
デビットカードPoint+(Mastercard)は、基本のポイント還元率が通常のデビットカードよりも高く、さらに月末の口座残高に応じて上乗せポイントも付与されるお得なサービスです。デジタル券面だけでなく、実際に手に取れるリアルなカードも発行しているので、ネット通販はもちろん、店舗でも利用できる使い勝手の良さが評価されています。
MZ:主なターゲット層を教えてください。
紺野:基本的には「自分のお金をしっかり管理しながら使いたい」と考えているすべての方が対象ですが、今回のプロモーションでは若年層をターゲットに広告を展開しました。
お金の支払い方には、プリペイドなどの「先払い」、クレジットカードなどの「後払い」のほか、デビットカードなど「今手持ちのお金で払う」という3つの方法があります。この中で、昨今改めて注目されているのがデビットカードです。
ただ、既にクレジット決済に慣れている方においては、口座を新しく作ったり、デビットカードを申請したりと、どうしても手間がかかってしまいます。そこで、まずは特定の支払い方法に抵抗がなく、初めて銀行口座を開く若い世代にアプローチしていくほうが理にかなっていると考えました。
なぜBeReal?“学生の青春”が詰まったクローズドなプラットフォームの魅力
MZ:多数の媒体がある中で、BeRealならではの価値をどのように捉え、プロモーションの実施を決められたのでしょうか?
紺野:一般的にSNSはアルゴリズムによってコンテンツが運ばれますが、BeRealはクローズドかつ親密なつながりの中にあるメディアです。さらに、ユーザーの大多数が学生ということで、属性が非常に濃い。言ってみれば、限られた学生期間を目いっぱい楽しんでいる「若者のアオハル(青春)」にダイレクトに触れられる、貴重なプラットフォームと言えるでしょう。
デジタルネイティブな銀行として、これまでも各プラットフォームでダイレクトマーケティングは積極的に行ってきました。しかし、それらはあくまで「機能訴求」や「新規獲得」が中心です。対して、BeRealで挑戦したかったのは、より手前にある「潜在的なニーズはあるが自分ごと化できていない層」への種まきでした。
MZ:「デビットカードという支払方法」の啓蒙が大きな目的としてあったのですね。
紺野:はい。実際にリサーチをしてみると、若年層は「デビットカード」という言葉こそ知らなくても、実際にはそれに類する決済手段を求めていることがわかりました。青春という限られた時間のタッチポイントにおいて、広告としてではなく、日常のモーメントやコンテキストにサービスを溶け込ませる。アルゴリズムに支配されていないBeRealだからこそ、この「入り口作り」に挑戦する価値があると考えたのです。
プロモーションの全体設計:瞬間的な認知拡大を持続させるポイント
MZ:では、BeRealで展開したプロモーション施策について教えてください。
仲村:2025年12月のクリスマスシーズンに合わせて約3週間、広告を配信しました。具体的には「バランスリーチ」と「MAXテイクオーバー」という2つの広告プロダクトで設計しています。
バランスリーチは、数日間を通してキャンペーンを展開できる広告商材です。数日かけてフリークエンシーを重ね、ブランド認知や利用意向を高めていくもので、KPIに合わせてCPM保証かCPC保証かを選択できます。
もう1つのMAXテイクオーバーは、BeRealのメインフィードの広告枠を24時間ジャックできるメニューです。瞬間的にユーザーとの接触頻度を上げ、広告認知や利用意向を加速させることを得意としています。イベント開催やCMスタートのタイミングなどで利用していただくことが多いですね。

この2つを組み合わせると「MAXテイクオーバーで瞬間的に強く上がった認知を、バランスリーチでキープする」といった設計が可能になります。今回はいずれも地域や性別の区別なく16歳以上のユーザーを対象に、CTRが高いクリエイティブに予算を最適化して配信しました。
青春の1ページを応援する!成果に繋がるクリエイティブのポイント
MZ:プロモーションの成果はどうでしたか?
仲村:ブランドリフト調査の結果を見ると、MAXテイクオーバーの配信で平均より3倍ほど高いブランドリフト値が出た後、さらにバランスリーチでフリークエンシーをキープしたことで、「住信SBIネット銀行のデビットカード Point+(Mastercard)」をしっかりユーザーの記憶に残すことができていました。MAXテイクオーバー×バランスリーチという組み合わせの有用性が、改めてわかる結果となりました。
紺野:今回は「当行やデビットカードをまだ知らない層」が対象だったため、数値が跳ね上がりやすかったという前提はありましたが、よい成果が出たと思っています。しかし、真の成果は数値そのものではなく、別のところにあります。
理想は広告から新規利用まで繋げられるとよいのですが、デビットカードの利用には「銀行口座を開設する」という高いハードルが伴います。そこで今回は「未来の顧客候補が、こうしたアプローチに対してどの程度反応するのか」という指標(ものさし)を作ることに主眼を置いていました。
MZ:これから若年層向けに施策を展開していく上での指針作りも、目的として置かれていたんですね。
紺野:ええ。若年層がデビットカードの利用を意識するのは、留学や海外旅行、あるいは修学旅行といったタイミングです。そうした人生の局面で、数ある選択肢の中から「住信SBIネット銀行のポイントプラス」を想起してもらえるか――今回のクリスマス時期のBeRealでのチャレンジは、その流れを作るための一歩になったと感じています。
MZ:なるほど。成功の要因は何だったのでしょうか?
