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MarkeZine Day 2011 Westレポート(AD)

巨大グループ企業の事例で見る、ニュースリリースを活用した新しいマーケティング戦略とは

 6月24日に開催されたMarkeZine Day 2011 OSAKAにて、「マーケティングに効くネットPR~ニュースリリースを活用する」と題し講演が行われた。前半は、株式会社ニューズ・ツー・ユー 四家正紀氏からマーケティング戦略におけるPR活動の重要性が高まっている点についてが紹介された。後半は、阪急阪神ホールディングス株式会社グループ経営企画部 小谷晃一氏による同社のニュースリリース活用の紹介となった。

マーケティング戦略の中におけるPR活動への重要性が増加

 ニューズ・ツー・ユー社は、ニュースリリース専用ポータルサイトの「News2u.net」の運営とともに、News2u.netと主要情報ポータルサイトにニュースリリースを一括で掲載登録できるASPサービス「News2uリリース」を提供している。冒頭、四家氏は「マーケティング戦略の中におけるPR活動の重要性がクローズアップされるようになってきた」と強調した。

 そもそも、企業のPR活動のひとつであるプレスリリースと、ニュースリリースの違いは何なのだろうか。「この違いをはっきりと理解している企業担当者は少ない。『プレスリリース』はプレスに対して発信する情報であり、『ニュースリリース』はプレスも含んだ、社内・社外すべてのステークホルダーに対して発信する情報だ」と四家氏は解説した。

株式会社ニューズ・ツー・ユー 四家 正紀 氏
株式会社ニューズ・ツー・ユー 四家 正紀 氏

 続いて四家氏は従来型の広報活動について解説。従来の広報活動はマスメディアへのアプローチを中心としたメディアリレーションに重きが置かれてきたと指摘。また、メディアと関係を構築しても、なかなか自社の情報が紹介されないという事実があり、取り上げられたとしても編集のフィルターがかかり企業側が意図しない情報を掲載されることもあるという。そして、マスメディアに掲載されると人々に与える影響力は確かに大きいが、エンドユーザーに情報が届くのはその場限りとなる。

 「ネットが普及したことで、ユーザーは自分たちの好きな情報を自由に取得できるようになり、その影響から嗜好が多様化している。こういった状況にマスメディアは答えられない状況になっている」と現状を解説した。

 一方、ニュースリリースは企業が届けたい情報を、自社の望むタイミングで配信することが可能だ。事実を伝えることが目的なので、インパクトは少ないかもしれないが「自分たちが伝えたい情報を事実(ファクト)に基づいて発信できます。また、ニュースリリースを見る方はブランドや製品に興味のある方なので、ネットでの情報取得が進んでいる現在においては非常に有効な施策だと言えます」とした。加えて、ニュースリリースの場合1つの情報に対して独自のURLを持つため、Twitter、Facebookといったソーシャルメディア上での情報提供にも向いているという。

 「ソーシャルメディアが浸透することで、誤った情報に触れる機会が増えてくるのではと予想している。そういった場合でもニュースリリースを発信しておくことで、ソーシャルメディア上でも正しい情報をユーザーへ提供することが可能となる」(四家氏)。

 「プレスリリースとニュースリリース、どちらかだけでいいというわけではない。それぞれの特長を把握した上で、多様化するユーザーのニーズに対応していく必要がある」と四家氏は語り、ニュースリリース活用の成功企業として阪急阪神ホールディングス社の小谷氏を紹介。マイクを譲った。

ニュースリリースを活用していく上での課題

 阪急阪神ホールディングス社は、鉄道/マンション/ホテル/球団運営/ショッピングモール/コンビニエンスストア/旅行など、100社ほどの連結子会社を抱える関西の大手グループ企業の親会社だ。

 小谷氏は同社のグループ経営企画部にて、グループ会社全体のPRを担当する調査役。各社によってやり方も異なり人員の差もある中で、どのようにニュースリリースの情報を集めているのか。導入の経緯から実務的な内容まで詳しく紹介された。

阪急阪神ホールディングス株式会社 小谷 晃一 氏
阪急阪神ホールディングス株式会社 小谷 晃一 氏

導入のきっかけ

 2006年12月、阪急交通社のウェブ販売促進課にてNews2uを契約し、1年間で11件の記事を掲載した。当時、小谷氏はオウンドメディア以外でいかに露出を増やせるかで悩んでいたと語り、「プレスリリースと違って、キャンペーン情報などマスに出すほどではない情報も掲載できることが魅力的だった」(小谷氏)。

