顕在層のみをターゲットにしたマーケティング手法の限界
これまでのマーケティングは、商品やサービスに対する欲求を持つ人たちを対象に、いかに自社商品やサービスを選んでもらうかを競ってきました。
わたしたちが生業とする住宅業界では、一生のうちに一度か二度しか欲求が起きない低頻度商材を扱っています。欲求が顕在化した検討層へ接触する機会は、高頻度商材と比べて非常に限られているのです。
また、住宅は高単価・高関与商材。欲求が顕在化していない人に「住み替えよう」とプッシュしても、検討段階へと押し上げることはできません。いつ欲求が生じるかわからず、かつ欲求が顕在化した限られたカスタマーに対し、莫大なコストを投じてマーケティング活動を行わざるを得ませんでした。
TVCMを中心とするマスコミュニケーションに頼ったSUUMOのかつてのマーケティング手法を見ても、その非効率性はよくわかります。SUUMOのCMを流すと一時的にブランド認知は上がりますが、CMを止めた途端に認知はまた元のレベルまで下がってしまいます。
CMによってSUUMOに少しでも興味を持ってくれた人のうち、ごく一部の住宅検討者だけがSUUMOのサイトを訪れてくれますが、住宅に欲求が起きていない大多数は、SUUMOへの興味もすぐに消えてしまっていたのです。
マスを中心とした旧来型のマーケティングでは、せっかく多くの人に興味を持ってもらっても、その気持ちをつなぎ止める場所が用意できていなかったため、認知効果をストックすることができていませんでした。結果的に、莫大なコストをかけたマーケティング活動を永続的に行い続けなければいけない状態に陥っていたのです。
ネットの分野でも、SUUMOでは住宅検討層を対象とした各種のマーケティングを行っていますが、例えば住宅に関するキーワードで検索した人にサイトの情報を表示させるリスティングでは、競合他社のみならずクライアントも自社ホームページへの集客のためにリスティング購入を行うため、集客単価は悪化していました。
住宅検討層だけを対象にしたマーケティング手法は、ネット集客においても効率が悪くなっていました。