発信者情報の開示に同意しない場合は…
発信者が発信者情報の開示に同意しない場合や2週間以内にプロバイダ等に回答しない場合は、情報の発信により権利が侵害されたことが明らかであることが認められる場合に限り、プロバイダ等が保有する発信者情報が開示されることになります。名誉毀損やプライバシー侵害の判断基準が抽象的なことから、プロバイダ等が「権利が侵害されたことが明らか」であると判断することができず、自主的に発信者情報が開示されないことも少なからず存在します。このような場合は、プロバイダ等に対し発信者情報を開示するよう裁判所に申し立てる必要があります。裁判所が「権利が侵害されたことが明らか」であると認定した場合は、プロバイダ等に対し、保有する発信者情報の開示を命じます。

開示の対象となる発信者情報は、プロバイダ等が保有しているものに限られています。ひとつのプロバイダが全ての発信者情報を保有しているとは限りません。例えば、ブログや電子掲示板の管理・運営者は、権利侵害に関するIPアドレスとIPアドレスが割り当てられた電気通信設備からブログや電子掲示板に書込が行われた年月日及び時間(タイムスタンプ)の情報を保有していますが、発信者の氏名住所等の情報を保有していません。そのため、発信者を特定するためには、複数のプロバイダ等に発信者情報の開示請求をする必要が生じる場合があります。
発信者は、プロバイダを利用してインターネットに接続し、第三者が管理・運営するブログや電子掲示板に書き込むのが一般的です。そのため、まずブログや電子掲示板の管理・運営者に対し、IPアドレスとタイムスタンプの開示請求を行います。次に、開示されたIPアドレスから発信者がインターネット接続に利用したプロバイダを割り出し、当該プロバイダに対して、発信者の氏名、住所等の開示請求を行います。発信者を特定するためには、少なくともこの2つの開示請求が必要となります。
本稿中、意見にわたる部分は、筆者個人の見解を示すにとどまり、筆者の所属する法律事務所の意見を表明するものではありません。また、具体的事案により本稿中とは異なる結果が生じる場合があります。