サーバーの設置場所
中国本土へのサーバー設置は現地法人が事実上、必須
サーバーの設置場所が重要なのは、中国国外にサーバーを置いた状態のWebサイトだと、表示速度が非常に遅いためです。詳しい理由は前回のコラムを参照してください。
ECサイトの場合、どうしてもページ数が多いためサーバー負荷も高く、表示速度がさらに遅くなる可能性が高くなります。そのため、サーバーはできることなら中国本土に設置したいものです。
しかし、基本的に中国本土にサーバーを置くには、現地法人がサーバー会社と契約する必要があります。これは、申し込み時に前回解説した「経営性ICPライセンス」が必要となるためです。サーバーを現地に設置するということは、中国現地に法人設立をしていることが前提条件であると考えてよいでしょう。
香港にサーバーを置くという選択肢
日本にサーバーを置いたままというのはワーストシナリオですが、それ以外の選択肢として香港への設置という手があります。
香港サーバーの最大のポイントは、やはりICPの取得および中国法人設立の必要が無いことでしょう。もちろん、中国本土からの検閲は他外国のWebサイトへのアクセス同様にありますが、日本にサーバーがあるWebサイトよりも中国本土からのアクセスが良好な環境です。
香港サーバーの場合、中国本土だけでなく、その他の中国語圏である台湾、シンガポールなどに対してもパフォーマンスは優れています。そのため、アジア全域への進出といった場合は、香港にサーバーを一元化しておくというのも選択肢としてはありえるでしょう。
ちなみに、2010年に中国本土から撤退を発表したGoogleは、中国本土へのサービスは、香港のサーバーから提供していくことで事業継続しています。
CDNを使ってアクセススピードを改善する
ICP取得や中国へのサーバが難しい場合、日本国内でCDNを利用することでアクセススピードを改善するという手段もあります。
CDNとはコンテンツデリバリネットワーク(Contents Delivery Network)の略称で、画像、動画などの、ファイルサイズが大きなコンテンツをネットワーク経由で配信することで、サイト表示を安定化させる仕組みです。CDNを提供している企業ごとにやり方は異なるようですが、基本的には元サーバーのデータをCDNサーバーであるキャッシュサーバーが継承し、Webサイトの負荷を分散させます。
そうすることで、サイト閲覧者がストレスを感じることなくWebサイトの閲覧が可能になります。これであれば、ICPが無くても、サーバーの設置場所は日本であっても問題ありません。
経営性ICPライセンスの有無
前述のとおり中国本土にWebサーバーを設置したい場合、そしてECのような営利性を伴うWebサイトを現地で運営する場合には、「経営性ICPライセンス」を取得する必要があります。そして前回、中国の内資企業以外に取ることは難しいと述べました。
現時点における結論になってしまいますが、現実的には中国で経営性ICPライセンスを持つパートナーを見つける以外に、ほぼ道はないでしょう。これは、パートナーとの信頼関係を構築できるか。そして、ビジネスとしてECサイトを運営するわけなので、相手に対して何らかのメリットをしっかりと提供できるかが、大事な要素になると思います。
当社の場合も、自社で運営している「日遊酷棒」というECサイトは、中国のパートナー企業の持つ経営性ICPライセンスを利用して運営しており、パートナーとの信頼とビジネス的メリット両方を提示することで実現しています。