ソーシャルメディアの台頭で消費行動モデルにも変化
ソーシャルメディアの存在感が大きくなるにつれて、企業にとって“分析力”の重要性はますます増してきている。ただ、ソーシャルメディアの分析は一筋縄には行かず、新たな課題が生み出されてしまっている。そして企業には、そのような課題を解決するため、新たな取り組みが必要になっている――。
MarkeZine Day Premium 2010で登壇したSAS Institute Japan株式会社のビジネス開発本部 CIグループ部長 高橋昌樹氏は、講演の冒頭でこのように述べた。ソーシャルメディア時代に企業が分析力を武器にして力を蓄えるには、どのような課題が待ち構えているのか。いくつかの先進的な企業の事例を紹介しながら、各社が課題をどのように克服していったのかを解説した。
高橋氏は、ソーシャルメディアが力を持ってきたことで消費者の購買行動プロセスにも変化が起こっていることを、調査報告などを交えながら紹介した。近年、eコマースでの購買行動プロセスとして提唱されている『AISAS(認知→興味→調査→購入→共有)』は、従来の『AIDMA』などのモデルに較べ、実際の使用感といった口コミ情報を購入前に調査し、購入後に今度は自分の口コミを共有しようとするところに特徴があるという。
「このような、フィードバックがある中で、顧客が調査をしながら購入判断をするようになったのが最近の消費行動の在り方。消費行動自体をソーシャルメディアが変えてしまっているのです」と高橋氏はソーシャルメディアの影響力を強調した。
ソーシャルメディアがもたらした分析上の課題
ソーシャルメディアの普及により、企業と顧客の接点が多様化し、顧客が情報や判断力を持つようになった。このことは企業にとって、良い面だけでなく、新たな課題を生み出している。
良い面として、まずは顧客接点が増え、企業が顧客と直接コミュニケーションを取れるようになったことが挙げられる。広告コストなどの費用をほとんど掛けることなく、相互的なコミュニケーションを行ったり、今までコンタクトできていなかった顧客や見込顧客に幅広く情報を届けることができるようになった。
一方で裏を返せば、顧客との接点が増えたことで管理する労力も増え、コントロールが難しくなっていると高橋氏はその課題を指摘する。さらにデータ分析に目を向けると、情報量が増えたことでデータの管理・分析が今まで以上に困難になっている。特にソーシャルメディアの情報はほとんどがテキストデータなどの「非構造化データ」であるため、構造化されたデータと違いそのまま分析することはできないといった問題もある。
「今までは企業にあるデータと言えば、経理データや販売・在庫データなど、データベース内の構造化データばかりでした。テキストデータを使って、お客様との関係性をどう築いていくのか。そういったところで新しい取り組みが必要になっています」(高橋氏)
こうした状況下、マーケティング部門が果たすべき役割とは、どのようなものなのだろうか。高橋氏は、企業が顧客を創造し続けるためには、
- データを収集・管理する
- 顧客を分析する
- 顧客と対話する
- 効果を測定・評価する
といった4つのプロセスからなる一連のサイクルを回すことが重要であると述べた。これからのマーケティング部門はこうしたサイクルを推進する中心的な役割を担っていくことが求められている。