2004~2005年にかけて一気に普及
―― メディアでとりあげられるようになり、状況は変わっていきましたか?
T氏 ユーザーさんの意識が高まっていったのは感じられました。普及が一気に進んだのが、2004年~2005年にかけてになります。この頃になると大手企業や大手Web制作会社からもたくさんの引き合いをうけるようになりました。
日本企業の中で、CMSの導入が早かったのは、確か某バイクメーカーのY社さんです。なぜ、Y社さんが早く導入したのかは謎なのですが(笑)、当時は某海外製CMSを使われていたらしく、そこの製品セミナーなどでよく紹介されていましたね。そのほか、外資系の企業はグローバルサイトなどで本国仕様のCMSを使っていたので、日本のサイトも勝手にCMS対応になっていることもあったようです。ワールドワイドに展開している企業だと、2000年初頭ぐらいに、数億円ぐらいかけてCMSを導入し、年間の管理費が1000万かかっているケースが多かったようです。
―― すごいコストですね。
T氏 当時は選択肢がそれしかなかったようですね。そのためかCMSを販売しはじめた頃は、よくお客さんに「CMSはウン千万するんでしょ?」と言われていて一般企業が導入できるものではないと思われているところが多いようでした。
実際は私の扱っていた製品をはじめ、既にいくつか数百万円台で購入可能な製品があったのですが、こういった噂が日本におけるCMSの普及を妨げたもうひとつの理由かもしれないと思っています。
システムが絡む仕様に苦戦
―― CMSというキーワードが注目されていく中、Web制作会社の意識も変わっていったのでしょうか?
T氏 はい。徐々にWeb制作会社もCMSを無視できなくなってきたのですが、CMSを導入することにより、いままでの制作手法とぶつかる部分がでてきて、対応に苦労していたようです。先ほども説明したとおり、Web制作会社の方々はシステムに弱い方が多く、システム的なCMSの導入は、結構ハードルが高かったようですね。
また今もまだ多いですが、これまでHTMLベースでWebサイトを制作してきた方々にとっては、システムと連動するページといえば、申し込みや問い合わせなどの入力フォーム系の画面でした。通常の情報を掲載するだけの画面情報がシステムで制御されることにより、デザインやサイト構造に制限が出てくるのは、非常に違和感があったようですね(笑)。システムをやっている人からすると、システムが絡む画面は仕様に基づいて設計するのはあたり前なのですが…。
――Web制作会社にとっては、 いままでと違う文化・考え方が必要になったわけですね。
T氏 どちらかといえば印刷物に近い概念でウェブページのデザインをやってきた方々にとっては違和感があったらしく、CMSを使ったサイトをはじめて構築されるWeb制作会社さんとは、私自身も、導入の過程でかなり手こずった思い出がありますね。CMSベンダー側もWeb制作現場を知らない営業マンやシステム担当者などは、Web制作の現場の進め方がわからないので、Web制作会社の方々と話が合わないことが多かったようです。
私はWeb制作会社時代にWebディレクターをやっていたので、そのへんのはがゆさはよくわかっていました。そこで、私のところでは制作会社向けに、CMSの導入コンサルティングサービスを取り入れ、システムに弱いWeb制作会社がスムーズにCMSを導入できるように説明の機会を設けていました。当時はそういう状態で、導入する側も、制作する側も何が問題になるのかわかっていなかったんだと思います。いろいろ模索の時代でした。