サイトリニューアル成功へのポイント2:思い込みは捨てる
2つめのコツは「思い込みは捨てる」だ。まず、Google Analyticsの誤った使い方の事例について紹介した。「Google Analyticsは複雑です。また、サポートもそれほど充実しているわけではないので、オリジナルの使い方をしている方が結構います。この例では、あるサイトの目標達成プロセスで、カートから購入まで離脱がゼロと表示されます。これを見て担当者は『うちのサイトってすごいね』となりますが、別の人が別の指定状況でやったら実は結構落ちてましたというようなパターンがあります。アクセス解析をしている方々って一人でやってる方が多いので、自分が間違っていることに気づかない方も結構います」と思い込みへの注意を促した。
次の失敗例は、広告掲載サイトを運営するVisionalistユーザーのA社。
担当者は石井氏のセミナーを受講した際、コンバージョンをした人が何をみているかをチェックする必要性を聞き、コンバージョンをした人だけに絞りこんだコンテンツの閲覧率を見ていたという。
石井氏は「このサイトの場合、コンバージョンをしたユーザーがよく見るページが『料金表』だったので、サイトリニューアルの際にクリック率の高いエリアに『料金表』を配置しました。すると、確かに『料金表』へのアクセスは増えたのですが、コンバージョン数が下がってしまいました」と語った。
コンバージョンをした人がよく見ていたページは料金表なので、単純に考えた場合はコンバージョン数が増えてもおかしくない。では、なぜコンバージョン数が下がってしまったのだろうか。
その要因として石井氏は、「サイトの数字を見ていたところ、リニューアル前にコンバージョンをしていたユーザーの7割がリピーターだったことがわかりました。しかし、サイトリニューアル後にはリピーターの数が減っていました。もともと、広告掲載という商品はすぐにコンバージョンされる商品ではなく、他社と比較され再訪してコンバージョンする商品となります。リピーター=コンバージョンされやすいユーザーさんが減っていたので、コンバージョン数が下がるのは当然でした。また、リニューアル後は新規ユーザーが増えたのですが、料金表を見て離脱する人が多かったため、アクセスが増えていたのです」と語った。
また、リニューアル前に料金表がよく見られていた理由も分析している。
「リニューアル前のページ遷移を調べてみたところ、資料請求フォーム → 料金表 → 資料請求フォーム というページ遷移が多いことがわかりました。その理由は、資料請求フォームの中で、料金プランを選択する欄があるのですが、資料請求フォーム内には料金プランについての補足説明がなかったのです。そのため、しっかりと料金を調べたいユーザーは、資料請求フォームから料金表に戻る必要があったため、クリック率が高くなっていたのです」
このように、「コンバージョンをした人がよくアクセスしていたページは料金表なので、そのページのアクセス数をさらに増やせばコンバージョンが増える」という1つ数字のみでサイトの改善を判断することは危険だと指摘。また、「なぜ料金表のページが見られていたのかを定性的な視点で見ていくことが重要だった」と語った。
石井氏は、この例を踏まえて「アクセス解析は魔法の杖でもなんでもないので、限界があります。まずアクセス解析は訪問者の傾向しか見れません。これから取り込もうとしてるユーザーのことは分かりません。それから、ページをトラッキングしたデータとしては、見られていないページのデータは出ませんので、全体のサイトマップと照らし合わせて、見られているものと見られていないものっていうのを付き合わせるなどしなければなりません」
ほかにも、ツールで取得できるデータの信憑性や、サイトからの問い合わせの質を考えて集客するなど、ほかのデータと組み合わせて、自社サイトにあった調査方法を見つけるべきであると主張した。
トップページから来訪がメインという思い込みもある。石井氏は全体の39%しかトップページを入り口としていない例を挙げ「『よくトップページを改善します』『トップページのデザイン案を出してください』という話をよく聞きますが、私は『ああなんでこの人トップページって言っているのかな』とすごく思います。トップページだけではお客さんのデータじゃないところってのをやっぱり把握しておいてほしいです」と、トップページだけでなく主な進入ページからの導線の最適化について話した。
続いて石井氏は、行動ターゲティングツールを使って導線の最適化をしたサイト宝石広場の例を挙げ「トップページに導線が偏っていて、更にトップページに来るお客さんはたくさんのニーズがある場合に、1つのトップページにいろいろな情報を詰め込んで最適化するというのは難しいです。この例では、ブランド名での流入に関しては、基本的にそのブランドとマッチしたキーワードでトップページのビジュアルを表示するように変えています。そうすることで、トップページに関してもいくつかのパターンで流入してきた人たちに対して最適化を図ることができるし、いちいち更新する必要もありません」と、説明した。結果、ブランド名での流入の直帰率は半減し、コンバージョン率も15%向上したという。