動画も音楽も“月額サービス”で視聴する時代に?
アメリカの動画配信サイト「Hulu」が、日本に進出。月額1480円で映画やTVドラマを見放題というサービスを提供開始した。アメリカでは「Netflix」というサービスが世界で2500万人以上の会員を獲得。Hulu以上に存在感を示している。こちらも月額課金で動画が見放題という同種のサービスが主軸だ。
少なくともアメリカでは、動画はタイトル別に購入して保管しておくものではなく、サービスを利用して見たい時にアクセスするものになりつつある。日本の動画業界ではバンダイチャンネルが「月額1000円見放題」に料金モデルを変化させたが、このトレンドは次に、音楽業界で広まっていくのかもしれない。
というのも、Apple、Amazon、Google、SONYなどの大手企業が、続々とクラウド型の音楽サービスを発表。このうちAppleは10月12日から音楽だけでなく、各種デジタルデータをクラウド上に保存できるクラウドサービス「iCloud」をローンチした(日本ではJASRAQの反発により、クラウドからの音楽配信の実現は難航しているもよう)。Amazon、Googleのサービスも同様に、「購入した楽曲をクラウドにアップして、どこからでもアクセスできるようにする」というコンセプトだ。あくまで自分の所有している音楽をクラウドから配信するサービスなので、NetflixやHuluとはコンセプトが異なるサービスと言えるだろう。
一方、SONYは軸の違うサービスを出している。同社の「Music Unlimited powered by Qriocity」は、月額課金で約600万曲を視聴できるようになる。現在はアメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどでサービスを展開。Android端末に加えてプレイステーション3、ブラビア、VAIOなどのSONY製端末で利用できるようになっている。
だが、ひょっとすると名立たる企業を差し置いて、新興ベンチャーの音楽サービスが音楽業界の「Netflix」になる可能性が出てきた。そのサービスが今回取り上げる「Spotify」だ。
有料会員は200万人を突破、アメリカではサービス開始1カ月以内で17.5万人が有料会員に
Spotifyは2006年に設立された企業。2008年から同名の音楽サービス「Spotify」を始動し、アメリカ、イギリス、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、スペイン、オランダ、フランスでサービス提供している。
SpotifyはP2Pを組み込んだストリーミング技術で、1500万以上の楽曲を配信。1万曲以上の楽曲が毎日追加されているという。しかも、UNIVERSALやEMI、SONYにWARNERなどの主要音楽レーベルと契約。有名アーティストの楽曲も合法的に視聴できるようになっている。
Spotifyの利用プランは3種類。広告が入って利用制限も付くものの無料で聴ける「Spotify」プランと、無制限に視聴できる月額4.99ドル(アメリカ版の料金)の「Unlimited」プラン、そしてモバイル端末やオフライン環境でも利用できるようになる月額9.99ドルの「Premium」プランだ。
音楽業界の情報サイト「Music Ally」によると、Spotifyの有料プランである「Unlimited」か「Premium」を利用しているユーザー数は9月時点で200万人以上。6月時点では154万人だったが、2カ月半の間に50万人以上が有料プランに加入したようだ。
中でも7月14日にサービス開始したアメリカでの伸びが貢献。Dow Jonesが運営するIT情報サイト「AllThingsD」は、1カ月も経たないうちに「Spotify」プランを含めると140万人、「Unlimited」「Premium」だけでも17万5000人の会員が増えたと伝えている。
さらに調査会社comScoreのレポートによると、2011年3月時点でSpotifyへのユニーク訪問者数は全世界で1100万人。2年前の200万人から5.46倍に増えたとしている。
ここに来て急成長中のSpotify。しかも恐るべきことに、調査会社Analysys Masoのアナリストであるマーティン・スコット氏の見立てによると、2010年の段階で既に8500万ドルの売上があったようだ。それに対して経費は7800~7900万ドルほど。内訳を見ると、音楽レーベルへの著作権料として6500万ドルが支払われ、運営費が1400万ドルほどだったと見られている。つまり、600~700万ドルほどの黒字を既に出しているわけだ。
著作権料の支払い方法については、非公開にされている。ただ、音楽SNS「Pledge Music」を運営するベンジー・ロジャース氏のブログでは、1曲再生されるたびに「$0.00077601」だけの収益になると明かされている。1ドル稼ぐのに1288回の再生が必要になる計算だ。
一方、英the guardian誌のブログの中には、「UNIVERSALやSONYといった大手レーベルはインディーズのレーベルよりも良い条件で対価を受け取っている」とする投稿も見受けられる。