状況が複雑化する中、Webサイト構築・運営を成功に導くカギとは
Webサイトを取り巻く状況は、ますます複雑になりつつある。集客手段としてはソーシャルメディアという新たなチャネルが登場し、スマートフォンやタブレット端末の普及で閲覧される環境も多様化。結果として、Webサイト担当者の業務量も増加してきている。
そのような状況下、Webサイトの構築・運営を成功させるためには、どのような視点を持つべきなのだろうか。アドビシステムズ株式会社は11月9日、「アドビ デジタルマーケティング 顧客満足をビジネス成功に導くWeb戦略 ~CMSから顧客中心のWeb Experience Managementへ~」と題したセミナーを開催。会場に集まった企業のマーケティング担当者などに向けて、Webサイトの構築・運営に役立つ最新トレンドなどを披露してくれた。
サイト運営で重要なのは「集客」と「訪問者の満足」
セミナーではまず、オンサイト株式会社 代表取締役社長の岸謙一氏が登場。岸氏はリクルートで住宅領域のネット事業戦略策定、フリーペーパー関連の事業立ち上げなどに携わった後、ライブドアに移籍してポータルサイト担当の執行役員副社長を務めた人物。現在はオンサイトの代表として、さまざまな企業の所有する130ほどのサイト運営を請け負っている。
登壇した岸氏は、自身の経験からサイト運営を成功に導くためのポイントは2点に集約できると主張。集客と訪問者を満足させることに気を配るべきだと訴えた。
そのうちの集客面について、現状は「カオスな状態になっている」(岸氏)という。検索エンジンや広告以外にも、ソーシャルメディアや口コミサイト、動画サイト、まとめサイトなど、さまざまなサイトを経由して来訪するユーザーが増え、複雑化している。よって「自社のネット上におけるプレゼンスをどうやって上げていくか」が課題になっていると岸氏は分析した。
集客に関する最新トレンドについては、「検索」「ソーシャル」「モバイル」の3つの観点から解説。注目すべき動向として次のような事例を取り上げている。
検索
- 自社サイトのフリーワード検索で使用されたワード/検索結果画面を静的化して、ロングテールからの集客を狙う。
- 注目度の高いイベントのスポンサーになり、ロゴ/社名からのリンクなど、優良なリンクを獲得する。
- ソーシャルで注目を集めるようなアンケート調査を実施。その結果を取り上げてもらえるよう、アルファブロガーなどに直接依頼する。
- 自社サイト以外の提携サイト、アフィリエイトサイトなどを総合的にマネジメントして、検索結果画面における占有率を高める。
- 自社の事業に関連する専門情報サイトを構築し、手間を惜しまず優良なコンテンツを追加する。
ソーシャル
- SEO目的であっても、とりあえずTwitterやFacebookを始めてみる。
モバイル
- スマートフォンなど、モバイル経由の流入が増えているため、モバイル向けサービスをやっていなくても、自社サイトのモバイル対応・最適化を進める。
- foursquareのようなサービスを使い、モバイルの特性を活かしたプロモーションに挑戦する。
「訪問者を満足させる」コンテンツのそろえ方
集客関連のトピックスに続いて、岸氏は「訪問者をどうやって満足させるか」という点について言及。そのためには「一言で言うと、その人に必要なコンテンツを出す」ことに尽きると断じている。
「その人に必要なコンテンツ」とは、欲している情報か、気づきを得られる情報のことだと岸氏は説明。そうした情報をそろえるために、システムと編集の両面から日々、努力を積み重ねることが必要だとし、システム面と編集面で、それぞれ次のような施策が考えられると例を挙げた。
システム面
- ASP型のレコメンドエンジンを導入。ECサイト以外であってもレコメンドは有効で、「このページを見た人は、このページも見ています」と薦める手も考えられる。
- LPOエンジンを使い、1 to 1で動的にページ内容を変更する。例えば埼玉県のIPアドレスからアクセスされた際には、その地区の情報のみを表示するように設定する。
編集面
データ分析に取り組み、コンテンツ群をブラッシュアップする。ただし、その場合は以下の2点について注意が必要になる。
- PVが多い記事が支持されているとは限らない。検索エンジンでたまたま上位に表示されてPV数が増えることもある。行動解析で詳しく分析してみることが重要。
