「バランスト・スコアカード」と「戦略マップ」
「バランスト・スコアカード」の開発者であるロバート・S・キャプランとデビッド・P・ノートンは著書『戦略マップ~バランスト・スコアカードの新・戦略実行フレームワーク~』の中で「測定できないものは管理できない。記述できないものは測定できない」と述べています。そして、企業戦略の可視化を実現するためのフレームワークとして、以下のような「戦略マップ」を提案しています。
戦略マップによって可視化された戦略は、バランスト・スコアカードを用いて測定、管理されます。バランスト・スコアカードは、最終結果としての目標だけが示され、それをいかに達成するかが明示されない、形式ばかりの企業の目標設定を改めるための具体的な手段を提供するフレームワークです。
もちろん、最終的な目標も「重要目標達成指標(KGI=Key Goal Indicator、上記の戦略マップでは「長期の株主価値」にあたる部分)」として測定可能な目標として設定されます。ただし、それだけでは終わらず、その目標を達成するための戦略として、戦略マップに描かれた個々の「主要成功要因(CSF=Critical Success Factors)」と各CSFにも、それぞれ「重要業績評価指標(KPI=Key Performance Indicator)」が設定されます。
例えば、上の戦略マップでは「顧客管理のプロセス:顧客の獲得」というCSFに対しては「年間の新規顧客獲得数を前年比20%」、「組織資本:組織への方向付け」というCSFに対しては「営業の顧客訪問数を1人あたり月間30回」などという形で、KPIを設定するのです。
いかにして最終目標を達成するかを明確な形で可視化することが戦略マップの役割です。その上で、個別のCSFに対応した業務上の行動目標としてKPIを設定することで、それぞれのアクションの進捗と達成度合の測定が可能になります。こうした進捗や達成度合がそのつどフィードバックされる仕組みがあってはじめて、実行段階における戦略の管理、コントロールが可能になるのです。