自動入札管理ツールの普及と広告代理店サービスの差別化
ここで、最近の広告代理店各社の動きを見てみよう。
SEM専業広告代理店最大手のアイレップは、日本においてフィービジネスでのリスティング広告運用サービスも提供している。
サービス提供の際に利用する自動入札管理ツールは、自社開発によるi-bidder、OmnitureのSearchCenter、KENSHOO Search、tdサーチウェア、そしてAD EBiS Auto Bidなどを、運用ケースごとに使い分けている。
2006年7月に英国の自動入札管理ツールBidBuddy(現tdサーチウェア)を日本に持ち込んで、注目を集めたSEM専業広告代理店ルグランも、リスティング広告の運用の際は必要に応じて数多くの自動入札管理ツールを使い分けている。同社の場合は、広告主に対してリスティング広告コミッション以外の費用を請求していない。
またルグランでは、リスティング広告の運用を開始して半年~1年後に、特定の広告主には成果報酬型料金体系でのサービス提供をしている。これは獲得単価(CPA)を設定して運用を行い、あとはコンバージョン数に応じて料金を支払ってもらうという成果報酬型のサービスである。
この2社の例を見ると、自動入札管理ツールは、あくまでもリスティング広告運用において最大のパフォーマンスを得られるために使われていることは明らかだ。
このように、自動入札管理ツールが広告代理店サービスの内部に組み込まれることで、各広告代理店のリスティング広告運用が明確に差別化されることも予想できる。そして、広告主への最適なサービス提供が進むと同時に自動入札管理ツールの普及が進むことも考えられるだろう。
広告代理店向け自動入札管理ツールも登場
国内ツールベンダーとして、広告効果測定ツール提供事業者の最大手に位置づけられる、ロックオンは、2009年2月にAD EBiS Auto Bid の本格的な提供を開始した。
AD EBiS Auto Bidは、国内のリスティング事情に適したツールを志向しており、特に国内の広告代理店との協業を強く意識されていることが特徴だ。このため、導入障壁の低さや、利用料金が広告出稿費の3%~という低価格設定、ルールベース型など独自の特徴をもっている。
多くの海外製の自動入札管理ツールが大手広告主へのターゲット設定をしてきたのに対して、ADEBiS Auto Bidは、より広いターゲットを設定し、国内での自動入札市場の開拓を目指している。この国内ツールベンダーによる、新たな切り口でのサービス提供の開始は、今後の自動入札管理ツールがどこまで普及していくのかについての試金石として、注目すべきであろう。