- データ分析だけでは本当に用意すべきコンテンツを見落としてしまうことも起こり得る。「本来やるべきことは何か」と考えて展開していくことが大切。
サイト構築・運営にとって必要となるものは「機動性」
講演の最後に岸氏は、理想的なサイト構築・運営の環境にとって必要となるものは「機動性」だと指摘。サイト運営は地味な作業の連続になるが、スピーディーに手数を増やしていくことこそがサイトの評価を上げて集客を伸ばし、最終的には業績にまで影響を与えることになるとした。
機動性を発揮できるようにするためには、サイトや企業の規模、企業文化、すべてを業者任せにしようと考える担当者の意識が障壁になり得るという。
規模の問題については、ドメインとシステムを本サイトから完全に独立させたサイトを新規に立ち上げることで機動性を確保できた企業がかなりあると岸氏は紹介。
また、「とりあえずサービスを作る時には70%の出来でもいいから世の中に送り出せ」という文化だったライブドア時代の経験から、世の中のフィードバックを重視するように考えを切り替えるよう促した。
そして、サイト運営者の業務量は非常に多くなっているが、CMSで更新する、データを集計・分析する、といったことを担当者自身が手を動かしてやっていかないと、ライバル企業とのスピード競争に勝ち抜くことはできないと語り、講演を締めくくっている。
複雑化する環境にも対応できる次世代型コンテンツ管理システムとは
岸氏に続いて登壇したのは、アドビシステムズ株式会社 マーケティング本部 マーケティングマネージャーの国和徳之氏。
岸氏が述べてきた「検索・ソーシャル・モバイルを使った集客」「訪問者に必要なコンテンツを出す」「機動性を確保する」ために有用なツールとして、アドビシステムズの提供する次世代型のコンテンツ管理システム(CMS)「Adobe CQ for Web Experience Management(WEM)」を紹介した。
この製品は元々、Adobeが最近買収したDay Softwareの開発したソフトウェア。買収からまだ日が浅いこともあり、日本ではまださほどの知名度はないが、GMやNewsweek、UBS、BRAUN、McDonald's、Kodak、NOKIAなどのグローバル企業で使われており、日本語サイトを展開している企業もある。
国和氏はそんなWEMのデモを交えつつ、Webマーケティングを成功に導くためには、サイト上でのユーザー体験が大切になると話を展開した。
岸氏の話にもあったように、最近は企業とユーザーを結ぶチャネルが複雑化してきている。スマートフォンやタブレット端末といったデバイスが増えただけでなく、動画サイトやソーシャルメディアなど、接点の持ち方も多様化し、「その中で企業サイトをどう最適化するか、どうお客様の満足を高めるかが大事になっている」(国和氏)。
ここまで手軽にサイト構築・運用できるツールとしてCMSが広まってきたが、モバイルなどの複数チャネルへの対応、ソーシャル機能の取り込み、コンテンツのパーソナライズ化といった最新トレンドを考えると、既存のCMSツールでは不十分と言える。
一方、ターゲットに合わせた体験を提供するWEMなら、最新トレンドを活用して顧客を引き付け、顧客に即した満足を提供することができると、国和氏はその優位性をアピールした。
「WEMは次世代のWebコンテンツ管理がどうあるべきか形にしたものです。今やオウンドメディアは、万人向けの情報を発信するのではなく、ユーザーそれぞれにあった双方向のやり取りが求められています。また、ペイドメディア、ソーシャルメディアも合わせたトリプルメディアで考える必要があります。
外部メディアから流入してきたユーザーでも、アンケートやサイト内行動解析などを通じて属性を分析し、その人に狙いを定めた最適なコンテンツを訴求する仕組みにより、よりよい体験を提供できるようになります。またキャンペーン機能で、絆を深めることもできます。集客から顧客獲得までを最適化することで、みなさまのビジネスに役立てることができるものと考えております。
対面や店頭などのオフラインのマーケティングも引き続き重要ですが、オフラインとオンラインのマーケティングを最適に組み合わせることで、真の意味でデジタルマーケティングを実現し、お客様と密接な関係を築けるようになるのではないでしょうか」(国和氏)
従来のCMSを超え、パーソナライズされたユーザー体験を実現するAdobe CQ for Web Experience Managementの詳細はこちら。