企業内の組織的な問題~iPhoneをつくれなかった日本企業
「日本企業はiPhoneやiPadをなぜつくれなかったのでしょうか?」
そう切り出した一橋大学 商学研究科の神岡太郎教授は、『最高のパフォーマンスを叩きだす、次の時代のマーケティング組織』と題したMarkeZine Day Premium 2010の講演で日本企業が内包する組織的な問題を指摘。日本企業がグローバルで戦えるマーケティング力を身に付けるには、しっかりとマーケティング・マネジメントを浸透させ、フレームワークを整えた次世代型の組織に変わっていかなくてはならないと訴えた。
冒頭の発言に続いて神岡教授は、iPhoneが登場する以前から、ある日本の携帯キャリアはスマートフォンに注目していたと明かす。
「いろいろな調査をしていたようですが、どうにも『スマートフォンが欲しい』とは消費者から言われなかった。ぼんやりと市場・顧客のことが見えてけれども、意志決定するのに十分な根拠のある情報が見えていなかったのです」
対してAppleは、市場・顧客の頭の中で顕在化しつつあったニーズを読み取り、独自に築き上げてきた“Appleの世界”に顧客を誘導。「商品そのもの=価値」ではなく、商品にサービスやプラットフォームを組み合わせて価値を生み出し、“Appleの世界”を実現させた、とその手腕を高く評価した。
iPhoneのケースでは、日本企業のどこに問題があったのだろうか。神岡教授は「企業として市場・顧客が本当に見えていたのか」と疑問を投げ掛け、市場・顧客の顕在的/潜在的なニーズを捉えられるよう、企業活動をシステマチックに結び付けて機能させることが重要なのだと説く。
“小さな足し算”では“掛け算以上の構造変化”についていけない
神岡教授は日本企業の抱える組織的な課題の1つとして、顧客・メディア・企業の関係についても例に挙げている。
「マス4媒体のオールドメディアと、インターネットなどのニューメディアがある。変化が大きいのはニューメディア側なんですね。それに対して企業側はどうかと言うと、従来のオールドメディアを基本にしたマーケティング組織のまま。オールドメディア向けに人員も多く配置されていますから、ニューメディアに予算を回そうとしても、大きな組織を守るため、だいたい反対されます」
もちろん、そのような問題が起こってしまっているのなら、企業は変化しようともする。ただし、その変化は少しずつ変わっていく“小さな足し算”。だが、ニューメディアで起こっている変化は足し算では追いつかない“掛け算以上の構造変化”なので、日本企業の対応が後手に回っていると警鐘を鳴らした。
マーケティング面における日本企業の問題を例示した神岡教授は、続いて次のような問題点に触た。
- 「マーケティング」の定義があいまい
- “現場マーケティング”に陥りがち
- 属人的で組織的なマーケティングができていない
それぞれ、どのような弊害を招いているのだろうか。
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