携帯ユーザーと動画の相性

利用者数が増え、有料会員数も拡大しているニコモバ。ただ、「利用者数が増えている」という以上に有料会員の割合は増えている。それだけでは、ここまで伸びた説明としては不十分だ。
川影氏は、お金を支払ってサービスを使うという習慣が携帯電話ユーザーに浸透していた点も貢献したと分析。1番身近で手軽に利用料を支払える課金手段として、携帯電話が使えるようになったからこそ、ここまでの会員の伸びにつながったのだろうと見る。
さらに言うと、携帯電話ユーザーがお金を払って使うものの代表格は、着うたや着メロなどのデジタルコンテンツ。動画もデジタルコンテンツの1つの形態であることから、親和性の高さも後押ししたのだろうとも。
実際、ドワンゴの運営するdwango.jpやアニメロミックスなどのサービスとのシナジーを見ると、PC版よりもニコモバとの相性の方がよいのだとか。流入者の絶対数ではPC版よりも見劣りしてしまうが、ニコモバでdwango.jpやアニメロミックスなどへの広告を貼ると、PC版での広告を圧倒的に上回る量のトラフィックが得られるのだという。
「使っているユーザー層について言うと、ニコモバとdwango.jpはイコール。デジタルコンテンツの購入という点で、ニコモバとの親和性は高い。やがてPCを逆転する時期が来ると期待しています」
親和性の高さに期待している表れとして、VOCALOIDや「歌ってみた」系の人気コンテンツを増やすなど、現在はdwango.jpをニコニコ動画用に最適化する取り組みも始めている。
iPhoneなどのスマートフォンとの相性は?
2009年を振り返り、2010年を展望する上で重要なキーワードとなる「スマートフォン」。ニコモバでも昨年4月にはiPhone用視聴アプリを提供しているが、スマートフォンの登場により、動画体験はどのように変わっていくと見ているのだろうか。
「ニコモバはつまみ食い的に使われています。短い時間の動画をテンポよく何本も見るという傾向があります。PC版は異常なほどの平均視聴時間の長さが世界的にも驚かれていますが、見られる動画の本数はニコモバよりも実は少ない。スマートフォンはちょうど中間くらいで、バランスの取れた使われ方をするのではないかなと見ています」
また、川影氏がスマートフォンに期待している点として、制作ツールとしての側面があるという。これまでは動画制作=PCだったのが、スマートフォンでも編集してアップできるようになることで、動画制作者の間口が広がり、視聴者・制作者・コミュニティがさらに盛り上がっていくことを望んでいるという。

ソフトバンクのUstream出資は「大歓迎」
そんな可能性を見せているニコモバだが、これからのメディアだと川影氏は釘を刺す。そもそもの動画利用者数がまだまだ少ないというのがその論拠で、モバイルリサーチ with gooのレポートによると、モバイル動画を「とてもよく見る」「よく見る」ユーザーの割合は、合算しても13.5%に過ぎないというデータもある。
「動画を体験したことがない人の方がまだまだ圧倒的に多いのではないでしょうか。ただ、通信速度が上がったり、パケット定額がより安くなったり、流入口が多くなることで利用者は増えていくでしょう。当然、iPhoneやAndroidのようなスマートフォンが出てくることで、より動画を視聴しやすい環境は広まっていきます。動画の視聴は、モバイルの方が主軸になっていくのではないかと考えています」
先日、ソフトバンクがライブ動画共有サービスのUstreamに出資すると発表したが、ドワンゴは一足早く、ライブ動画配信の機能としてニコニコ生放送をリリースしている。そんなドワンゴから見ると、Ustreamのニュースは脅威ではなく、むしろ歓迎すべきことなのだとか。
「動画視聴体験は十分に広まっていません。様々な会社が素敵なサービスを投入して行くことで、より多くの人に『動画ってすごく面白い』と理解されることが重要。いろいろなサービスを使ってみた後に、『やっぱりニコニコが1番面白いね』と言っていただくには、本当に面白いと思えるコンテンツがあるということが重要だと思っていますし、選ばれる自信も持っています」

