「S:Structure(構造化)」の3ステップ

1.競合の戦略を「仕組み」として解剖する
最初のステップは、競合の強みを支えている仕組みを分解することです。デザインや広告といった見えやすい部分に目が向きがちですが、言語化すべきは強みを支えている仕組みそのものです。この分析に、AIは有効に機能します。たとえば次のように問いかけてみてください。
【AIへのプロンプト例】
業界トップのA社の強みについて、表面的なマーケティング施策ではなく、それを実現している「調達コストの圧縮」や「オペレーションの効率化」といった構造的なロジックを推測して箇条書きで洗い出してください。
AIは公開情報や多様なテキストデータをもとに、見落としやすい「仕組みの側面」を整理してくれます。競合の強みを表層的な事象としてではなく「構造」として理解することが、このステップの目的です。
2.競合の強みの裏にある制約を見つける
構造化において重要な視点は「強みの裏には、しばしば何らかの制約がある」という認識です。たとえば徹底した低価格戦略の裏には、サービス水準の簡略化という顧客側の負担が伴います。AIとの対話を通じて、こうした「競合の強みの裏にある弱点」を整理します。
【AIへのプロンプト例】
競合A社が低価格を実現するために省略していると考えられる顧客サービスは何ですか?その結果として顧客が負担している手間や不満を、具体的にシミュレーションしてください。
業界経験が長いほど、「価格が安い分、サポートが薄いはずだ」といった想定しやすい課題で分析が止まりがちです。AIは公開データや口コミ情報の傾向から、見えにくい構造的課題を整理する手助けをしてくれます。
たとえば、「競合A社は、トラブル時の対応の不明瞭さや解決までの時間が長いという弱点がある。つまり顧客は安さと引き換えに手間と時間を負担しており、結果として、特に維持したい優良顧客層が静かに他社へ移行している」――こうした構造的な課題が見えてきます。
この「強みが生み出す構造的な制約」が、競合が容易には変えられない部分であり、自社が戦略的に差別化を図れる領域の候補になります。
3.異業種の成功モデルを自社の文脈に翻訳する
競合の制約を把握した後、そこを埋めるアイデアを同業他社から探そうとすると、再び競合と同じ方向に引き寄せられます。ここでは視点を広げ、「業界の外(異業種)」に目を向けることが有効です。異業種の事例をそのまま自社に当てはめることは難しいですが、AIの「異業種を読み替える力」を活用することで、自社の顧客課題に応用できる形に整理することができます。
【AIへのプロンプト例】
私たちの顧客層が、自社の商品を選ぶのと同じくらい真剣に検討し、費用を払っている別業界の商品やサービスは何ですか?その業界のトップ企業が、価格競争や機能競争に依存せず顧客から選ばれている仕組みを、私たちの業界に応用できる形で3つ提案してください。
このプロセスを経ることで、業界内の発想では辿り着きにくい、独自の戦略の方向性が見えてきます。以前はこうした業界をまたいだ視点は、多様な業界を担当するコンサルティング会社が持つものでした。今は、AIを活用することで実務者が自ら試みることができます。
このプロセスを通して「悪い直感」から「戦略の方向性」への転換がどう起きるのか、次のケースで確認してみましょう。
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