 また、グループ全体で見たときに、会社の規模や業態の違いによって、PR活動の取り組みに大きな差が出ていた。グループ各社のPR活動を底上げし、グループ全体としてのブランド構築を目指したいという理由から、阪急交通社よりNews2uを紹介。2009年10月より、阪急阪神ホールディングスとして、News2uの活用を開始した。

 「ホールディングスの管轄に移管することで、グループ会社すべての情報発信が可能となり、情報量増が期待された。掲載できる情報量が増えれば、要員の確保が可能となり継続的にPR活動ができる環境となる」(小谷氏)。

 ホールディングスで導入した結果、社会貢献に関する情報やこれまであまり出せていなかったセミナー情報など、グループ会社の様々な情報をインターネットへ情報配信できるようになった。イメージとしては、BtoB企業の方が直近で数字が出やすいという意外な結果も。検索エンジンで、時には1位表示されることもありSEO効果も実感しているという。

 さらに、グループ各社から情報が集まることで、記事件数も激増。その数は合計約780件にものぼり、1か月換算で40件ほど出せるようになった。1件あたりの平均閲覧件数が約390件というから、その効果は大きい。

 「多いところでは1社で1か月に10件出しているところもあるそうなので、それに比べたらまだまだ。今後もっと増やせるようにしていきたい」と小谷氏は語る。

 アクセスの多いリリースは数か月から1年にわたり、継続的にアクセスされる傾向がある。リリースの内容にインパクトがあるケースをのぞき、クチコミのサイトなどに掲載されたり、Googleなど検索結果で上位表示されたりしている場合だ。「従来のファックスなどによるプレスリリースに比べ、露出期間が長いため、多くの方に見ていただける。やはりインターネット上でのPR活動は、無視できない」(小谷氏)

今すぐ役立つ!リリース掲載作業、運用上の豆知識

 次に、運用上の豆知識として、ニュースリリースの元となる情報をグループ企業から集めて配信する際に、小谷氏が配慮している注意点が紹介された。

 こういった実務レベルの工夫はもちろんのことながら、何よりも大切なのは各担当者との信頼関係だと語る小谷氏。100社を超えるグループ会社の中には、独自にマスコミとのパイプがあり、ニュースリリースはプレスリリースを転用するだけという企業もあれば、そもそも専任の広報担当者がおらず、ニュースリリースを書けといわれても、何から始めればいいのかわからないといった会社もあるという。

 担当者の業務負荷にも配慮をしながら、各社の実態に合わせた運用を提案していくことが重要だ。各社・各担当者の協力を得て、良い情報をあげてもらうためには、人間同士の信頼関係が欠かせない。そのために同社が行っている取り組みを見ていこう。

メーリングリストの活用

 同社では、各社の担当者約250名を登録したメーリングリストを作成している。月次でメールマガジンを送り、その中でNews2uのアクセスランキングを発表したり、PRに関する豆知識を共有したりしているのだ。

講演資料より掲載(以下、同)
講演資料より掲載(以下、同)

社内セミナーの開催

 毎回グループ各社の担当者70名~100名が参加する、社内セミナーを年4回実施。セミナー後に懇親会を開くことで、会社の垣根を越えた横のつながりを生み出している。

 

露出機会の提案(ラジオ)

 同社が保有するFMラジオの番組内で、グループ各社の商品やイベント企画担当者が出演、PRする枠を提供。

情報入稿ファイルの提供

 各社で書き方にばらつきが出ないよう、内容によって使い分けられる6種類(新商品、新サービス、告知募集、企業動向、調査・報告、技術・開発)のExcelフォーマットを用意している。

 ニュースリリースの活用に向けて、社内外に対し様々な取り組みを行っている同社だが、「記事の書き方といったスキル面、効果の定量化などの効果測定面でも、まだまだ不十分。1つの話題で切り口を変えたリリースを作成してリリースの量を増やしていくなど、各社へもっとノウハウ共有をしていきたい」と今後の意気込みを語り、小谷氏は本講演を締めくくった。

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

1983年生まれ。成蹊大学経済学部卒業。大学卒業後、大手IT企業にてレンタルサーバーサービスのマーケティングを担当。その後、モバイル系ベンチャーにてマーケティング・プロダクトマネージャーを務める傍ら、ライター業を開始。旅行関連企業のソーシャルメディアマーケターを経て、2011年1月Writing&Marketing Com...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2011/07/27 11:00 https://markezine.jp/article/detail/14084