SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

MarkeZineメールマーケティング特集(AD)

レコメンドメールは効果があるのか?
MarkeZineメルマガでの実験結果レポート

 メルマガを使ってユーザー個別にお勧めの情報を提供するレコメンドメールが注目を集めています。実は、昨年11月19日と12月17日の計2回、MarkeZineの定期メルマガでこのレコメンドメールの実証実験を行いました。今回は、その実験概要と結果をレポートしていきます。【メールマーケティング特集ページ、絶賛公開中!】

「デクワス」と「MailPublisher」が連携

 2009年11月に、サイジニアのレコメンドエンジン「デクワス」とエイケア・システムズが提供するメール配信システム「MailPublisher」が連携しました。連携により、ユーザー各々に異なるオススメ情報を差し込んだメール、いわゆる「レコメンドメール」が送れるようになりました。

 通常、レコメンドエンジンは各ユーザーへのオススメ情報は持っているものの、メールアドレスの情報は持っていません。そこで、エイケア・システムズでは「レコメンドconnector」というアプリケーションを開発しました。このアプリケーションでは、レコメンドエンジンと大元の会員データをつなぎながらメールアドレスを含んだ配信リストを生成、さらにその生成した配信リストを自動的にMailPublisherへセットできるようにしており、今回新たに「レコメンドconnector」へ接続できるレコメンドエンジンとして「デクワス」が加わった、ということになります。

 ここで、そもそも「レコメンドメール」とはどういうものなのか、改めて簡単に説明します。サイト上でよく見かけるレコメンドは、例えば、ユーザーがある商品を選択した際に、その商品と関連性の高い商品をオススメするという「アイテムベースのレコメンド」です。一方、メルマガで用いられるレコメンドとは、「パーソナルレコメンド」と呼ばれる、ユーザー自身との関連性が高い情報をオススメするというものになります。サイト上でも、マイページにログインした際に「○○さんへオススメ」と表示される場合がありますが、これと同じです。

エイケア・システムズのWebサイトで、『活用例にみる「レコメンドメールの実践方法とその効果』というPDFを無料で公開しています。レコメンドメールの詳細な解説を読みたい方は、ぜひご覧ください。

レコメンドエンジンとメール配信システムの連携で何が実現するのか?

 こうした「レコメンドメール」実現に向け、今回「MailPublisher」がサイジニアの「デクワス」と連携するに至ったのは、「デクワスの特徴とする複雑ネットワークを用いた解析ロジックが、メルマガのコンテンツ作成において新たな可能性を生み出してくれるのでは?」という期待からです。よくメルマガ担当者から「毎回コンテンツを作るためのネタ探しに大変苦労している」という話を聞きますが、デクワスによる思いも寄らぬアウトプット情報が、そうした悩みを解消する1つの手立てになればとの想いから、連携が実現しました。

 しかし、連携により良い効果が生まれることに自信はあったものの、多くの方々にお勧めするためにも具体的な数値等のデータを把握できないかと考えていました。そこで、昨年末にMarkeZineの協力のもと、レコメンドメールの実証実験を行いました。今回は、その実験結果をレポートしていきたいと思います。

MarkeZineメルマガでのレコメンドメール実験概要

 実験は、MarkeZineが定期的に発行しているメルマガで、昨年11月19日と12月17日の計2回行いました。

 レコメンドメールを送るにあたっては、ユーザーへ情報のオススメができるよう、あらかじめサイト上にレコメンドエンジンを仕込み、一定期間ログを蓄積しておく必要があります。この蓄積期間によって、レコメンドが実施できる対象者数や、レコメンド解析の精度も変わってきます。今回は時間の制約から、1回目の実験の約3週間前と比較的短い期間でログ蓄積となりました。結果、この期間内にサイトへログインして記事を閲覧したユーザー数は約6,000名強となりました。

