イベント全体を通して感じたのは、ソーシャルメディアの影響力が高まっている点については当たり前の認識となっていて、参加者もそれが当然と感じている様子だったこと。さらに、ソーシャルメディアは数多くある顧客とのタッチポイントの一つに過ぎないという捉え方をされており、比較的クールな議論が多かったように感じた。
紹介する2つのセッションはソーシャルメディアがテーマだが、全く違う視点の内容となる。最初のセッションでは、ソーシャルメディアマーケティングの本質が語られ、もう一つのセッションではソーシャルメディアマーケティングの新しい地平を開く新機能が発表された。
大切なのは何をシェアするかであって、どこでシェアするかではない
2日目のジェネラルセッションの中でアンディ・サーノヴィッツ氏 が「The next big thing in social media is not about social media.」と題した講演を行った。
サーノヴィッツ氏は今年出版された「Word of Mouth Marketing:How Smart Companies Get People Talking」の著者であり、Word of Mouth Marketing=クチコミマーケティングとソーシャルメディアについて大学や企業で教える傍らソーシャルメディアリーダーのためのコミュニティ「SocialMedia.org」や「WordofMouth.org」を運営している。(ちなみに「Word of Mouth Marketing」は序文セス・ゴーディン、跋文ガイ・カワサキという、それだけでもちょっと読みたくなる本である。)彼の論点は明快で原点回帰ともいえるものだ。
「企業は今も新しいソーシャルメディアプラットフォームが登場するたびに大騒ぎするが、少し前に学んだことをもう忘れかけている。大切なのは何をシェアするかであって、どこでシェアするかではない。なぜなら、本当に重要なことは“顧客があなたの会社(や商品)について話したいと思うかどうか”だからだ」
人がクチコミする動機は「You」「Me」そして「Us」
「クチコミマーケティングとは、人々にあなた(の会社や商品)について話す動機を与え、その会話がより簡単に起きる工夫をすることである」。これが彼のクチコミマーケティングの定義である。では人々があなた(の会社や商品)について何か話すとしたら、その動機は何だろう? サーノヴィッツ氏はそれを「You」「Me」「Us」という3つに分類した。
- あなたの会社や商品が大好き(または大嫌い)
- あなたの会社や商品について何か話したくなるネタを提供した
例:商品そのものや顧客へのサービス、コミュニケーションでとびきりの何かを提供する。
- 自分が賢くて重要な人物だと感じたい
- 誰かを助けてあげたい
- 自分自身を表現したい
例:とても詳細な商品情報や極秘情報を提供し、初心者を助けることができたり自分なりの見解を表明できるような場所を用意する。
- ブランドのファミリーやコミュニティの一員だと感じたい
- 同じチームの一員だと感じたい
例:特別感のあるメンバーシップや身内のように感じるコミュニティを作ったり、商品開発に参加してもらう
「Make People Happy」
彼のメッセージで最も印象に残ったのは「Make People Happy」というメッセージだ。楽しい気持ちになったら人は友達に話したくなる。感心するような商品や最高のカスタマーサービス、印象に残るコミュニケーション、困った問題の解決。そのような体験の中で感動することができれば、人はあなたの会社や商品について友達に話したくなるだろう。その「Happiness」を作り出すことが大切というのだ。
サーノヴィッツ氏のメッセージはシンプルで分かりやすく、暖かみがあり元気づけられる講演だった。同時にその内容は「リレーションシップファースト(Relationship Fast)」というResponsys社の提唱するマーケティングコンセプトにも通じるものだった。