「No dead ends」:マーケティングコミュニケーションの行き止まりをなくせ

最初のジェネラルセッションでは、Crispin, Porter + Bogusky社(以下、CP+B)のVice Presidentである、マット・ウォルシュ氏が登壇。CP+Bはブランディングを得意とする広告エージェンシーで、彼はCP+BのExperience Design Departmentを率いてDomino's、American Express、Best Buy、Microsoft、Coke Zero、Volkswagenなどのクライアントのブランディング戦略の立案と実行を担っている。ウォルシュ氏は「No dead ends」という言葉でこれからのマーケティングコミュニケーションのあるべき姿を描いてみせた。
ウォルシュ氏は、多くのマーケティング施策が「dead ends」=行き止まりで終わっていると指摘。マス広告で好感情(emotional preference)を醸成することに成功しても、そこからリレーションシップを築いたり、コンバージョンに至るクリアな導線を提示することができていないことが多いとした。
例えば、来店、Webサイト、資料請求など、次のアクションへの導線が不明なTVCMは、とても強烈な印象を残したとしても、dead endになってしまっているという。彼はdead endを以下のように定義している。(ニュアンスをうまく伝えることが難しいため原文のまま掲載する。)
A DEAD END:
Any consumer touch point that doesn’t measurably and intelligently encourage a consumer’s journey down the funnel through personalization and/or immediate engagement opportunities.
彼は brand relationship = emotion + behavior という公式を提示し、気持ちだけ掻き立てて顧客の実際の行動が伴わないのでは、真のbrand relationを確立することはできないと説明した。
「本当のリレーションシップを築くためには「No dead ends」の状態にすることであり、dead endをなくすことが重要だ。デジタルマーケティング技術を駆使した統合型マーケティングコミュニケーションによってこの問題を解決することができる」(ウォルシュ氏)
では、「No dead ends」の状態にするには、どのようなポイントを押さえておくことが必要だろうか。ウォルシュ氏は次のポイントを挙げた。
- あらゆるタッチポイントをリンクし、顧客にとってクリアな導線を提示すること
- メッセージが顧客に確実に届くようにパーソナライズする
「No dead ends」の例としてドミノピザによる一連の統合型マーケティングコミュニケーションが紹介された。ドミノピザのマーケティングコミュニケーションは次のような設計の元、実施されている。
TV広告をはじめとするマス広告で好感を醸成
- PC/モバイルでのオーダー
- 注文したピザの配達状況はWeb上の「Pizza Tracker」でリアルタイムに確認できる
- 配達されたピザのパッケージにはTwitterまたはFacebook経由でのフィードバックを促すメッセージが印刷されている
- フィードバックはWebサイトはもちろん、タイムズスクエアの電光掲示板にも同時にそのまま流される。顧客にはお礼にクーポンが送られる
- タイムズスクエアの電光掲示板の模様はTVCMでも流される
- これら全てのタッチポイントに、もちろんオーダーを促す電話番号やURLへのリンクが表示されている
- さらに次のオーダーにつながる

全てのタッチポイントで次のアクションを促す導線が示され、その一連の体験を通じてドミノピザに対する顧客のエンゲージメントが高まるように設計されている。
ウォルシュ氏は、このような一貫した顧客体験を実現するためにはマーケターの中にcreative directorと同時に experience director が必要なのだと語った。creative directorがブランディングのためのアイデアやデザインを担当するのに対して experience director はコンバージョンに至るコミュニケーション全体の流れを設計する。ここでも顧客とのリレーションシップを築くことが最終目標となっているのだ。