戦略に方程式がある!?
何事も「努力さえすればいい」と思っている人は、もはや、いないのではないでしょうか。結果を出すには努力ももちろんですが、それ以上に「どのようにコトを起こすか」という戦略が決め手となります。今回は、いよいよその戦略をつくります。戦略づくりの準備はいいでしょうか? 下記の項目をチェックしてみましょう。
- 360度マクロ環境分析によって、チャンスとリスクの洗い出しはできましたか?
- 市場環境分析によって、3Cの視点を生かして、SWOTの把握はできましたか?
- 戦略を立てようとしている案件の「究極のゴール」は、明確にイメージできましたか?
- そのゴール達成に向けて、今回つくりあげる戦略の目的は明確にイメージできましたか?
もし、準備が不十分と思われるようであれば、もう一度、前回、および前々回を確認してください。今回のお話は、戦略には基本方程式があるということです。これをぜひ把握しておいていただければ、自分がつくろうとしている戦略の背骨がくっきりと見えてくると思います。高校で物理を選択受講した方は、「 F = m・a 」という方程式を習ったことを覚えているでしょうか?
そうです、これは古典力学の基本となる、ニュートンの運動方程式です。質量 m の物体が、力 F を受けるとき、その物体には受けた力に比例した加速度 a が生じるということを示している方程式です。 別の言い方をすると、「ある質量 m の質点に対して、加速度 a がかかっているとき、ある質点にかかる力Fがと釣り合う」ということになります( m は大きさだけで方向をもたないスカラー量ですが、F と a は大きさに加えて方向も持つベクトル量であるので、太字で表しています)。
実は、戦略にも、これと全く似た基本方程式があります。名づけて、「戦略方程式」です。
(目的) = (ターゲット) × (ターゲットに対して意図する行動)
この方程式は、「しかるべきターゲットに対して、こちらが意図する行動をとってもらうことで、目的が達成される」という戦略の基本的な骨格を表しています。戦略とは、ターゲットとなる人に作用してはじめて、結果を生み出すものだということを示唆していることが、この方程式の最も奥深いところだと言えるでしょう。
特に、「戦略方程式」をニュートンの運動方程式と見比べてみると、「目的」は運動方程式の F に、「意図する行動」は加速度 a に取って代わる存在のものであり、両社とも、プランニングしている戦略の方向性を位置付けるベクトル量となっていることも似通っています。すなわち、戦略づくりの前に設定した「目的」のベクトルを確認して、ターゲットに対する「意図する行動」を設計するのです。さらに、「意図する行動」をとってくれる「ターゲット」の数によって、「目的」の達成度を測ることができる、と読み解くと、一層この方程式の意味合いがご理解いただけることでしょう。
しかし、「戦略方程式」を組み立てることには、大きなハードルがあります。目的に合致した「ターゲット」をいかに選定するかという課題と、そのターゲットに適切な「意図する行動」をいかに発見するかということです。これに関しては、後ほど触れることにいたします。
このように方程式に則って戦略を分解して考えると、戦略の骨子を非常にシンプルに組み立てることができますが、さらに、ターゲットとのGIVE & TAKEの関係を構築することで、この方程式の効力を高めることができることに着目しましょう。その関係性は、私たちが、行動との引き換えとなる心理変化(=GIVE)をターゲットに与えることではじめて、私たちが意図する行動を取っていただく(=TAKE)ことができるということです。「戦略方程式」の2つ目のハードルは、このGIVE探しと言っても過言ではないのです。
ちょっと概念的なお話が続いたので、具体例を示しましょう。