SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

ビジネスマンのための必読オンラインマーケティング塾

第7回 ビジネスとWebのギャップをシックスシグマで埋める 後編


ブランドの作り方は知らないというのはいかがなものか?

 シックスシグマのフレームワークが優れている点はもうひとつあります、それは「顧客視点で見たプロセスの改善/再設計/管理」を問題解決の中心に置いているところにあります。これはシックスシグマのフレームワークにおいては、企業というものを顧客に対する価値提供、価値創造のシステムとして定義しているのだと考えることができるでしょう。もちろん、顧客はほかのステークホルダーに置き換えてみることも可能です。

 あるプロセスによって企業が生み出すアウトプット/サービスは、顧客によって評価されます。もちろん、顧客は「価値がある」と評価するかもしれませんし、そうでないと評価するかもしれません。そして、顧客に価値を与えられた場合のみ、それはブランドとなります。ここで「それ」と呼んでいるのは個々のアウトプットでも、個別のサービスでもなく、「顧客によって統合された総体としての企業の評価」です。

 繰り返しになりますが、こうした顧客の評価、そして、その結果としてのブランド価値の増大を可能にするのは、あくまで企業が適切な形で価値提供プロセスを経ているかどうかで決まります。だからこそ、製品の作り方を知っているのに、自社の価値提供プロセスを用いるブランドの作り方を知らず、外部の業者に自社のブランドの作り方を一任してしまう企業が多いことが問題なのです。

 もしかしたら、多くの企業が「ブランド」というものを得体の知れないものだと思っているために、そうした選択を行っているのかもしれません。しかし、ブランドとは自社の価値提供プロセスが生み出す、顧客へのアウトプット(サービス)に対する顧客の総合的な評価にほかなりません。顧客視点で自社の価値提供プロセスの改善を行うことを、ブランド戦略の具体的な実行プランとしてとらえれば、おなじみの業務改善活動と同じものに見えてくるのではないかと思います。とらえどころのない「ブランディング」という活動が、顧客に必要とされる製品を作るのと同じくらい、具体的にイメージできるのではないでしょうか。 

Webの活用にはAPIとしてのフレームワークが必要

 ここまで、シックスシグマによるプロセス重視の問題解決フレームワークについて説明してきました。このような形でビジネスを「顧客への価値提供プロセス」と位置づけることで、既存のプロセスの再設計の一部として、また、既存のプロセスには存在しない新たな価値提供プロセスを生み出す具体的な手段として、Webを位置づけることが可能になります。

 前編の冒頭で紹介したような、目的が明確にならないまま、流行のWebツールや手法を確たる理由もなく採用しようとする傾向も、シックスシグマのフレームワークを用いて、目的やフローを定義できるようになることで、大きく変わってくるのではないでしょうか。目的があいまいなまま、「とりあえずWebをどうにかしましょう」というような議論も随分減らせるのではないかと思います。 

 シックスシグマやバランスト・スコアカードなどのフレームワークを用いる利点は、Webの専門用語に惑わされることなく、関係者全員が共通言語として、企業経営の視点をもとに、問題の特定から解決策の選択、実行までを進めることが可能になることです。 

 いくらWeb2.0が注目を集めているとはいえ、ビジネスにおいてWebが持つ利点を最大限に活かそうとするなら、革新的な技術に振り回されていてはいけません。いま求められているのは、手段としての技術そのものよりも、目的と手段をつなぐインターフェイスです。そのひとつの方法論として、ビジネスプロセスという視点から「Webというアプリケーション」と「ビジネスというアプリケーション」をつなぐ「API(アプリケーション・プログラム・インターフェース)」として、シックスシグマやバランスト・スコアカードのフレームワークを用いるスキルが求められているのだと思います。

 ビジネスをWebに従わせるような現在のWebの利用法ではなく、Webを自社の戦略、価値提供プロセスに組み入れることが企業には求められているはずです。「手段からの発想」ではなく「目的からの発想」への転換が、いま必要とされているのだと思います。そして、この転換こそが、Webをより本格的なビジネス改善ツールに押し上げてくれることになるでしょう。そのためにもシックスシグマやバランスト・スコアカードなどのフレームワークを用いて、ビジネスそのものを知る技術が必要とされているのです。

 今回の内容については、2月14日・15日開催予定の「デブサミ2007(Developers Summit 2007)」でも、よりわかりやすい形でお話させていただこうと思っています。興味のある方はぜひ足をお運びください。

セッションタイトル:「Webサイトの提案に困っていませんか?~ 経営課題とWebサイトをきちんとリンクさせる7 の手法 ~」
日時:2007年2月14日(水)17:40~18:30
場所:目黒区雅叙園

参考サイト:
「ITマネジメント用語辞典」 (@IT情報マネジメント)
コラム(ミツエーリンクス)

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
ビジネスマンのための必読オンラインマーケティング塾連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

棚橋 弘季(タナハシ ヒロキ)

芝浦工業大学工学部(建築学専攻)卒。マーケティング・リサーチ、Web開発等の仕事を経て2003年より株式会社ミツエーリンクスに。現在はWebを使ったマーケティングに関する企画や自社サービスの開発に従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2007/02/09 11:28 https://markezine.jp/article/detail/538

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング