5月1日から3日間にわたって米Responsys社のイベント「Responsys Interact 2012」がサンフランシスコで開催された。世界各国から同社のクライアントやパートナーが集まり、30を超えるキーノートやブレイクアウトセッションでデジタルマーケティングの展望や最新のケーススタディが発表された。パートナーとして参加した株式会社ディレクタス代表の岡本氏がその模様を計6回にわたって紹介する。
Responsys社について
Responsys社は1998年にカリフォルニア州サン・ブルーノで設立。Eメール配信システムプロバイダ(ESP=Email Sending Provider)の大手として高い成長を続け昨年4月にNASDAQに上場した。
その製品「Responsys Interact Suite」はForrester ResearchやGartnerなどから高く評価され、Forrester Researchの「The Forrester Wave(TM): Email Marketing Vendors, Q1 2012」では「その機能は競合各社を18ケ月リードしている」とコメントされている。
同時に「Responsys Interact Suite」はアクセス解析ツールやセールスフォースなどの外部サービスとのデータ連携が可能。連続したプログラムの自動実行といった機能も強化され、昨年からディスプレイ広告の配信機能まで備えるようになった。
Forrester Researchの「The Forrester Wave(TM):Cross-Channel Campaign Management, Q1 2012」の中ではIBMの「Unica Suite」やSASの「Customer Intelligence Suite」などのいわゆるキャンペーンマネジメントシステムと同列で比較されており、単なるEメール配信システムの域を超えて「Cross Channel Campaign Management Software」としても高く評価されている。
Lufthansa、United Airline、Salesforce、PayPal、lenovo、LAND'SEND、MetLifeなど世界的な大手企業700社以上に導入されており、昨年日本にも拠点を開設し営業を開始した。
「Acquisition First」から「Relationship First」へ
2日からスタートしたセッション全体のホスト役はResponsys社Chief Marketing Officer 兼 Chief Sales Officerであるスコット・オルリッチ氏が務めた。オープニングは彼のスピーチから始まった。
オルリッチ氏はResponsysに高い成長をもたらした手腕が評価され、2010年にCMO Instituteが選ぶ米国のトップCMO10人に選出された人物である。彼は「Welcome to The New School of Marketing」と題してResponsysの提唱する新しいマーケティングコンセプトを紹介した。
オルリッチ氏によると、これまでは「顧客を獲得し、そしてリレーションシップを構築する」というステップを踏むことが、マーケティングの常識として考えられていたという。あくまでも顧客獲得が優先され、リレーションシップの構築は二の次になっていたというわけだ。しかし「New School Marketing」ではリレーションシップが優先される。まず、顧客とのリレーションシップを構築し、それが新たな顧客獲得に繋がるとした。
ソーシャルメディアが浸透しマーケティングの主導権が顧客側に移った今、企業にとって最も大切なのは顧客とのリレーションシップを構築することだ。さらに「Acquisition First」と「Relationship First」の違いを具体的に比較した次のチャートが提示された。
オルリッチ氏は「今、マーケターに求められているのは『Acquisition First』から『Relationship First』への発想の転換であり、それを実現するのがデジタルマーケティングの技術なのだ」と語り、Responsys Interact 2012の全体を通じてのテーマである、「Relationship First」という考え方の重要性を強調した。
マーケティングにおいて最も大切なのは、商品の購入過程や購入後のコミュニケーションで素晴らしい顧客体験を提供し、継続的なリレーションシップを築くことだ。それは、顧客とのエンゲージメントを高めることと言い換えることもできる。そして、エンゲージメントを高めることで、顧客が新たな顧客を連れてきてくれる。
デジタルマーケティングの技術を駆使することで、それを実現することは可能だ。つまり、最重要テーマはCRMなのだという主張とも言えるだろう。