 実験方法は、レコメンドメールの効果を見極めるためにこの対象ユーザーを3つに分割し、それぞれ次の3パターンのメールを送って比較検証する、ということになりました。

配信内容
  • パターンA:ユーザー各々に合わせオススメ記事を紹介(パーソナルレコメンド)
    本題である「レコメンドメール」です。
  • パターンB:一定期間内にサイト上で最も閲覧された記事との関連性が高い記事を紹介
    最も人気のあった記事にまつわる情報は、多くのユーザーにとって比較的関心の高いものであろうという仮説のもと、「あなただけへのオススメ」ではないものの、「全ユーザーへ共通のオススメ」として扱いました。
  • パターンC:一定期間内に人気のあった記事ランキング
    これもいわゆる「全ユーザーへ共通のオススメ」と言えますが、一般的によく用いられるランキングと同義です。

 各パターンとも、それぞれのロジックに基づき10個の記事をメール内に差し込むことにしました。そして、各差し込み部分のコーナータイトルには、次のように表記しました。

コーナータイトル
  • パターンA:「あなただけにオススメの記事&ニュース」
  • パターンB:「オススメの記事&ニュース」
  • パターンC:「人気ランキング」
図1:レコメンドメール実験の概要
一定期間のログインユーザーを3等分し、それぞれ異なる種類のコンテンツを差し込んだメールを配信した
図1:レコメンドメール実験の概要:一定期間のログインユーザーを3等分し、それぞれ異なる種類のコンテンツを差し込んだメールを配信した

レコメンドメールの実施方法

 それでは、実際にレコメンドメールを送る場合にはどのような手順、あるいはどの程度の運用負荷で実現できるものなのでしょうか?

 まず、翔泳社には「会員ID」と「メールアドレス」を含んだ会員リストを用意してもらいました。そしてこれを「レコメンドconnector」にアップロードすると、数分後には「オススメ情報」が加わった状態のリストが生成され、自動的にMailPublisherへセットされました。それと並行して、レコメンド情報が本文に差し込まれるよう、本文の雛形を用意しました。

 作業自体は以上です。事前準備もさほど要さず、また、リスト生成などの処理時間も非常に短く、いたってスムーズに準備を行うことができました。

図2:レコメンドメールの配信手順
配信側は「会員IDとメールアドレスのリスト」と「メール本文」を用意するだけで準備が整う
図1:レコメンドメールの配信手順:会員IDとメールアドレスのリスト、メール本文さえ用意するだけで準備が整う

実験により検証してみたかったこと

 今回の実験で検証したかったのは、まずは「具体的な数値」です。そもそもレコメンドメールは、理屈の上では通常のメルマガコンテンツよりも高いコンバージョン(クリック)が得られるはずですが、「果たして具体的な数値として、どの程度高い効果が得られるものなのか?」という点で、国内外問わず公表される事例が少ないため、今後より多くの企業で実施されるようになるためには、我々としてはまずそれを明らかにしておく必要がありました。

 また、「情報の新たな活用方法のヒントを探る」という点も検証したいポイントでした。翔泳社には、もともと「これまで蓄積してきた豊富なコンテンツを、もっと活かせないものか?」という課題がありました。ニュースメディアにとっては、これまで「新しさ」こそが情報に価値を与えられる要素で、古くなってしまった情報はそのまま葬り去られていたケースが大半だと思います。しかし、仮に蓄積された情報へ何らかの価値を与えて蘇らせることができるならば、それは大変有益であるはずです。その活路を「メール上でのレコメンド」という、これまで行ってこなかったコンテンツの新たな露出の仕方によって見出すことはできないかと考えました。

 そしてもう1つ確かめたかった重要なことは、「企業による『パーソナルレコメンド』、つまり、企業がコンシューマーに対して『あなたへのオススメ』をすることが、そもそも受け入れられるものなのかどうか」です。パーソナルレコメンドは、ややもすると「なぜ自分の趣味が分かるんだ」と気味悪がられてしまう懸念がある訳です。ユーザーとのマッチング精度が高まれば高まる程、その分気味悪さは増すことになり、そうなってしまっては元も子もありません。

レコメンドメールはやはり効果が高かった

 実際の配信結果は、次のとおりです。

図3:メルマガの配信結果(ユニーククリック率の比較)
図3:メルマガの配信結果(ユニーククリック率の比較)

 まず、1回目の実験におけるユニーククリック率を比較すると、パターンAが0.65%、パターンBが0.56%、そしてパターンCが0.49%となりました。分かりやすく一般的に用いられる「パターンC」を100%として捉え直すと、パターンAが約132%、パターンBが約115%となり、パーソナルレコメンドがどれだけ効果的だったかが分かります。

