リスティング中心の広告出稿を検討し、バナー広告の効果を再発見
ロゼッタストーンは31言語を学べる外国語習得ソフト。ユーザの発音を解析してフィードバックしてくれる機能を持つ。スクールに通わずとも会話力を伸ばせるユニークな製品だ。
一方、ユニークな製品ではあっても、選べる広告手段は一般的な語学教材やスクールと同じく、リスティング広告とアフィリエイト広告。
「リスティング広告のパフォーマンスが良く、“これさえやっていれば間違いないという広告”だった」(ロゼッタストーン・ジャパン株式会社 コンシューマー事業部 マーケティングアソシエート 藤本静子氏/写真左)
しかし、主力となる検索ワードは競合の多い「英語」「英会話」だったため、クリック単価は100円以上になってしまっていたという。
「アフィリエイト広告とリスティング広告を主な集客経路にして、本当によいのかという疑問はいつも抱えていた」(藤本氏)ものの、費用対効果を追い求めるのならそれ以上の選択肢はない。パイの拡大を図ろうにも費用対効果に見合わないと考えていたそうだ。
そんな折、バナー広告をテスト的に実施してみたところ、「ユニークユーザ数が増えたことで、ぼんやりとですが良い影響を感じとれました。購入より前のフェーズで貢献した広告の効果、つまり広告の間接効果も大切そうだとは思っていましたが『思っていた以上に重要なのでは』というのが見えてきたのです」(藤本氏)
そうなると、バナーを出稿したことで各フェーズで何が起こったのかを明らかにしたいところ。ところがその肝心の間接効果を正しく測定できる環境が十分に整っていなかったという。
ロゼッタストーンがその課題を解決するために導入したのは、ビービットの提供する広告効果測定ツール「ウェブアンテナ」。導入して分析してみた結果、バナー広告が想像以上に貢献していたことが判明したのだ。
ニーズを喚起するバナー広告の効果を正確に評価
それでは、ここからロゼッタストーンがバナー広告の効果を正しく把握する際の課題を紹介していこう。
ロゼッタストーンでは従来、アクセス解析ツールと各広告の管理画面などを使って広告効果を測定していた。解析ツールではセッションが切れると広告効果のカウントも切れ、次回の来訪時に踏まれた広告効果だけがカウントされていた。つまり、複数の広告を踏んで何度もサイト来訪したユーザがコンバージョンに至った場合、ニーズを喚起する段階や競合製品との比較検討の段階で貢献した広告の効果は無視され、購入の直前にクリックした広告だけが評価されていたのだ。
また、複数のツールからデータを引っ張っていたことにより、1つのモノサシ・同じ基準で広告効果を比較評価することが難しかった。
そのために、以前から「語学を学びたい」というニーズが顕在化する前の段階からアプローチして、自社製品のユニークさを伝える必要性を感じていた。そこで新しくツールを導入しようと考え、いくつかのツールを検討した結果、ウェブアンテナを導入したのだった。
「ユーザは購入に至るまで、どんなフェーズをたどるのか。以前から『1回連れてきただけで購入していただく』ではないと思っていました。私たちとしては、とにかく人を連れてきて製品を理解してもらう、実際に『欲しい』と思ってもらう、快適に製品を購入してもらう、と目的別にフェーズを分けて考えていましたが、ユーザの動きがはっきり見えていなかったのです。そこがウェブアンテナで見えるようになったのは非常に大きい」。
同事業部ディレクターの鈴木知行氏(写真右)は導入の意義をこのように語っている。
今後はバナー広告との接触から購入までのユーザの動きを精緻に分析
これまで見えなかった購入に至るまでの動きが分かるようになった。潜在層にアプローチした成果を正しく把握できるようになったので、鈴木氏、藤本氏の両氏とも、今後はバナー広告の効果を正しく精緻に分析していきたいという。
「バナー広告が効果的なことは分かりましたが、試行錯誤を始めたばかり。どんな媒体で、どんな種類のディスプレイ広告を出稿すると、初回/最終接触等のどのフェーズに貢献するのか。これからPDCAを回すことで、そこを精緻につかまえていこうと思います。ラストクリックだけにフォーカスするのではなく、本当の意味での広告効果を評価していきたいです」(藤本氏)
「風が吹けば桶屋が儲かる。そこまでは実証できましたが、風が吹いたら次に何が起こるのか、なぜ桶屋が儲かるのか、まだ完璧に把握できているわけではありません。ユーザの動きを精緻に捉えた上で、サイトでのユーザとのコミュニケーションを最適化するところまで踏み込んでいきたいですね」(鈴木氏)
1日分の業務の大幅削減 ~ 複数代理店の管理機能を利用
また、ウェブアンテナ導入以降では、集計・運用業務が楽になるという副次的な効果も得られたという。
「約1日分の業務量が無くなりました。1日置きくらいでレポートを作成していたのですが、複数のツールを使って情報を集め、代理店にも一部の業務を協力してもらっていました。でも重要なデータは、代理店の方にそのまま全部見せるわけにはいきません。私が手作業でアクセス解析ツールなどから抽出し、加工して渡していました」(藤本氏)
それが導入以降は、1つのツールで必要なデータをすべて集められるようになった。ウェブアンテナ独自の代理店管理機能で閲覧制限を掛ければ、該当広告によるパフォーマンスなど、必要なデータだけを切り出して見せることもできる。レポーティング業務の手間を大幅に減らすことができたそうだ。「代理店の方も私のデータを待たず好きな時に作業できるようになりましたし、私の手間も減りました」と藤本氏。
広告効果を測定するためのパラメーターの発行・管理も担当していたが、導入後はそこも代理店に任せられるようになったのだとか。
「どんなに優れているツールでも、使いこなせないと意味がありません。使いやすいツールであることはもちろん、自社の戦略を理解して、適切にバックアップしてくれる人が居ることも重要だと思っています。その点でビービットは当社と問題意識を共有してくれて、測定方法を丁寧に設計してくれました。Webコンサルティングで多くの実績を持つ同社の対応は的確でした」(藤本氏)
ソーシャル等の効果もウェブアンテナでまとめて効果測定
ウェブアンテナは大幅なバージョンアップにより、リスティング、アフィリエイトといったネット広告だけではなく、ソーシャルメディアやお気に入りからの流入についても含めた、全ての流入経路の効果を測定できる予定だ。
今回のウェブアンテナの大幅アップデートを鈴木氏は次のように評価する。
「最近はソーシャルから入ってくるユーザの動きがナチュラルになっています。それがトラッキングできないのは致命的なのではないでしょうか。ソーシャルの効果を測定できるフリーのツールもあります。でも同じプラットフォーム上で測定できるのは魅力的です」
バナー広告を正しく評価することに加え、ソーシャルメディアをめぐる取り組みにも今後活用したい考えだ。