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ネット業界職業図鑑

インテル、アドビなどの広告キャンペーンを担当
業界の先端を走るWebクリエイターの仕事とは?

 ネット業界の仕事といっても、どんなものなのか、何ができるのか、なかなか外部の人間にはわかりにくいもの。そこで、今をときめく「あの会社」で生き生きと働くキーマンを「職種」にクローズアップしてご紹介いたします。第13回は、インターネット広告の黎明期から数多くのWebプロジェクトに取り組み、カリスマWebクリエイターとして知られる遠崎寿義氏に登場いただきます。【バックナンバーこちら】  

ミッション:Webプロジェクトのクリエイティブをコントロールし、全責任を持つ

 デザイン、コーディング、フラッシュ作成、テクニカルワークなど、多彩なスキルが必要とされるWebのクリエイティブ。プロジェクトの中で、関係者を取りまとめる“要”として重要な役割を担うのが「クリエイティブディレクター」だ。しかし、実際に具体的な仕事の内容を想像するのはなかなか難しい。

 そんな投げかけを遠崎さんにしてみると、「会社やプロジェクトによって、その位置づけや仕事内容が違っているようですね」と返ってきた。

 「広告代理店でクリエイティブディレクターといえば、管理職的な役割を担う場合が多いようです。制作チームのメンバーのアテンドやクライアントとの折衝等に比重が高く、実際に現場で制作指揮を執る人もいますが、現場は他の方に任せる方もいます。一方、私のように制作会社側から立つ場合は、デザイナーやアートディレクターを兼ねることが多く、より現場に近いような気がします。いずれにしても、クリエイティブ全般を戦略的に捉え、品質をコントロールし、すべての責任を負う役目であることは間違いありません」

 遠崎さんの場合、直接の取引先は広告代理店が多い。その際、代理店のクリエイティブディレクターのもとでディレクターとして携わることもあれば、クリエイティブディレクターとして営業担当者とともにクライアント(広告主)に向かうこともあるという。

 「近年は、後者の形態で関わることが増えてきましたね。その場合、まずはクライアントでヒアリングを行うことからはじまります。営業担当者がすでにまとめている場合もありますが、とにかくユーザーのニーズを捉えて、プランの原型をつくることが第一ステップ。それを“叩き台”にしてチームメンバーでディスカッションを行うわけです。フラッシャーやテクニカルディレクターを集め、私も現場メンバーの一人としてフラットに参加し、『こんな手法はどうだろうか』『これいいんじゃない?』とアイディアを出し合います。そして叩き上げたものについて、クリエイティブディレクターとして最終的にゴーサインを出します」

 その時、すでにクリエイティブディレクターの頭の中には、デザインや遷移図が存在しているという。しかし、関係者が多い中、目に見えていない「プラン」という状態で共有することは大変難しい。特に代理店やクライアントとのコンセンサスはクリエイターの悩みの1つでもある。果たして遠崎さんはどのような工夫を行っているのだろうか。

 「本当は建築物のように模型がつくれるといいのですが、Webサイトの納期は厳しいし、コストも抑えられていることが多いんです。そこで出来るだけ短時間で全体図を共有できるように、打ち合わせでつかう“絵コンテ”は、できるだけ詳細な部分まで描ききるようにしています。たとえば、普通ならダミー原稿を入れるような場合でも、カギとなる部分には出来上がりに近いテキストを入れるようにしています。そうすることでかなり具体的にイメージしてもらえるんですよ」

 コピーまで自分で書くこともあるという遠崎さん。クリエイティブの進行となると感覚的な手法がイメージされがちだが、ロジカルなテキストによる表現とコミュニケーションの可能性を強く感じるという。

 「たとえば、絵コンテでは難しい“流れ”を共有する時、綿密なテキストが最も効果的なことが多いんです。“雰囲気”ではなく、なぜそういう流れになるのか"ロジカル”に説明する。それによってお互いの勘違いが少なくなって手戻りが減り、その分品質の向上に注力できるわけです」

 ともするとクリエイティブは「いい・悪い」といった感覚的な言葉で語られがちだが、企業のマーケティングやプロモーションを目的とする場合、戦略に基づいた筋書きに基づいて成果を上げる“ツールとしての価値”が問われる。

 「単に面白いでしょ、かっこいいでしょ、で終わるのではなく『本当に成果につながったのか』を検証し、次に活かすために、多くのプロジェクトでログ解析は自分たちでも行うようにしています。もちろん、成果を把握することは重要ですが、つくった人間ですから、問題があればどこをどうなおせば改善できるのか、すぐに提案できますから。このように、つくるだけでなく、効果検証や次の改善まで全体を見渡して次につなげられる提案ができることが、クリエイティブディレクターに求められていると考えています」

 奇しくもクライアントとなっているのは、KPIに対してシビアな評価を持つ外資系企業が多い。数あるWeb制作会社からパートナーとして選ばれる理由は、クリエイティブとしての品質もさることながら、責任を共有し、成果を出すというクリエイティブディレクターとしての役割を真摯に全うしていることにもあるのだろう。

 責任者であり、同時にデザイナーやフラッシャーとして手を動かす。複数の役割を持つ遠崎さんは、どのような1日を過ごしているのだろうか。(次ページへ続く)

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この記事の著者

「ネット業界職業図鑑」制作チーム(ネットショクギョウズカンセイサクチーム)

伊藤&五月女の男女ユニットで、ネット業界の様々なプロフェッショナルを紹介します。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2009/09/16 11:00 https://markezine.jp/article/detail/8208

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