改善アプローチ ― 興味バロメーターを採用
このサイトでは改善アプローチとして、前回紹介した、興味バロメーターの考え方を適用する方法をとりました。
この方法を選択した理由はいろいろあるのですが、その一つに先ほど挙げた「直帰しなかったとしても次画面のフォーム入力画面での離脱が高い」ということがあります。この状況から、『ユーザーがランディングページの先に望んでいるのは、“まだ”フォーム入力画面ではなく、さらに詳細な情報である』という仮設をたてました。
1.既存コンテンツの洗い出し
改善に向け、まずは、1ページにまとまってしまっていたコンテンツの内容を洗い出し、改めて下記のようなポイントで整理することにしました。
- 自分たちが強みと考えているものは何か?
- 競合サイトではどのような内容を訴求しているか?
- ユーザーがコンバージョンするのにリスクとして感じるものは何か?
ランディングページに記載していた情報、そこで訴求していた商材の内容、競合サイトを複数調査した結果から得られた内容を集めることで、おおよそどんなコンテンツ群があるかを把握できました。
2.コンテンツ群の分類
次に集まったコンテンツ群を分類していきました。分類にあたって、下記のポイントに気を配りました。
- 6つの分類にまとめること(多すぎにならないための制限)
- それぞれが被らないよう分類すること
- 分かりやすいラベリングができること
実際には「価格」「サービス詳細」「強み(売り)」「コンバージョン後の流れ」「よくある疑問」「利用者の声」という種別に分類しました。これらを前回紹介した『消費者行動論(ダイヤモンド社)』のリスクに当てはめてみます。
- 金銭的リスク:
商品価格、サーチコスト、維持費、トレーニングコスト - 機能的リスク:
品質、性能、使用頻度、修理のしやすさ - 物理的リスク:
使用上の危険性(刃物、電気、燃焼物、動力を持つ) - 時間的リスク:
配達、設置、立ち上げ、トレーニング、使用にかかる時間 - 心理的リスク:
選択ミスによる心理的苦痛、自分の信念やセルフイメージと合わない - 社会的リスク:
酒や煙草など社会的にイメージの悪い商品、服や靴など露出度が高く他人の目が気になる商品
「価格」は金銭的リスクに当てはまります。また「サービス詳細」「よくある疑問」はそれぞれ機能的リスクとして考えられます。「強み(売り)」は心理的リスクのセルフイメージの部分に当てはまるようにコンテンツを工夫しました。また、「コンバージョン後の流れ」は時間的リスク、心理的リスクとし、「利用者の声」は社会的リスクに当てはめることができます。

すべてのリスクを漏れなく入れることは難しいですが、このようにリスクの一覧と照らし合わせることで、足りないコンテンツや新たに必要なコンテンツがアイデアとして出てくることもあります。
3.改善施策の方針
さて、これらのコンテンツすべてをランディングページに載せてしまっては、どれが最もニーズが大きく、効果が高かったかなどをウェブ解析ツール上から判断することができません。そこで、図1の画面遷移が3つしか無かったフローを変更し、ランディングページから回遊できるようなページ構成にしてコンテンツを用意することにしました。
もちろん、ここで整理したようなコンテンツの内容を、ランディングページにまとめて掲載することも可能です。ランディングページに掲載した方がコンテンツも1ページで済むわけですし、コストも抑えられ(るようにみえ)ます。しかし、ここでコンテンツを用意したのは別の目的もありました。これはまた次の回で触れたいと思います。

4.テスト方法
今回はテストケースということもあり、ツールを利用して訪れたユーザーを3種類のランディングページへ自動的に振り分け、コンテンツの効果を検証できるようにしました。
1つは図のようなコンテンツ構造に変えたランディングページ、他の2つは、今までと同じ3ページ構成で、情報の表現方法を変えランディングページ内に詰め込んだもので実施をしました。
改善結果 ― コンバージョン数が倍増
結果は、この改善で実施した上図のランディングページからのコンバージョンが、3種類の中で最も効果が高く、以前のものと比較するとコンバージョン数は約2倍。ランディングページの直帰率は、約30ポイント下げることができました。これは非常に大きな改善だったと言えます。
実際、コンテンツを回遊していたユーザーの数は多く、ランディングページ上のCall-To-Action(興味喚起ボタン)を直接クリックしたユーザーと比較して、さまざまな情報を取得してからコンバージョンする訪問者が多いということが分かりました。
まとめ
前回、紹介したリスクを軽減するコンテンツ動線を作る考え方を、実際に行った事例を通じて紹介しました。
今回紹介した事例におけるアプローチは、実はこれだけではありません。この次の戦略がありました。その戦略については、次の2回を利用して考え方や実際の改善例を紹介していきたいと思います。