なぜ今ゲーミフィケーションは注目される?
第1回でも紹介したように、Googleトレンドを見ると、去年の年末頃から[ゲーミフィケーション(gamification)]の検索件数が急速に伸びています。ただ、くら寿司の事例など、「ゲームが持つユーザーを楽しませる仕掛けを活用しよう」という発想は、何も新しいものではありません。しかし、そのような発想を実現する上で、過去には様々なハードルがあったことも確かです。
- そんなことに投資して本当に意味があるのか?
- どのように実現すればいいのか?
- クチコミなんかよりも広告やDMの方が、効果があるのではないか?
Webの浸透は、こうしたハードルを下げることに大きな役割を果たしてきました。Web上での施策は全て効果測定が可能であるため、新規性の強い施策でもチャレンジすることが容易になりました。また、Webの浸透は、「個人のエンパワーメント」という点で情報流通の概念を大きく変えることにつながっています。
特に、この10年ほどの経過を見ていると、誤解を恐れずに言えば「Webの大衆化」が進んできていることは明らかです。ここで言う「大衆化」とは、いわゆる“ITギーク”でない人の日常生活に、Webが織り込まれるようになってきたという程度の意味です。
そうすると、Webの利用方法にも当然変化が生じます。昨今のソーシャルメディアの隆盛、あるいは、使い方の気軽さ・シンプルさ、人間同士のコミュニケーションに重きを置いたサービスの広まりは、Webの大衆化によって必然的に起こったことであると言えるでしょう。
結果として、誰にとってもWeb上で過ごす時間が必然・当たり前になるにつれ総閲覧時間が増え、さらにモバイルインターネットの普及が、こうした流れに拍車をかけています。日本国内の状況を見れば、モバイルインターネットとSNSの親和性の高さは明らかです。スマートフォンの普及が進む世界の潮流としても、今後、日本のように手のひらの中でインターネットを利用する方向に向かうでしょう。
最もソーシャルとの融合に成功しているゲーム領域
Webサービスにソーシャル性を組み込むことが当たり前のことになりつつある現在、“それによって何が生まれるのか”ということが、様々に模索されています。「ソーシャル○○」という言葉は、まさにバズワード的にあらゆる領域で見られるようになりました。
しかし、非常に大きな注目を集めながらも、実際にソーシャル性を活かすことができている領域がほとんど無いというのも、また事実です。はたしてTwitterをメルマガの代わりに使い、Facebookページをホームページの代わりに使い、「いいね」ボタンを設置すればソーシャル性を活用することになるのでしょうか? 何か違う気がしていないでしょうか?
実際、そうしたサービスを導入している企業の方に話を伺っていても、同様の違和感を覚えているケースがかなり多いようです。そうは言っても、これまで実施してきたメールマガジンなどの一方通行の施策にも限界を感じており、何か打開策はないかという模索が続いているのが現状です。
こうした中で、ソーシャル性を非常に有効に、もっと言えば“巧妙に”とさえ言ってよいほど活用し、大成功している領域があります。皆さんもご存じの「ソーシャルゲーム領域」です。Webの大衆化という流れも踏まえ、ソーシャルネットワークというプラットホームを巧みに使うことで、これまでにゲームをしなかったユーザー層を獲得し、一気に市場を拡大しています。
もちろん、業界にいる身として「しょせんゲームじゃないか」というような声があることは、重々理解しています。しかし、第1回でも述べたように「ソーシャル性活用のノウハウの塊」としてソーシャルゲームを眺めることで、たくさんの知見が得られるということにも、目を向けてみてください。TwitterやFacebookを本来どのように活用すべきか、というヒントが、そこには明解に、かつ具体的に示されています。
ぜひ、一度そのような観点でソーシャルゲームを遊んでみてください。様々な発見があるはずです。