プロジェクト:参加企業、アフィリエイトパートナーの要望に応え
日本のニーズに合わせたソリューションを開発する
米国に本社を持ち、グローバル展開を行なっているリンクシェア。世界4カ国もの拠点からの情報をもとに、常に最新の技術力を保持し、各国のニーズに柔軟に対応している。日本でも2001年よりサービス提供を始め、2005年にはリンクシェア・ジャパンとして法人化、2010年5月に株式会社トラフィックゲートとの合併により、国内最大規模のアフィリエイトサービスプロバイダーとなった。
「リンクシェアの強みは、まず参加企業を大手ECサイトに絞って、情報の信頼性や有効性を担保していること。そして、なによりもグローバル企業として、常に世界最新の技術力と最新トレンドを保持できることが大きいでしょうね」
そう語るのは、ソリューション開発部門で部長として組織を束ねる下浩子さんである。
「しかし、世界全体でまったく同じサービスを展開しているわけではなく、細やかなローカライズも行なわれています。そのなかでも、参加企業様、アフィリエイトパートナー様双方のお客様ニーズを汲取り、ソリューションとして反映させていくこと、それが私たちの部署の役割です」
参加企業の顧客対応を行なうのが営業部門であり、そこで発生する要望や依頼に対応するのが下さんが束ねるソリューション部、いわばバックオフィス的な役割に相当する。営業部門を通じて参加企業から上がってきた個別カスタマイズやプロモーションなどの要望に応えていくというわけだ。
しかし、要望が上がってくるのは参加企業側からだけではない。商品を紹介する側であるアフィリエイトパートナーからも、また異なる要望が寄せられる。さらにその要望に応えようとする実行段階では、開発部門など部門との調整も必要になる。そう下さんが属するソリューション部門は、さまざまな要望を集約させつつ、サービス全体を見渡して、最もよいと思われる“解”を出していく役割を担っているというわけだ。
「ソリューション部門は、サービスの運営担当も含まれるため、参加アフィリエイトパートナーの皆さんの声も直接聞くわけですね。また、メディア部門からも声が上がってくる。すると片方にとって利益になっても、もう片方にとっては不利益になるといった事態にも多々遭遇します。そこで、両方を鑑みた上でビジネスインパクトを最大化するベストバランスを考えることが、重要になってきます」
そんな複数のステークホルダーの利益を鑑みながら、ソリューションとしていかに昇華させるか。その1つの取り組みとして「リンクシェアチャンネル」のプロジェクトを紹介いただいた。
「たとえば、どんなにいい記事を書いても、アフィリエイトパートナー様のサイトそのものに集客がないとなかなか成果が上がりません。そこで、当方テーマごとに該当する記事を投稿して頂き、内容の審査を通った記事のみが掲載され、更にそのサイト内で様々なプロモーションを行い、アフィリエイトパートナー様の記事へ送客する場所を用意しました。そうしたプロモーション活動によって商品が売れ、『おかげさまで売れました!』とご連絡いただいた際にはとてもうれしかったですね」
一方、参加企業側からは自社の製品についての記事を集めたページをと希望される。両者の利益が一致して「リンクシェアチャンネル」は双方からの高い評価を得ているという。
アフィリエイトサービスというと、システマチックな印象があるが、それを動かしているのは「がんばっているアフィリエイトパートナーを応援したい」というリンクシェアスタッフの思いであり、よいコンテンツを選び出すなどのアナログな作業なのである。
「『リンクシェアチャンネル』は、サービスについてもっと考えてみようよ、という呼びかけから。ついつい日常の仕事に埋もれがちという悪しき習慣を断ち切るため、当社では自身の勤務時間の10%を使って新しい取り組みを立ち上げる『10%企画』という制度がありまして、そこから生まれました」
他の部署からも「やりたい」と手を挙げるメンバーを募り、プロジェクトチーム内でブレストを行ないながら進めていった。しかし、たとえアイデアがよいものであっても実行力がない、解決策がないなど、実現までにはさまざまな問題に突き当たることは多い。そんな時に、下さんが徹するのは「保健の先生」的な役割だという。
「代わりに答えを出してしまうのではなく、悩みを聞いたり、リラックスさせたり、それによって自分自身で答えを見いだしていく。それが、私と違っていてもできるだけ任せたいと思っています。正直もともと積極的に意見を言いたい方なので、こらえるのはなかなかきついのですが(笑)。部長というのは『最後の責任は負うから』というのが仕事だと思うので」
まさに侠気のあるといった印象の下さんだが、「いやいやとんでもない」と笑う。「たぶん、上司はできない方がいいんですよ」という下さんの上司としての心得をうかがってみる。(次ページへ続く)