イベント主導型マーケティングで成約率を3倍以上に
続いて高橋氏は、一連のサイクルを改善させた先進的な企業の取り組みを紹介。前述の4つのプロセスのどこに課題を感じ、解決すべく取り組んだか、という点にも注目するように促した。
高橋氏が最初に取り上げたのは大手地方銀行。その銀行の取り組みは、次のようなものだ。
- 顧客と対話チャネルはテレマーケティングとダイレクトメールのみ。
- データベースが整備され分析も行われていたが、渉外・営業スタッフが分析結果を参考にしていなかった。
- マーケティングや営業のノウハウが属人化されスキルの平準化が図られていなかった。
- 金融緩和によって証券仲介や保険の窓口販売などの取扱商品は増えていたが、商品知識が十分でなく積極的な提案を実施できていなかった。
- 過去の取引履歴データから顧客ごとの『取引パターン』を分析・把握し、通常のパターンとは異なる取引が発生したときにすぐに変化を検知、さらに年齢や職業などの顧客属性を加味した分析により、就職・結婚・住宅購入・退職など顧客に起きた出来事(ライフイベント)を推察し、最適なタイミングで営業やコールセンターの担当者がふさわしい商品・サービスを提案することを可能とする分析環境を構築した。
「こうした仕組みを作ることで、成約率が10%になったそうです。仕組み化する前の成約率は平均3%くらいだったそうですから、3倍以上になったことになります」と高橋氏。ノウハウの共有・スキルの平準化という課題についても、システム化することで解決できたという。ワン・トゥ・ワンのマーケティングを徹底することで、収益に貢献するマーケティングへと変貌を遂げたのだ。
個別キャンペーンではなくキャンペーン全体を最適化――Commerzbank
次に紹介されたのはドイツのCommerzbankの事例。同社の取り組みは次のような内容だ。
- 1100万人以上の顧客を属性に基づきセグメント化しダイレクトマーケティングを実施していたが、消費者ローン/不動産ローン/資産管理などの複数のキャンペーンやチャネルで対象顧客が重複し、キャンペーン間で顧客の取り合いが起こっていた。
- 予算やリソースの制限を考慮しながら、効果を最大化できる『顧客』『チャネル』『キャンペーン』の組み合わせを自動計算し、包括的に最適なキャンペーン計画を立案する仕組みを構築。
- キャンペーン全体のROIを最適化できるよう、個々の顧客に対して正しい商品・正しいチャネルを選んでアプローチできるようになった。
- キャンペーン全体での投資対効果(ROI)が1.55倍に改善。
データベースを内製化してPDCAを高速化――Golfsmith International
続いての事例は、米国でゴルフ・テニス用品の小売を手掛けるGolfsmith International。顧客データの管理・分析をアウトソーシングし、店舗販売以外にも、インターネット・カタログ通販を行っている。
- 顧客データベース管理のアウトソーシング処理が非常に遅く、キャンペーンのPDCAサイクルを回すことができていなかった。
- キャンペーンのコンバージョンを特定するのに2-3ヶ月かかっていた。
- 全販売チャネル横断的な顧客の理解、顧客のセグメンテーション、およびダイレクトメールの反応率の向上を目的にSASを導入、顧客データベースの管理や顧客分析の業務を内製化。
- 自社でデータを扱えるようにしたことでPDCAのサイクルを高速化することに成功。
- サイクルが1カ月程度に短縮したことで機敏に対策を打てるようになり、キャンペーンのレスポンス率が10~60%向上した。