オバマは選挙資金の大半をメール経由で集めた
日本でも今夏の参院選でついに解禁されるネット選挙だが、アメリカでは2008年の大統領選で強固な支持基盤のなかったオバマ候補がソーシャルをはじめとしたデジタルツールを活用して資金集めを行い、結果として大統領になったことはよく知られている。
あれから4年経った2012年の大統領選でオバマキャンペーンがどのように進化したのか、Eメールマーケティングに精通するToby Fallsgraff, Email Director, Obama for AmericaがInteract2013の2日目にキーノートスピーカーとして登壇した。
Toby氏はまず大統領選当初を振り返り、「意外に思われるかも知れないが、かなりまずい状況からのスタートだった」と明かした。4年間の大統領としての任期を過ごし、2008年当時熱狂的にオバマを支持した主要な有権者の心は既に離れていたのだ。
弱者のヒーローとして登場したオバマだったが、大統領として信頼され、安定した政権運営を行ううちに、ある意味普通の大統領になってしまっていたという。また、メディアで優位が伝えられていたため、最初から勝ち戦との認識が拡がり、積極的にサポートする人も少なかった。一方、共和党支持層はティーパーティをはじめとして打倒オバマで一丸となり、既に百億円以上の献金を集めていた。
Obama for Americaにおけるデジタルマーケティングチームは総勢200名、Eメールマーケティングだけでもクリエイティブ制作からシステム開発者まで18名(立上げ当初は3名)のチームで組織された。メールマーケティングでの大きな目標は2つ。支持者からの資金調達と、オバマの選挙活動報告だ。そこで実際に行われたアクションは一般企業にも参考になる内容だった。
- テスト・テスト・テスト…仮説は立てるが、とにかく実際にテストをして、有権者の反応から次の手を考える
- ターゲティング…有権者を84のセグメントに分割。パーソナライズされたメッセージを送る
- エンゲージメント…オバマ本来の強みである親しみやすさ、距離の近さを有権者に感じてもらう
ここで、実際に行ったテストの例が1つ紹介された。全リストに一斉配信するメールでは、最大でコンテンツを4から6パターン、それぞれに件名を3パターン用意し、合計で12から18パターンのメールをテストしたという。それを全リストの20%に配信し、1時間半後に結果を確認、その後残りの80%に一番反応のよかったメールを配信したのだ。もちろん、それなりの手間・工数が掛かる作業になるのだが、テスト無しで実行した場合と比較すると平均で数十パーセントの違いが結果として表れた。
そして、彼らはこのテストを選挙戦終盤まで継続する。その理由は「予測していた結果とことごとく違う結果が出ていたからだ。自分達で考えるよりは、実際にテストをして有権者の声を聞く方がよいし早い」(Toby氏)。
なお、オバマはこの選挙戦を通じて600億円以上の資金を集め、その大半はオンラインでの少額献金でその中でもEメールは最大のチャネルだった。有名な話だが、この選挙戦を通じて最も反応が高かったメールの件名は「Hey」というシンプルなもので、このメール1本で数億円の資金が集まったという。
このテスト戦術に関してはインターネット上でかなり詳細な情報が公開されているので、興味がある方は是非調べてみて欲しい(参考:The Science Behind Those Obama Campaign E-Mails)。