「公共広告」という軸
他の広告祭にはない、AD STARSのユニークな点は、一般の広告カテゴリーのグランプリと公共広告のカテゴリーのグランプリのふたつのグランプリが存在することではないでしょうか。前述もした、ミッションのひとつを振り返ってみましょう。
「For human tomorrow:広告が過度に商業的であるとの批判を受け止め、広告が人類に貢献できるマーケティング・コミュニケーション、ソーシャル・コミュニケーションとなるための方向を模索、提示します」
広告に対する内省的な視点を持ち合わているのは、AD STRASの後援の中心に、韓国の公共広告機構(kobaco)があることも大きいと思います。また、広告祭の期間中に開かれるセミナーもほとんどが、公共広告を題材にしたもので、広告祭全体が、公共広告に関する討議の場としても、機能したのではないでしょうか。
また、アジアで広告祭を立ち上げるにあたって、Adfestの歴史や規模、Spike Asiaの「カンヌ」というブランド力と戦うための手段が、「公共広告」という軸だったのかもしれませんが「公共広告」という強みを活かし、他の広告祭にない存在価値を提供するのかもしれません。
ビジネスではない、広告祭
また、他の国際広告祭と比較して、ユニークな点がもう1点あります。AD STARSは、賞への出品費が、かからず、グランプリを獲ると、賞金まで貰えます。ご存知の方も多いかもしれませんが、他の多くの国際広告祭は、ひとつのビジネスとして行っている側面が強く、高い出品費に加え、高い広告祭参加費をとるのが普通で、賞金が貰える国際広告祭はほとんどありません。
ただ、残念なのは、受賞作品が10月という時期も相まって、他の国際広告祭の結果の後追い的に見えてしまうことです。(参考:受賞作品一覧)単純に、よい作品はどんな賞でも評価されるということなのかもしれませんが、カンヌ国際広告祭、ONE SHOW、クリオ国際広告祭、など先に開催される広告祭で受賞した作品のうち、アジア発のものが並んでいるだけのようにしか見えません。東アジアだからこそ評価できる作品もあったのではないかと個人的には思います。