本質的なファン育成を促進する3つの土壌
ここから、岡部氏はWebビジネスの環境が変化していることを指摘し、そのためにファンの育成に重きをおいたマーケティングが重要になりつつあると強調。外部要因としても、次の3つの土壌が育ちつつあるとした。
Webビジネスの成熟
これまでは、比較的ITリテラシーが高めで、20代~40代を中心としたターゲットに絞ってマーケティングを行うケースが多かったが、最近ではWebマーケティングも成熟のときを迎え、従来のユーザー層だけでは、対前年比の伸び率を確保しにくくなっているという。
オンラインショッピングへの抵抗がなくなり、生活に根ざすインフラ化した今となっては、リテラシーや年齢に関わらず、全方位へ向けたマーケティング戦略が求められている。
ユーザの意識の変化
Webでの購買行為が日常的になった今、リアルビジネスのような親しみや感動をWebに対しても求める傾向になりつつある、と岡部氏は言う。
具体的には、Webは既に「正確性」「網羅性」「検索性」「利便性」といった、価値の提供を行っているが、リアルビジネス上では普通に提供されている「個別の対応」「具体的な相談」「親しみ」「感動」といった、新たな要素がWebにおいても求められはじめているというわけだ。
テクノロジーの変革
ファンとつながる基盤であり、ファンがファンを呼ぶ土台となる「ソーシャル」の浸透。PCを片手で持ち歩ける環境となり、ネットの行動がリアルの行動に結びつきやすくなる「マルチデバイス」の普及。オンライン上ですべての情報を共有できる基盤となる「クラウド」。
これら、3つのトピックが重なり合い劇的な変化が起こっていると岡部氏は言う。そして、これらの変化により「オンラインとオフラインが地続きになる」という現実はまさに迫っているというわけだ。
岡部氏は、3つの土壌の変化をいち早く捉え、マーケティングに取り入れて成功した事例として、ザッポスの例を紹介。裁量の幅が広いコンタクトセンター、「幸せのデリバリー」と呼ばれる「忘れ難い体験」の提供、在庫切れの場合には他社サイトを案内するホスピタリティなど、オフラインで商店が行っているサービスを、オンラインの利便性はそのままに、とことんやりつくした事例だ。