単なるローカライズではない、魅力あるコンテンツ誕生の背景とは?
映像の撮影をともなうリッチコンテンツ開発の裏側をお届けした前回に続き、今回はゲームコンテンツ開発の裏側について、事例をもとに解説していきたいと思います。ご紹介する事例は、インテルの「アシタロボを作ろう」というプロモーションキャンペーンのWebサイトです。
まずは、前回同様、このサイトの企画が生まれた背景についてお話しましょう。2009年、米インテルが「Sponsors of Tomorrow」と銘打ったブランドキャンペーンを発表、世界20ヵ国以上で拡大展開することが決定しました。
ザ・ストリッパーズでは、これまでにもインテルのキャンペーンサイトを数多く手がけています。一昨年はCore 2 Duo(インテル(R)Core(TM)2 Duo プロセッサー)、昨年はセントリーノと、従来のキャンペーンは個別のCPU製品を訴求するものでした。個別商品ではなく、インテルのブランドキャンペーンをやるのは僕らにとって初めてのことでした
米国の本社で作られた「Sponsors Of Tomorrow.」というブランドメッセージを元に、日本の市場やこれまでの広告コミュニケーションで関係性も踏まえて、コミュニケーションを行い、インテルブランドへの共感を持ってもらうことが、今回の目的です。
企画をひねり出す前段階、クリエイティブディレクターの役割とは?
こうした大規模なプロモーション・キャンペーンの仕事では、僕がWebのCD(クリエイティブディレクター)を担当する以前に、そもそもの大前提として世界共通のブランドメッセージがあり、それを受けてTVCMをはじめ全体を仕切るCDが別に立っています。今回の場合は、電通の高崎卓馬さん。公共広告機構のCM『黒い絵』(子どもが真っ黒な絵を描きつづけ、心配した親や先生が見届けると、それは大きなクジラの絵であった、というストーリーのCM)などの作品で有名な、CM界の大御所的存在の方です。
高崎さんがCDとして決定したのが、「Sponsors of Tomorrow」という米国で作られたタグラインを受けて、日本でのメッセージを日本語でちゃんと作る、ということでした。そこで生まれたのが、「その好奇心で、未来をつくろう」という日本独自のタグラインでした。FeutureやTomorrowといったワードは、家電メーカーやテクノロジーを強みとする会社ですでにたくさん使われていて、新鮮さがないため、もう少し別の軸にずらしたいという考えがあったようです。こうしたタグラインやコンセプト開発のプロセスには、僕はほとんどかかわっていません。TVCMが少し先行する形で、Webサイトも攻めていく。そんな体制で、プロジェクト全体が進んでいきます。
企業そのもののブランドキャンペーンの場合、特定の商品があるわけではありません。キーワードは日本独自のタグラインを受けた「好奇心」というワードのみ。最初は雲をつかむような状態から、会社のスタッフみんなでブレストを繰り返し、アイデアを出していきます。いろいろなアイデアが出た中で、最終的に「アシタロボ」というコンテンツの原型が見えてきました。
「アシタロボ」は、平たく言えば、ロボットがつくれるサイト。インテルは世界で初めてCPUをつくり、その速度をどんどん速めることで、テクノロジー分野の世界的なリーダーシップを発揮してきた会社です。世の中には、そのおかげで発展したものや便利になったものがたくさんあります。テクノロジーを開発することが、企業のブランドとして核になる部分にあります。
では、「その好奇心で、未来をつくろう」というタグラインでキャンペーンを展開したとき、Webサイトで何をするべきなのか。「好奇心って何だったっけ」と思い出させるようなコンテンツがつくれないか、または自分の好奇心から何かが生まれるのをシミュレートできるようなコンテンツがつくれないか。その中で、発明や技術の進化を追体験できるような…。
と、いろいろ考えるうちに思い浮かんだのが、子どものおもちゃ、レゴの「マインドストーム」という製品でした。マインドストームは、レゴ社がMIT(米国マサチューセッツ工科大学)と共同開発した製品で、レゴブロックにマイクロプロセッサーを埋込むことで、自律型ロボットを組立てることができます。これをヒントに、3Dでつくった1個ずつのパーツにパラメータを埋め込み、これを組み合わせることで、それぞれ違ったキャラクターのロボットがつくれるサイトを思いつきました。(次ページへ続く)