笹川:やはり、クリエイティブがポイントだったと思います。BeRealのトンマナをご理解いただき、親和性の高いクリエイティブで訴求を行うことができました。
BeRealは「ユーザーの日常を上げる」プラットフォームです。また、ユーザーの87%がZ世代であり、彼らは「いかにもな広告」を忌避する傾向があります。そんなBeRealで広告を展開する際のポイントは、「物を売る」というスタンスを捨て、学生たちの「青春の1ページを応援する」といった姿勢を持つこと。商品の機能を前面に押し出すのではなく、彼らが直面している悩みや日常のモーメントに寄り添うことが不可欠です。
今回のプロモーションでは、クリスマスマーケットという「若者が集まる日常の楽しい風景」の中に決済シーンを溶け込ませました。実際にユーザーへのインタビューでも「横浜赤レンガの広告は覚えている」という声があがっており、クリスマスの楽しそうなワンシーンとして広告が記憶されたのだと思います。
「BeRealはよくわからない…」というマーケターへのアドバイス
MZ:BeRealはビジネスパーソンには馴染みが薄い面もあります。活用に踏み切る際、ハードルはなかったのでしょうか?
紺野:そうですね。私自身、マーケターとして流行初期にアカウントを作りましたが、当事者としてBeRealを利用することはなかなかありませんでした。ですが、アプリを開いて見ていると、フィードに色んな広告が出てくるんですよね。それを眺めているうちに「あ、この世代はこういう文脈でコンテンツを消費しているのか」「こういう企業が出稿しているのか」と、広告主として観察することができました。馴染みはないかもしれませんが、皆さん一度アプリを開いて見てみるといいかもしれません。
また、今回のプロモーションは当行の若手メンバーの理解や、パートナーであるMastercardさんの戦略的な後押しがあったからこそ実現できたものです。わからないから避けるのではなく、「面白そうじゃないか」とチャレンジできる土壌も成功要因の一つだったと思います。
笹川:BeReal側でも、キャンペーン設計のご支援はもちろん、準備段階として「ターゲットの理解」からサポートをさせていただきます。
あまり知られていないのですが、BeRealにはアンケート機能があり、自由設問ができます。Z世代を深くリサーチできている企業は少ないですし、特に学生となるとそもそもパネル数も十分でないことが多いでしょう。BeRealユーザーの87%を占めるZ世代へアンケート調査をすることで、ターゲットの解像度が一気に高まります。リサーチを経て、「ではどのように広告を設計していくか」と考えていけるのがBeRealの強みです。
仲村:広告展開に当たっては、当社のクリエイティブ担当がモックを制作し、まずは広告展開のイメージを共有するケースが多いです。「配信時のイメージがわかない」というお悩みにもお応えできると思います。
BeRealユーザーの日常に、ブランドのコンテキストを重ねていく
MZ:紺野さんが今後のBeRealに期待しているポイントをお聞かせください。
紺野:これからの時代、AIやアルゴリズムが最適解を提示する流れが加速していくでしょうが、BeRealにはそれとは別の「人間らしいコミュニケーションができる場」としての価値を守り続けてほしいですね。
そして、ユーザーの「日常の行動」をより深く科学してほしいと期待しています。私たちも広告主として、ユーザーの行動を邪魔するのではなく、彼らが未来を生きていく過程で必要なコンテキスト(文脈)を提供していきたいと思っています。BeRealユーザーの日常と、私たちのブランドをどうすればうまく紐付けられるか――その「解」を一緒に探っていけるパートナーであり続けてほしいです。

MZ:最後にBeRealの日本事業、広告事業の展望をお聞かせください。
笹川:抽象的な表現になりますが、企業やブランドがユーザーの青春の日常に寄り添うことで、その思い出がユーザーの心に残り「愛される」ブランドになっていくような、新しい広告体験を追求していきたいと思います。
たとえば、「日焼けが気になるけれど部活動を頑張っている」というユーザーに、「頑張るために日焼け止めをプレゼントする」などのオファーがあれば、ユーザーの共感も一層高まるでしょう。それが積み重なって、ブランドに対する好意度も上がる――そういったきっかけ作りを支援していきたいです。
※本記事に掲載されているサービスや商品に関する情報は、インタビュー時点のものです