 一方、2回目の実験では、パターンAが0.49%、パターンBが0.29%、パターンCが0.46%と、パターンAとCが僅差ではあったものの、1回目に引き続きパーソナルレコメンドが最も多くクリックされていました。しかし、パターンBとパターンCの順位がこの回では逆転していました。

 さらに、クリック後の平均滞在時間についても比較を行ってみたところ、やはりパターンAが最も長く、パーソナルレコメンドが効果的であることはより確かになりました。なお、今回実験を行った2回のうち、2回目の方が平均滞在時間におけるパターンAとそれ以外との差が顕著に表れていました。これはおそらくログ収集期間が長くなったことで、パーソナルレコメンドの精度が上がったためではないかと推測しています。

図4:メルマガの配信結果(クリック後の平均滞在時間の比較)
図4:メルマガの配信結果(クリック後の平均滞在時間の比較)

「情報の選択」「メールとレコメンドの相性の高さ」「安定的な効果」

 パターンA、つまり、パーソナルレコメンドの効果が高かった今回の結果から、情報に対しては、従来の「新しさ」「希少性」などに加え、「その人のために見つくろう」、つまり、「パーソナライズする」ということが十分価値になり得るのだということが言えます。世の中に情報が溢れる中で、「情報を選択して提供する」ということが求められているのだということを改めて実感しました。今後、ますますこうした需要が高まるのではないでしょうか? そういった意味で、レコメンドメールも今後はさらに積極的に活用されていくだろうと予測しています。

 また、今回の結果を見る限りでは、パーソナルレコメンドは案外気味悪がられることなく、スムーズに受け入れられていたようです。仮説ですが、メルマガを積極的に受け取っているユーザーというのは、もともと企業からの情報提供に対して比較的好意的である場合が多く、だからこそ「情報を自分向けにアレンジしてくれること」にも比較的ありがたく受け入れられる、ということが言えるのかもしれません。つまり、ユーザー特性といった面で捉えると、「レコメンド」と「メール」は大変相性が良いように思います。

 さらに先程も触れたように、2回の実験結果の中でパターンBとパターンCの順位が状況により逆転していました。ランキングといったコンテンツは特にその時々の内容に左右され、そもそもあまり興味を引くような記事がなければクリックされ辛かったりと、バラつきが生じることがあります。一方、パーソナルレコメンドは2回の実験いずれも他の2パターンよりも高いクリックを獲得しており、単に高い効果が得られるということだけではなく、安定的な効果が得られるということも注目すべき点です。

問題解決の一助としてレコメンドメールは活用されていく

 今回は、レコメンドメールが効果的という結果が出ました。ただし、例えばニュースサイトであれば、やはり今後もユーザーは「情報の新しさ」を重要視することは変わらないでしょうし、コマースサイトでは多くのユーザーが「安さ」を求めることに変わりはないでしょう。従って、レコメンドはこれまでの訴求の代替となる訳ではありません。

 しかし、例えば、これまで一部でしか活かせていなかった豊富なコンテンツを十分に活かし切る、あるいはコマースなどを例にとると、常に安くしてばかりでは利幅が減ってしまうという問題をいくらか解消させる、といったように従来の補てんとして今後活用が進んでいくのではないかと考えています。

 昨年より当社では、お客様からのレコメンドメールに対する引き合いを多く頂いており、今の時代、情報という資源を有効に活用することへのニーズが高まっている、ということが何となく頷けるような気がします。なお、さらに詳しい解説を当社のWebサイトでホワイトペーパーとして公開しています。興味のある方は、ぜひご覧になってください。

MarkeZineメールマーケティング特集ページ【絶賛公開中!

【レコメンドメールの詳細レポート】無料ダウンロードはコチラからどうぞ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
この記事の著者

北村 伊弘(エイケア・システムズ株式会社)(キタムラ ヨシヒロ)

エイケア・システムズ株式会社
メッセージング事業部
マーケティング部 部長

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2010/01/20 12:00 https://markezine.jp/article/detail/9320