ネットイヤーグループ株式会社 バイスプレジデント。
Webマーケティングコンサルタントの醍醐味
Webマーケティングコンサルタントの醍醐味は何ですか? と聞かれたら、自分の知性、感性との極限までの戦いと答えるかもしれません。ご存知のように、インターネットが商業利用に活用されてから10年が過ぎました。特に、ここ数年は、インターネットビジネスも新しいステージを迎え、「戦略志向」と「クリエイティブ性」が融合した業際的な新分野になってきた感があります。
まだ、インターネットビジネスが固定化されていないがために、さまざまな情報源からパーツを集め、それをどのようにして戦略的なしくみに落としていくかということで悩んだり、また、クリエイティブ活動に関わる多くのクリエイターとそのしくみをどう表現していくかを議論したりする日々は「エキサイティング!」の一言に尽きます。
ここでは、私が最近、Webマーケティングを思考する上で常に気にしていることを3点ほど挙げたいと思います。でも、刻々技術革新をしている分野ですから、すぐに興味関心が変わっているかもしれません。それはそれでご容赦いただければと思います。
インターネットの特性を考える
Webマーケティングを構築する上で常に根底として考えるのが、「インターネットの特性」をいかに戦略にビルトインするかということです。インターネットの特性とはどんなものでしょうか? 大胆に言えば、私は、[1]ネットワークの経済性、[2]相互関係性、だと考えています。
ネットワークの経済性とは、電話と同じでネットワーキングをする“個”がいかに多く集まっているか? が勝負を決するというものです。1対1の関係ではなく、1対n、n対nの関係性をどのようにマーケティング戦略にインプリメントできるかというところがミソになります。そのマーケティング施策に参加したい、参加した人と繋がりたいという欲求をいかに引き出すかという演出が大事です。
もうひとつの相互関係性は、マスマーケティングではなかなか実現できないインタラクティブ性を軸に、いかに“集合知”を創出するかというところがポイントになります。この集合知は、“個”と“個”が働きかけあって、ひとつの“個”が持っている情報、知識をいっぱい集めて組織化し、文字通り“集合”の“知”を形成するものです。このように、他のメディアにはないインターネットの特性をマーケティング戦略に落としこむことによってWebマーケティングの存在意義が花開きます。
コンテクストマーケティングを考える
インターネットで検索したり、Webサイトを見たりすることが消費者行動の中で日常的になってきました。朝の通勤電車の中で携帯電話に届いたメルマガをチェックする。お昼休みを利用して会社のそばのお店に立ち寄り、買いたい候補の商品を確認する。夜、家に帰って、PCサイトで商品の長所短所を比較サイトで詳しく調査する。
これらの消費者の一連の行動──コンテクスト(文脈)を想定して、そのなかでマーケティング戦略を考えることをよく行ないます。そのときに大事になってくるのが、消費者の接触ポイントの役割と接触ポイント同士の連携です。上記の事例で出てきた朝の通勤電車でのメルマガの役割は、ターゲットユーザーが欲しいと思っている商品をいかに抽出してそれに気づかせるかです。
そのちょっと気になった消費者を次にどういう接触ポイントでどのような行動に仕向けるか、そういう一連のコンテクストの中でPCや携帯電話にどのような役割を持たせるかを考えます。Webマーケティングといえども、もはや、Webの世界の中だけでなく、お店や雑誌などリアルなプレイスや媒体とどのように絡めていくかということが、ますます重要になってきています。
戦略性とクリエイティブを考える
Webマーケティングの醍醐味は、冒頭でお話したように「戦略性」と「クリエイティブ」の両方のおもしろみを持っていることではないでしょうか? 「戦略性」の右脳と「クリエイティブ」の左脳の部分です。ロジックを詰めながらマーケティング戦略を構築し、消費者との接点で消費者の心を震わせるようなクリエイティブを発揮し感動の嵐を巻き起こす。Webマーケティングコンサルタントは、相反するような2つの事象を使い分けながら進めていきます。
それは一緒に働く仲間も一種変わっています。ロジックを一緒に詰めるMBA出身のビジネスコンサルタントと喧々諤々議論した後に、映像ディレクターと最後のクロージングについてアイデアをぶつけ合う、このようなシーンが日常茶飯事です。そこには、いつも新しい発見があります。まさに“戦略的創造”の世界です。ぜひ、この醍醐味を一緒に経験しましょう!
書誌情報
- タイトル:Webマーケティングコンサルタント養成講座
- 著者:海老根智仁、頼定誠
- 監修:根来龍之(早稲田大学IT戦略研究所所長)
- 定価:1,800円
- 刊行:2008年12月11日
- ISBN978-4-7981-1818-5
- ページ数:192ページ
- 判型:A5並製