循環する市場まで見ると、マーケティングはどう変わるか
メーカーやブランドのマーケターは、「循環」を見据えた市場に向けて何から始めればよいだろうか。
一般的なマーケティングの視点では、比較的短期で把握しやすい指標に目が向きやすい。一方、「循環」の視点を加えると、自社の商品がどれだけ長く使われたか、修理によって利用期間がどの程度延びたかなど、購入後を含む長い時間軸で顧客体験や市場を捉える必要が出てくる。
たとえば、自社商品の「購入後」に、その商品を長く使うための情報はユーザーに届いているか。修理する方法はわかるか。また、手放すときに、商品の状態や特徴を次の人へ伝えやすいか。中古で初めて自社商品を手にした人にも、使い方やサポートの情報が届いているか。メーカー自身が二次流通を運営しなくても、購入後の市場との接点はつくることができる。
河野氏は、一般論として短期的な売上拡大を求めすぎると、かえって中長期のブランドを損なうケースもあると指摘したうえで、こう語る。
「時間軸が伸びれば伸びるほど、それは商品やサービスではなく、お客さまの時間軸と重なり、マーケティングは経営そのものと重なっていくように思います。短期的な売り上げが求められる面もあるとは思いますが、マーケターの方も長期的な視点をもってどんどん経営陣と議論していってほしい」
循環経済時代のマーケティングには、「どう買ってもらうか」に加えて、「買った後に残る価値を、どう次へつなぐか」という問いが加わる。前の持ち主の「購入後」は、次の持ち主の「購入前」になる。
時間軸を長期に広げ、購入後の使用・手放すプロセスまで支援する取り組みは、単なる販促活動を超え、「生活者の時間に寄り添う経営そのもの」へと進化していくのである。
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小口 裕(オグチ ユタカ)
株式会社ニッセイ基礎研究所 主任研究員
多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)。消費者行動の専門家として、エシカル消費、サステナブル・マーケティング、地方創生を中心に研究・政策提言を行う。過去、20年以上にわたり、自動車、食品・飲料、デジタルコンテンツ、自治体などの多岐にわたる分野の消費者調査や研究に従事。持...
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